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19話 「"剣豪"ディノス・アルカディア」

「あぁ、アナタはその子のお父さんでしたか」


「そうだ、ルージュは返してもらうぞ。 勿論、他の子供達もな」


「それは……困りますねぇ…」


そういってボスはずっと持っていた剣を放り投げた。


「なんだ? 降参か?」


「ふふ…そんなわけがないでしょう?」


ボスの右手に青い光が集まり、真っ青の剣が現れた。


なんだアレ? 刀身も鍔も全部が真っ青だ。


「お前…一体何者だ?」


ディノスがボスの剣を見て言う。


「ふふふ…分かりませんか? 結構有名なはずなんですがねぇ……」


「まさかお前……”魔剣使い”の1人か?」


「御名答です。 僕は”魔剣使い”の1人。 魔剣フロウの使い手、オルガと申します」


魔剣使い…魔剣フロウ…何のことだかさっぱり分からないが、とにかくあいつは相当強いってことだろう。


「ほぅ…オルガか。 まさかドラグラード王国にいるとはな」


「最近の僕はいろいろな国を転々としてますからねぇ」


「なぜ奴隷商人なんてやっている?」


「金になるからですよ。 人を斬るより、人を売った方が金になるんでねぇ」


「ハッ! やっぱりお前らの考えは理解できねぇぜ」


「理解できなくて結構ですよ。 …さて、どうします? 魔剣使いが相手だと知っても、戦いを挑みますか?」


「あぁ、もちろんだ。 ルージュを渡すわけにはいかないんでな」


ディノスは即答する。

そして剣を抜き、構える。


「むむ? その剣……紅龍剣ですか?」


「あぁ、そうだ」


「って事はアナタ……なるほど…”剣豪”が相手ですか、これは面白くなりそうだ」


あいつはディノスの事を知ってるのか?


魔剣使いに知られてるって、どんだけ有名なんだよディノスは……


「さて…じゃあ始めるか…」


「えぇ…剣豪の腕前、見せてもらいましょうか」


「ふんっ…随分上から目線だな。 風嵐サイクロン!!」


ディノスとオルガの戦いが始まった、ディノスが風魔法を撃ち、オルガはそれをかわして一気にディノスとの距離を詰める。


速い……俺と戦っていた時のオルガとは比べ物にならない。


ディノスもそうだ、模擬戦の時とは全然違う。


それからディノスとオルガの斬り合いが始まった。


はっきり言って……次元が違う。


「ほうほう! なかなかやりますね剣豪!!」


「当たり前だ! 」


俺はディノスが戦ってくれている間にアリスとクリスの元へ向かった。


「おいアリス! クリス起きろ! 気絶してる場合じゃないぞ!!」


「うっ…うぅん…」


先に目を覚ましたのはアリスだ。


アリスは起きてすぐに周りを見回し、すぐに思い出したのか


「る、ルージュさん! 大丈夫ですか!? あ、あいつは!?」


と俺に質問してきた。


俺は今も斬り合いを続けているディノスの方を指差した。


「あ、あれは?」


「俺の父さんだ。 さっき助けに来てくれて、今はオルガと戦ってる」


「オルガ…?」


「あぁ、それがボスの名前らしい」


「なるほど…なら! 私達も援護を…!」


すぐ立ち上がろうとするアリスを俺は手で制す。


「な、何をするんですか!」


「今俺達が行っても足手まといになるだけだ、あの2人の戦いは次元が違う」


「でも…」


「今俺達に出来るのは、逃げる準備をする事だけだ。 だから早くクリスを起こそう」


「……はい」


渋々だが頷いてくれた。


その後俺はクリスの身体を揺すったり叩いたりしたが、クリスが起きないのだ。


まさか……と思ったが、ちゃんと息はしてるし脈もある。


「ルージュお兄ちゃん」


「…ん? なんだクレア」


クレアが俺の袖を引っ張る。


いつの間にかクレアは俺をルージュお兄ちゃん、アリスをアリスお姉ちゃんと呼ぶようになっていた。

ちなみにクリスは普通にお兄ちゃんだ。


「あのね、お兄ちゃん一度寝たらなかなか起きないの」


「………マジ?」


「うん、でもね? お顔にお水をバァーッってかけるとね、直ぐに起きるよ!」


「なるほどな、分かった。 水球ウォーター・ボール


「ゴボッ!?」


俺は遠慮なくクリスの顔に水球をぶつけた。


するとクリスは魚のように跳ねた。


「よう、クリスおはよう」


「ん? ん? 僕は一体……」


その後クリスがアリスと同じ事を聞いてきたので、俺は同じ様に説明した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーーディノス視点ーー


「おぉらあっ!!」


「おっと、危ないですねぇ」


くっそ、なかなか当たらねぇ。

ちょこまかと素早いやつだな。


「バレバレですよぉ」


俺の斬りあげを難なく躱すオルガ。


ちっ…このままじゃ埒があかねぇ……


チラッとルージュの方を見ると、ルージュは気絶している子達を起こしていた。


きっとルージュなりに考えて行動してるんだろう。


「カッコいい所、見せてやんねぇとな」


「何です…?」


「行くぜ魔剣使い、一瞬だ。 一瞬でこの勝負は終わる」


「はい? 何を言って……」


フロウが何かを言う前に、俺は剣を持つ右腕に力を入れる。


そして右腕を後ろに引き、左腕を前に出し、姿勢を低くする。


「龍神剣術奥義……ーーー紅龍斬こうりゅうざん!!!!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーールージュ視点ーー


「……え?」


「龍神剣術奥義……ーーー 紅龍斬こうりゅうざん!!!!


ディノスの持つ剣、紅龍剣が赤く光り、その直後…


オルガの右腕が地面に落ちた。


俺は何が起こったのか分からなかった。


「……ほう…?」


「終わりだ!」


ディノスがオルガに止めの突きをしようとした時、オルガが消えた。


「っ! どこだ!」


「ここですよ」


オルガは木の上に立っていた、左手には自分の右腕を持っている。

オルガは腕がちぎれた箇所を凍らせ、無理矢理止血していた。


「利き腕が落とされちゃあ…もう勝負は出来ませんね。 今回は僕の負けです」


「おい待て!!」


ディノスがオルガの元へ飛ぶ。


「では僕は行きます。 さようなら、剣豪ディノス、また会いましょう」


オルガが居た場所が一瞬で凍り、ディノスに向かって鋭い氷柱が伸びる。

ディノスは舌打ちをし全て避け、地面に降りた。


もう、オルガの気配はなかった。


ディノスは数秒間周りを見回すと、俺の元へ降りてきた。


「父さん、オルガは?」


「安心しろ、もうここら辺にはいない」


「って事は僕達は!」


「あぁ、無事に帰れるぞ、ここまでよく頑張ったな」


「ははっ…そっか…俺達は帰れる…のか…」


ディノスがそう言った瞬間、俺の目から涙が流れた。


見るとアリスも、クリスも、クレアも泣いている。


今回は本当に危なかった、オルガと戦うまでは間違いなく順調だった。

無事アジトを抜け出し、手下を全員倒し、そこで俺は油断をしてしまったのだ。


手下がこんだけ弱いんだから、ボスも大した事はないだろう。 と……


結果、ボスは……オルガは強かった。 俺達3人の連携は決して悪くなかったはずだ。

なのに…手も足も出なかった。


アリスとクリスがやられ、俺の中に焦りが生まれた。


…コイツには勝てない、だから戦わずに逃げよう。と…


そう決意し、俺は倒すためじゃなく、逃げる手段を作るために全力で戦った。


だがソレもだめだった。


あそこでディノスが来なかったら……と考えると震えが止まらない。


「ルージュ、怖かったか?」


「…あぁ…もうダメかと思った」


「でもお前は最後まで戦った。君達もな。オルガ相手によく頑張った」


そう言ってディノスは俺達4人の頭を撫でる。


「さて! いつまでも泣いてんな! 王都へ帰るぞ!」


「「「「はい!」」」」


俺はまだまだ弱い、魔法にばかり頼ってちゃだめだ、剣術ももっともっと練習しなきゃいけない。


と、俺はそう思いながら、王都へと歩き出した。

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