影雅羅尉弥 3話
今回短いです……。
あ、改名しました! 元「戸山羅花」です
「……ほれ」
「? 何なの? これ」
「一応お前がいなかった分の授業ノートだ。明日返してくれればいい」
少々乱暴気味に樫原に手渡す。
「おお……。影原君って意外にマメなの……」
ノートをぱらぱらめくりながら樫原が言う。
「意外とか言うな! つか、それは先生に頼まれただけだし……」
「うんうん。分かってるなの。影原君はツンデレなんでしょうねぇ」
「な・ん・で・そ・う・なるっ!」
「とにかく、ありがとうなの。遅れずに済みそうなの」
「おう」
会話が一段落する。すると、樫原が首をかしげる。
「あれ? ……もうお昼休み……なの?」
「そうだな」
「えっと……私のお弁当は?」
「……取ってくる」
「酷い!」
樫原が涙目でいう。そこまで露骨に悲しむか。
「いやまあ冗談だ。ちゃんと持ってきてるから」
「うんまあ分かってたなの」
さっきの態度が嘘のようにケロッとして言う。
「そうきたか! ちょっと可哀想とか思っちゃったよ!」
「なら作戦成功なのー」
「おまえなぁ……。まあ、今回は俺が悪かったか。……ほらよ」
「ん、ありがとなの」
樫原が弁当箱のふたを開ける。
「ってやっぱり昨日の残りか!」
「だって私作れないから」
「諦め早いなおい! もちっと自分で作る努力しろって!」
「なら影原君手伝ってよ」
「いや俺いつもそう言ってるしな。大丈夫なの~とか言ってやらなかったのお前だろ」
「……」
突如樫原が無言になる。俺何かしました?
「……あ」
「ん?」
「そういえばそろそろ戦闘訓練とかいうやつがあるらしいなの」
「思いっきり話題変えたなお前」
樫原がポケットから「ITA」を取り出す。因みに「ITA」とは「Information Transistor Automatic」の略です。嘘です。
「えーっと……。ほら、ここなの」
「あ? あー……ホントだ」
確かに行事一覧にはそう書かれている。
「戦闘訓練ねぇ……面倒くせ……」
「じゃあ影原君はきっと早死にで棺なの」
「早死にから棺にどうつながるかわかんが、とりあえずバカにしてるだろ」
「じゃあ火葬場なの」
「突っ込むところはそこかよ! ……はぁ。で? その戦闘訓練とかいうやつがどうかしたのか?」
「実はその戦闘訓練、三人以上のチーム戦なの」
樫原が鷹揚にうなずく。
「そうか……じゃあ、大柳と……はぁ」
「なんでため息つくなの!」
「いや……うん、そうだよな。サポーターは必要だよな」
「まるで自分に言い聞かせるみたいに!」
流石に可哀想なので、この辺でからかうのを止めておく。
「嘘だ嘘。樫原もだな」
「やった!」
「あーはいはい良かったなー。さて、俺は弁当買ってこないと……」
「そんな時間あったっけ?」
「え?」
時計を確認。残り後十五分。
「お前が戦闘訓練なんて話するからこんな時間経ったんだー! どう考えても今からじゃ間に合わないだろうが!」
「んー……そうだ!」
何か思いついたように樫原が手を打つ。
自分の箸を構えると、ミートボール(昨日の残り)をレタス(適当にちぎったらしい)に綺麗に包んで俺に差し出した。
「うん。それアウト」
「!?」
「いやなんでお前そんな驚けるんだよ! そんな無言で箸向けられても食えるかよ!」
「え……じゃあ、あ、あーんとか言ったほうが良かったなの?」
「問題はそこじゃねぇ! つか、それさっき思いっきり口つけてたじゃねぇか!」
「大丈夫なの! 私は気にしないから!」
「お前は良くても俺は駄目なんだよ!」
叫び過ぎたのと恥ずかしさで息が切れる。なんか最近樫原怖いよ。
「でも影原君食べないのも駄目なのよ?」
「まあ、それもそうなんだが……何か変わりになりそうなもの……」
「……こんなところで何してるんだい? 君達」
突然ドアの方から聞き慣れた声がした。
「おう、どうした大柳。怪我か?」
「まあ、そんなところさ。君達は……ああ、ごめん。触れないでおくよ」
「いやお前の予想は恐らく外れだ」
「おやそうなのかい? てっきり僕は――」
「ストォォォップ!」
「えぇ!? 何!?」
大柳の口をコンマ単位で塞ぎ、それ以上の漏洩を防ぐ。危ない危ない。
「んー、でもさ、もう無駄じゃない? 結構君と樫原さんが付き合ってる、みたいな噂は広まってるよ」
「そうなんだよなー……。全く……樫原が否定しないからだ」
「私のせいじゃないなの」
そっぽを向いてそう返した。
「全く……」
「それより、影原君」
「あ?」
「もう授業始まるよ?」
「おっと。そうだったな。んじゃ樫原、また来るぜ」
「はいなのー。あ、影原君、このサンドイッチだけでも食べていけば?」
「そうだな。ありがと。じゃな!」
「またねーなの」
「……ごめん。僕には付き合っているようにしか見えないよ……」
「はぁ!? どこがだよ!」