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「先輩、質問してもよろしいでしょうか」

「先輩、質問してもよろしいでしょうか」

少年がいつものように話しかける。

「うん?なんだ、言ってみろ」

彼女は鷹揚に頷きながらそう答えた。


「先輩、僕は先輩を見ると心拍数が上がり呼吸も速くなる傾向にあります。それは最近の事なのですが、僕は何かの病にでもかかったのでしょうか。もしくは先輩が何かしているのでしょうか」

「……ん、君は私を口説いているのかね?」

少年は数瞬思考すると、とある結論にたどり着いた。

「つまり、これは何らかの薬品を嗅がされているという事や何らかの心臓の病などといったことではなく、単に僕が先輩に惚れていると。そうおっしゃりたいのですか?」


「君は…中々答えにくい聞き方をするね」

「そうでしょうか」

「だってそうだろう?君が私に惚れているんじゃないかと、私が言い出したら凄い自信過剰な女じゃないか」

そして彼女は呆れたように肩を竦めて首を振った。


「なるほど。それは確かにそうですね」

「……」

「……」

「何か言いたまえよ。続くのかと思って黙ってしまったではないか」

「そんな横暴な。パワハラです。…では僕は先輩に惚れているんでしょうか?とりあえずそういう事にしておきましょう」

「しておきましょうって、君。私が勘違い女みたいな言い方をするな。ふぅ……まぁいい、質問はそれだけか」


溜息を吐きつつ彼女は少年に問いかける。


「そうですね、折角ですのでもう少し」

「ここでもう1つと言わない辺りが君らしいな。で、なんだ」

「今、好意を寄せている人はいますか?あぁ、家族愛だとか友愛ではなく恋慕です」


「そんな事は分かる。…うーむ。その、特に恋愛感情を向けるている相手は居ないと思うが」

「そうですか。では先輩は日に何回告白されますか?」

「そうだな…数えた事はないが、って『日に』か!?」

「ええ。あ、ちょっと答えにくいですよね。平均で構いません」

「いや、バラツキがあるからとかそういう問題ではないのだが。私はそんな1日に複数人から告白される事など無いよ。君はあるのか…」


溜息まじりに彼女は最後の言葉を吐き出した。


「ええ。今日は下駄箱に手紙が入っていました。常識的に考えて、あんなところに入った手紙はあまり読みたくありませんよね。冬場のチョコレートは最悪です」

「冬場の…ってそれはバレンタインというイベントだろう。日本のどこぞの菓子メーカーが広めたものだな。確かに少し考えればわかることだな、衛生的にもあまりよろしくなさそうだ」

「あぁ、valentine。そういえばテレビのCMで宣伝していましたね。てっきり糖尿病促進イベントか何かかと」

「いやにネイティヴだな。というかなんだその不健康なイベントは…」


少年は一つ咳払いをしてから話を戻す。


「それにしても意外です。先輩は僕のクラスでも噂になっているので、てっきり」

「あぁ、告白の下りか。…噂になっているのか。それは恥ずかしいな」

「ええ、スカートが長めなのに何故か下着が見えそうになることが多い、綺麗な先輩がいると」

「本当に恥ずかしい噂だな!……私はそんなに下着を見られそうになっているのか…」


「因みに僕はあまり仲の良いクラスメイトが居ないので噂話をしている人達の会話がチラと耳に入ったというだけなのですが」

少年の堂々のボッチ発言に彼女は苦笑した。

「何故そんな重い話を付け足した」

「いえ、同性の友人はいないのですが異性からはかなり話しかけられるので気にするほどの事ではありません。しかし彼女達から先輩の話は聞いたことがありませんね」


「君が何故ハブられているのか、理由がわかったよ」


「そうですか?では最後の質問です」

「そうか、随分とあっさりしてるな…。…もういいのか?」

「ええ。今日はこれでおしまいですね」

「さて、何を聞かれるのやら」


では、と少年は姿勢を正して告げた。

「僕とお付き合いをして頂けませんか?」

「……」

「……」

「…いいだろう」

彼女は暫し絶句した後に、とても可愛らしい豊麗線を作って承諾した。


「ありがとうございます。先輩、珍しく頬が赤くなってますね。とてもお綺麗です。普段からそうしていればいいのに」

「あまり指摘するな、恥ずかしい。というか普段から私が頬を赤らめ続けていたらただの発情期じゃないか」


「先輩、人間は年中発情期らしいので問題無いかと」

「そういう問題ではないっ。君、他人に私が発情しているのを見られてもいいのか?そもそも発情したから顔を赤らめた訳では、ってうら若き乙女に発情発情言わせるな、恥ずかしい」

「僕が言い出したのでは無いのですが…。確かにそうですね、先輩の照れ顏は僕だけの物にしておきます」


「君はまたサラッと恥ずかしい事を言うな。……そんなに私は、その、可愛いか?あまり私は余人に容姿を褒められたことが無くてな…いや、君の言葉を疑っているわけではないのだが」


「ガラスケースに入れて床の間に飾っておきたいくらいです」

「なんだかとても猟奇的だな!?」

彼女は、というか何故床の間に…と呟く。

「そうでしょうか。…先輩、そろそろ帰りましょうか。送ります」

そう言って少年は立ち上がった。

「…こほん。うむ、そうだな。ふふ、なんなら手でも繋いで行くか?」

「ええ。そうしましょう」

大人の余裕で魅せようとしたが、あっさり答えられて少し彼女は凹んだ。だが少年に手を取られると、またその頬を薄く染めた。

「先輩の手は可愛らしいですね」

「手は、とはなんだ。私は可愛くないのか?」

「先輩は頬を染めているときはとても可愛らしいです。それ以外のときは凛としていて素敵だと思います。…また林檎みたいに赤くなっていますよ」

「う、うるさいな、もう!ほら、帰るぞ」


そうして彼らは帰宅していった。









「あ、先輩」

「なんだ」

「言い忘れていたのですが」

「だからなんだ」

「スカート、捲れてますよ」

「なんだと!?」

「…防御力低すぎやしませんか?少し心配になってきました」


「君にだけは言われたくないよ」

そう言って、彼女は少年の頬に口付けをした。




蛇足だが、スカートは捲れていても下着は見えていなかった。少年は、彼女がワザとやっているのかと疑っていたようだが、どうやら違ったらしく。何らかの力が働いていたのだろうか、とこちらをチラリと見た。






蛇足の蛇足となるが、彼女達が話していたのは生徒会室。そこには私もいたのだが、彼女らは全く意に介していなかった。全く、あんなダダ甘な恋愛風景を見せられたら私も恥ずかしいというのに。だが収まるべきところに収まったな、と。

カエルがケロリとそう鳴いた。

「先輩、結局これはどんなジャンルにすれば良いのでしょうか」

「うむ…なんだか最後はホラーのような終わり方をしようとしていたな。学園で、コメディで、その、れ、恋愛で…」


「先輩、」

「皆まで言うな」


「存外に初心なんですね」

「言うなといったであろうが!全く」


「学園で、コメディで、恋愛。つまり学園ラブコメということですよね」

「う、そうなのか?だがそんなジャンル設定は無かったような気がするが…」


「ええ、ありませんでしたね。毎回思うのですが、中々に不便です。かといって文学と言い張るにはちょっとライト過ぎますからね」

「結局学園という無難な設定に落ち着いたな。だがあの会話はどこでやっていたとしても大した差はないのだから、学園である必要は全くないのだがな」




さて、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

2月頃にちらっと書いたものに肉付けして投稿しました。今回は恋愛系を書こうと思いながらも、その中でコメディ寄りを目指そうかと思いスカートの下りをちょっと追加しました。終わりのスカートの指摘は元から書く予定だったのですが。



クスリと笑って頂けたら、とても嬉しいです。

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