休憩所執筆 第二話
エレベーターで上ると、そこには予想を遥かに超えている食料品の数々が並んでいた。
このワールドアカデミーでは、生活用品や武器等全てこのビルで揃えられるようになっている。
今までは、入寮前に買っておいた食料で賄っていたのでまず広さに驚いた。
隅に置いてある籠とカートを手に、俺はまず野菜コーナーへと足を進めた。
「しかし、すごい数だなぁ…」
ザッと見渡す限り、見たことない野菜も多い。
機会があれば挑戦するのも悪くないかもな。
「…鍋とかでいいかな。」
野菜を見ていたら急に食べたくなってしまった。
男二人の食欲を満たす為の食費はバカにならない。 ならば、食欲を満たし且つ食費を抑えるには一番適しているように料理に思えた。
そうと決まればあとは楽だ。
鍋に必要な野菜を籠へどんどん入れていく。
肉は多めに仕入れ、キノコも欠かせない。
「あとは、」
糸こんにゃくと、豆腐と…米もなかったから買わないと。
頭の中でぐるぐると考えていると、前方に人だかりを確認出来た。
―――なんだろうか。
普段なら別段気にも止めないのに、何故か気になりそちらへと足を進める。
近づくにつれ、どうやら人だかりの中心の人物と店員が揉めているらしい事が分かった。
チラチラと声も聞こえる。
「たから! この値段はおかしいだろ、って言ってるんだよ!」
…。
随分…聞き慣れた声だった気がする。
面倒に巻き込まれる前にさっさと退散しよう。
足を元来た道へと転回させ、何事もなかった見なかったと自分に言い聞かせ一歩を踏み出したその時。
「あ。鷹木。」
丁度、人だかりの隙間から確認出来たのだろう。
片識は俺の名を呼んだ。
いや、正確には呟いたと表現した方が正しい気がしたが今はそんな事実どうでもよかった。
問題は、片識と店員とその他多数の視線が一気に俺に向けられた事。
無視すればいいのに、俺は反射的に振り向いてしまい直ぐ様後悔する事となってしまった。
とにかく、目、目、目…人の視線の強さをひしひしと感じ思わず後退りそうになる。
店員らしき人物は懇願するように此方を見てくるし、集まった人達は好奇心を隠す気もないのかじぃっと見つめ、ただ一人だけ違う視線を向けるのは問題になっている片識の間抜けな視線だけだった。
俺は一つため息を吐くと、人だかりの中央へと足を進めた。
片識は未だボケッとしているが、一刻も早くここから消えたい一心で店員に向き直る。
「あの、こいつ何かしでかしたんですか?」
先ほど聞こえた声からだいたい原因は察していたが確認は必要だろうと話し掛けると、店員は神にもすがる勢いで話始めた。
「いえ、その…そちらのお客様がこちらの商品の値段が高すぎると申しておりまして、」
まだ話している途中で漸く片識の意識が戻ったらしく、舌打ちが自分の横から盛大に聞こえた。
それに店員は「ひっ」と小さく悲鳴を上げて口をつぐんだ。
「だから何度も言ってるだろ。値段が高すぎるってよ!」
俺はだいたいの事情を把握し、店員が持っている製品に目をやる。
…糸こんにゃくか。
ちらりと自身の籠へ目をやり、まだ買ってなかったよなと確認する。
「あの、それ俺が買います。」
糸こんにゃくに指をやり、店員の手から糸こんにゃくを取り、いいですよね?と確認をする。
「は、はい。こ、こちらでよろしいですか?」
今にも泣き出しそうな店員を軽くスルーし、値段を一応尋ねる。
「さ、380円になります…。」
…高い。
片識の反応をちらちら確認しながら言う店員から若干目をずらし横のこんにゃくコーナーへ目をやる。
こんにゃく、一番安いのでよかったんだけどな…
しかし事態を休息させるには、これが恐らく一番手っ取り早い。
「ありがとう。」
店員に背を向け、片識へ視線をやり、さっさと来いと合図を送る。
僅かな怒気が含まれているのは勘弁して欲しかった。
「5980円になります。」
あれから必要なものを籠へ入れなんとか予算内で買えたことに安堵する。
店の外に出ると俺達は真っ直ぐ寮へと向かった。
向かったのは俺の部屋。
ルームメートは夜ちょっと用事があると、朝言っていたしどうせ長々といないだろうと思っての事だった。
要するに、特に何も考えていなかったということだが。
とにかく、さっさとガスコンロを用意する。
「あれ…確かこの辺りに…」
がさがさと棚をひっくり返していると、後ろから切っていいかと尋ねられる。
「おう、頼む。」
スーパーの袋から野菜を取出し、後ろでとんとんという切る音が聞こえだした頃、
漸く奥からガスコンロを引っ張り出した俺はそれを引っ張り出し机へ置く。
「こんなもんか?」
「まぁ、そんなもんだろ。」
丁度二人分程度の野菜の量に頷く。
あとは煮るだけ。
別段気にする事もなく、野菜きのこ類、豆腐と入れて待つ。
ダシは基本的に適当。
これぞ男の料理!
…なんてな。
「あ。そういえば、片識なんであそこにいたんだよ?」
今まで気付かなかったが、あそこにこいつがいること事態がおかしいのだ。
何より、絵的に合わない。
「え、あぁ。」
鍋の中の白菜を箸で突いている片識はそのまま続けた。
「…ほら、奢れって言ったけど一つくらいは持って行った方がいいのかと思ってよ。」
なんともらしくない台詞に頭を傾げたが、追求する必要もないだろう。
「そ。なら、なんでこれ…安く欲しかったんだよ?」
鍋の中でいい感じに湯だっている糸こんにゃくを突き質問する。
「いや、単に食べたかったから?」
きょとんとされても可愛くなんかないが、成る程と合点がいく。
間もなく鍋も出来上がり、そのあとは他愛ない会話を交わし片識は片付けを済ませて去っていった。
俺も特にする事もないなと、布団に潜りそういえば明日から授業かと頭の隅で考えながら意識は飛んでいった。
>鍋食べるだけで終わってしまった…orz
始めましての方も通って頂けている方もこんにちは!
二番手担当の休憩所です!
今回内容無さすぎて本当に申し訳ないです;
鍋を食べてもらいたかったんです←
休憩所