序章
朝、日常の始まり。外の木々には朝露が輝いていた。
少女が朝日で夢から覚めて布団の温もりと戯れのひと時を名残惜しく思いながらも少女は立ち上がり、部屋を出て行った。
「……お父さん、おはよう」
眠い目を擦りながら朝食の準備をしている父親に挨拶をすると、父親はゆっくりと振り向いて、
「おはよう、フィリア。もう少しで終わるから顔を洗ってきなさい」
そう言われてフィリアは遅い歩みで洗面所へ向かっていった。
食卓には質素ながらもきちんとした物が並んでいた。
フィリアが顔を洗った後にはもう既に準備は終わっていて父親が卓についていた。
フィリアは卓に着くなりすぐに、さっき見た夢の話をしていた。
「今日の夢はね、シンと一緒に洞窟に入って行ったんだよ。それでね、シンはどんどん奥に入って行くと大きな部屋があったの。
そこでシンは大きな魔法を使ったんだよ。凄くキラキラしててね、綺麗だったんだよ」
一息で話したため少し息苦しかったが、それでも話さずにはいられない。いつもシンとの夢は覚えている。
それが楽しいものばかりではなく、悲しいものもあった。起きても暫くは悲しくて涙が止まらなかった時もあった。
それだけ鮮明で、実際にあったことのように思えるほどだった。
「フィリアはシンのこと大好きなのですね。いつも話していますよ」
「うん! シンはフィリアのはつこいのひとなんだよ。だからね、絶対に忘れないの。
……でもね、いつもフィリアは今より大きなお姉さんになっているんだ……ちょっとおかしいよね」
父親はその言葉に少しだけ悲しそうな表情を出したがすぐにいつもの笑顔に戻っていた。
「では、朝食にしましょう? それに今日はフィリアの10歳の誕生日ですから夜にはご馳走を作る予定ですよ」
「やった! 何かな、何かな? 早く夜にならないかな?」
フィリアは嬉しさを全身で表わしていた。その事に父親もとても嬉しくなっていた。
母親はフィリアが小さい時に死んでしまってから父親1人でフィリアを育てていたが昔こそ苦労はしたが、今では日常的にこなしていた。
「それじゃあ、お父さん……いってきまーす」
「はい、学校ではきちんとしているんですよ」
「はーい」
毎日繰り返される日常。これからもずっと繰り返される日常。
「あと、10年もしない内にあの子は……、約束の日を迎えるのですね」
その表情はさっきの悲しみの比ではなかった。
毎日繰り返される日常。これからもずっと繰り返される日常。
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