新しい知識
おっと!昨日更新しましたが以外と反応がよかったので、初の連日投稿です!
次回更新は予定通り来月になります。
どうやらこの、ローシェスさんは初めから全て解っていて、芝居をしていたらしい。
でも、どうしてこんな事を? ただの暇つぶし? それとも試した?
「不思議そうね。どうしてアタシが知っていたかって顔、してるわよ」
「それはそうですよ。どうして知っていたのか教えてくれますよね」
「昨夜、あれだけ大きい魔力の奔流初めてだったもの。少なくともこの国にいるかなり高位の装者は知っていると思うけど……、にしても、まさかアタシの所に来るとはねえ」
「教えてください! 帰る方法を!」
少し声が大きかったかもしれない。でも俺達にとっては重要な問題だ。
「さっきも言ったでしょ? 知らないって。……帰る方法があるのかもしれないどけ、少なくともアタシは聞いたことが無い」
ある意味死刑判決だ。帰れないだって? じゃあ……俺達はこのまま……
「でもとりあえずユウキとサキ、あなた達のすることは決まっているわ。でも5日位はアタシの家にいなさい。色々と教えることもあるから。それとローシェスじゃなく、シェスって呼んでね」
俺達には選択肢が無い。もともと選択肢なんか無いのかもしれない。
だったらこの世界の事を知って、選択肢を作ればいい。
「部屋は余っているから準備させるわね。後はそれと…………あ、ご飯食べた? まだでしょ? アタシもまだなんだ、一緒に食べない?」
*
今は、シェスの屋敷の部屋。特に特徴も無い部屋。あるのは机と椅子、ベッドと観葉植物だけ。
椅子にもたれながらただ天井に消えて行く紫煙を見つめて今までの事を考える。そしてこれからの事も。
隣の部屋は沙紀の部屋になっている。
夕食の最中も沙紀は楽しそうにシェスからこの世界、ネクロディアの事を聞いていた。
詳しい事は明日から教えてくれるそうだが、俺たちは王都へ行くのだという。
でもどうして王都に行かなきゃならないんだ?
……コンコン
思考を中断させたノックの音にドアを見て「開いてるよ」と声を掛け入ってきたのは沙紀だった。
俯いて、何処か寂しげな表情をしている。
「悠君、ここ煙草臭い」
「あぁ悪い、…嫌だったら外に行こうか?」
「ううん、ここでいい」
そのままベッドへと座るがまだ俯いたままだ。
その表情は見えないが声色が大分暗い印象を受ける。
「鷹斗と瑞希の事、心配か?」
「うん、2人大丈夫かな?」
「そりゃあ大丈夫だろ。瑞希は口が上手いから俺達よりもっと上手くやっている筈。それに、肉体労働専門の鷹斗がいるからな」
「うん、そう…だよね。ゴメンね、ちょっと疲れているみたい」
「だったら寝た方がいい。俺も直ぐに寝るから」
「そうだね、もう寝るね」
そう言うとドアを開けたまま振り向いて「おやすみ」と言い残して自分の部屋に戻って行った。
沙紀もショックなんだろうな。1人になると余計に怖くなったんだと思う。
直ぐに寝ると言ったけど…………眠れそうにないな。まだ緊張しているせいだろう。
軽く汗でも流さないとな。
刀を1本持って素振りをする。毎日やっていた事だから、今だけは全て忘れられる。
でもなぜかいつもより刀が軽いような気がした。
いつからそこにいたのか解らなかったが後ろにシェスが座っていた。
「あら、練習もう止めちゃうの?」
「別に練習なんかじゃありませんから……ただの運動です」
「もしかしてユウキは騎士だった?」
「向こうの世界には騎士なんてもう事実上存在いません、称号や形だけになってしまいましたから」
「あら、そうなんだ、でも剣の扱いは慣れていたわよ」
「剣の道場の息子でしたから、昔からやっていました」
「そんなに邪険にしなくてもいいじゃない、レディの扱いがなってないわよ」
「子供ですから……」
何か俺イラついてるな、緊張のせいか?悪い事言ったな。
「すいません。イラついてたもので変な事言ってしまって」
「いいわよぜんぜん、不安なんでしょう?いきなりこっちの世界に来て」
そうだな……今日の俺っていつもの俺じゃないな。沙紀も怖がっていたし……
容姿が変わったせいで性格も変わったかな。
「シェス、こっちの世界に来て髪の色や瞳の色が変わる理由って何か知ってる?」
「説明は明日からって言ってなかった? …………でもいいわ、1つだけよ」
シェスの話って結構難しいな。やっぱり学者だから?
ベッドの中で寝ながらさっき言われた事を思い出していた。
俺たちの体は向こうの世界のもので、本来この世界には存在が許されない反物質みたいなもので、
この世界に来る瞬間、身体を分解・再構成してこの世界に身体に存在する。
つまりは、この世界に来るときに世界の合う様な身体に作りかえられ、多少の変化が出た。
簡単に言うと、以前の俺とは違うが、入れ物が作り直されただけで本質的には変わらない。
と言うことらしい。大体は理解したが、鷹斗は理解できないだろうなこんな話。
*
夕方、ここは何処かの林。
「ねぇ、待ってよぉ」
「悠稀、早く来なさいって」
目の前を2人の小さな子供が通り過ぎて行った。
小高い丘から見える街並みと川が見えるこの場所。
「…………ほら悠稀、遅いよ」
「ちょっと待って、…………うわぁ、ここすごいね?」
「でしょう?ここからなら花火だってよく見えるから後で母さん達と一緒に来ようね?」
「うん!」
…………頭が痛い、酷い頭痛だ。
「ん…………あぁ……知らない天井だ」
とりあえずテンプレを言ってみたが見慣れない部屋、ここは…………シェスの屋敷。
そうだった、俺は今、異世界『ネクロディア』にいるんだった。
「また、あの夢か……いつもあの場面で終わっている。その上なんか頭も痛い」
コンコン……
「悠君、起きてる?」
声の主に「起きてるよ」と言うとドアが開いて昨夜の沙紀とは違う沙紀がいた。
金髪で腰まで伸びている髪。一昨日まで黒髪で肩にかかる程度だった髪が、変わっている。
これが再構成されて、この世界に合う沙紀の姿。
でも昨日とは少しだけ違った。
「見てこの服。昔シェスさんが着てたの貰ったんだ」
淡い青のワンピース。こういったものがこの世界では普通の服装なんだろう。
「もう朝ご飯なんだって。早く起きて」
「分かった。5分位で行くよ」
「早くしてね」
と沙紀は戻っていた。
煙草に火を点けて、さっき沙紀に言えなかった台詞を呟く。
「中学校の頃の沙紀みたいだ」
朝食を終えた俺はシェスにリビングで待つように言われた。
待っている間また煙草に火を点ける。考えることは多くある。
昨日シェスが言っていた台詞……『昔から異世界からこちらの世界へ来る』
この台詞から俺たち以外にもこっちの世界にいる人がいる事。
その人達に会う事は出来ないのか? そうすれば何か手がかりがあるかも……
でもその前に、鷹斗と瑞希を探さないとな……
「お待たせー」
シェスが笑顔でこっちに来る。
「サキちゃんの服見た?どう、可愛かった?」
「似合ってると思うけど」
「そう?可愛いよね。で、本音はどうなの?」
「本音と言うと?」
シェスさんは横に座って、にやっと笑って、
「サキちゃんあんなに可愛い服着ての感想は? って意味」
「そういう事か、昔もあんな服着てたから今さら……」
「そう? …………ま、いいわ。そういう事にしといてあげる」
この人は、自分の言わせたかった台詞以外は嫌な顔をするな。
「気の利いた台詞を言えなくてすいません。そういうタイプじゃないんで」
軽くジャブでも打っとくか。
「シェスってすごい美人だから、言い寄る男は絶えないんじゃない?」
「やっぱりそう見える?でもね、装金師なんてやってると全っ然言い寄られなくて」
なんだ、この自虐ネタは、切り返しとしては…、
「それでは俺が言い寄ったりしてもいいんですか?」
「でもサキちゃんに悪いわ、あたしが奪ったみたいで」
「沙紀とはそういう関係では無いから、気にすること無いよ」
なんか予想と違う方向になってきた。ここで止めとこう。変な誤解受けそうだし。
「まあ、冗談は終わりとして、用って何ですか?」
「アタシは冗談じゃないわよ?ユウキって近くで見るとケッコウ……」
シェスって悪乗りするタイプだな、目が笑ってる。
しかも1度乗ったら行き着くとこまで乗ってくるって感じだ。
「シェスもういい加減にして」
「もう、いい所だったのに……」
「遊びはもう終わりにして用件を言って下さい」
しぶしぶながらも分かってくれたらしい。奥の部屋から何か持ってきた。
「サキちゃんにあの服渡したでしょう?だからユウキにもこの世界でそれらしい服装をしてもらおうと思って」
そこにあるのは青のシャツと胸当て、肩当て、ベルトは皮製……
「これって服装って言うより装備なんじゃ……」
「そうよ、せっかく剣があるんだから剣士でいいじゃない」
これも悪乗りか? 昨夜のあてつけかな?
「それを着けてサキちゃんに見せてあげなさい」
あの顔、絶対遊んでる。見せたらすぐ外そう。
なんか肩が動かし辛いな、直に慣れるだろうけど。けど、この格好に白木作りの刀って似合わないよな。
ま、いいか。でもなんか恥ずかしいな。
朝起きた部屋から出てリビングへ行くとシェスと沙紀がいた。
「悠君、コスプレしてる。何か新鮮♪」
「んー、ちょっといまいちしっくり来ないわね」
なんか言われたい放題です。やっぱり遊んでいたな。
「シェスこれ以外に何か無い?」
「そんな事言われても、無いわよ? 店じゃないんだから」
「それもそうだけど……これって防具無しでもいいんじゃないか?」
「まあ、それもそうね。街中じゃあ無いほうが普通に見えるわね」
*
結局はどちらでもいいらしく、街中じゃあ防具無しの方がより普通らし。それから3日間はこの世界での常識、種族、国の説明はなんとなく理解が出来た。
この世界で1番驚いたのと同時にやはり、と思った最大の違いあった。魔装具という物があると言う。魔力を使って魔法の様なものを使えると言うものだ。
簡単なものは生活と一体化していて誰にでも使えるらしい。本格的に武器としての魔装具は適性があり、得意な種類と不得意な種類など色々あるとの事だ。
そして4日目、俺達に直接関係のある話だった。
容姿の変化については以前説明されたがそれには続きがあったのだ。
筋力の増加、これには個人差があって大きく出る人と全く出ない人がある。
そして、異邦人最大の特徴がこの世界でも稀有な因子を有して再構成されること。いつ発現するかはこれも個人差や後天的な要素まであって解らないそうだ。
これはもう沙紀が発現している。『文字が読める』と言う事。
それ以外にも、特殊な魔装具の適性、あらゆる魔装具の適性など色々あるらしい。
そして5日目。
「シェスさーん、もう毎日、毎日勉強ばっかりで飽きちゃった」
「その点は大丈夫。とりあえず勉強は昨日で終わり。今日からは実地」
実地?まさか買い物とか?そんな子供じゃああるまいし。
「さ、じゃあ庭に出ましょうか」
庭に出るとテーブルに4種類の腕輪と円盤が1つあった。沙紀は早速腕輪を手にとって見ていた。
「今日はこれ、魔装具を使ってみよう、って事で」
「でも確かこれって適性がある筈じゃあ……」
魔装具には大きく分けて武器系、自然系、守護系、変化系、援護系の5つ。
でもその他に特殊な物もあるって言ってた様な。
シェスはいつの円盤を持って嬉しそうに笑っていた。
「注目! 実はこの円盤は最も自分に合った適性が判っちゃう優れものなんです」
早くも説明に入っている。この5日間ほとんど説明ばかりしてて飽きないのか?
「シェスさーん、貸してください。やってみたいです!」
「はぁ…………」
つい溜息が出てしまう。このテンション何回目だ? さすがに今回は面倒になってきた。
「で、シェスそれはどうやって使うんだ?」
「なに? そのやる気の無い声は……」
誰のせいでそうなったんだよ。
「まあいいわ、これはね、この円盤に書かれた文字が1番強く光ればその人の適性、解った?」
「それ答えになってないですよ。使い方を聞いたんです」
「いやん、反抗的な生徒ね、先生困っちゃう」
5日前のシェスだったらやる気も出るのに……ああ、あの頃が懐かしい。
あ、何かシェスこっち睨んでる。気付かれた?
「ユウキ、あなた考えてること顔に出てるわよ? さっさとやる。ただ下から持つだけでいいから」
そう言われて円盤を渡された。これ以上文句を言われるのも嫌だからさっさとするか……
確か何処かが光るんだよな……お? 光ってきたぞ? …………
「シェス、これって何?」
「はーい、…………壊れちゃったのかな? 普通は核石が光らないで周りの文字が光るはずだけど……
どうして中央の核石が光ってるのかしら」
シェスも知らないって……どういう事?
「サキちゃん、これ持ってくれる?」
「さっきもやりましたけど、もう1度?」
「そう、もう1度」
沙紀が円盤を持つと1点から扇状に光っている。
「ほら、私守護系だよ。さっきと同じ」
「じゃあどうして?文字が光らないで中央の核石が……」
どうやら俺って珍しいタイプだったんだ。じゃあ俺の適性って何だ? 得意な適性が無い場合は何も光らないけど、全部適性があるなら全部光るって言ってたから……どういう事だ? …………ま、いっか。
「シェス、もういいよ。多分適性が無いと思うから沙紀に詳しく教えてあげて」
そのまま自分の部屋へ向かって歩いて後ろから「調べておくから」と言っていたから「お願い」としか言えなかった。
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