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休憩所執筆 第三話

――鍋をやったその次の日。 


当然だが、次の日はやってくる訳で、これまた当然だが朝日も昇る。 


しかし、その「当然」な事実を受け入れがたい現実もあるわけで。 


「はよ。」 



朝ごはんもそこそこに、玄関のドアを開けるとそこには既に片識がいた。 


昨日の事を根に持っているのか、いつものおっかない表情に更に眉間に皺という大変嬉しくないオプション付きで立っていれば誰だって嫌にもなるはずだ。 


「…はよ。」


朝から特にワイワイはしゃぐ派でもない俺たちは、あまり会話もないまま教室へたどり着き、そのまま別れた。 


今日の朝の会話で習得したことといえば、クラス分けは「能力値別」

ではないということだろうか。 

つまり、レベルEの能力者がAクラスに配属されたりしているということ。 

片識は自分の能力とクラスが一致しているのは本当に偶然だ、と語っていた。 




昨日覚えたクラスのドアをひき、中に入る。 


と同時にチャイムが鳴り響いた。 


――…。登校時刻、考えた方がいいかもな。 


昨日も確か入ると同時にチャイムが鳴った気がする。 


そして思った通り、昨日紹介してもらった担任が後ろから入ってきた。 


「席に着けー! 

今日からは忙しいぞ!」


ドタドタと入ってきたのは、大量のプリントを抱えた担任であった。 



「早く、早く!」



ドンッと教卓に全てのプリントを置き、俺たちの方を振り向いた。 


慌て席に着いたのを確認し、プリントを配りながら担任は続けた。 


「いいか? この資料をよく見て、今後のスケジュールを考えるんだ。」



その配られたプリントには、“特別枠 一週間の予定”という見出しの下に、今日から週の最終日までの予定がぎっしり詰まっていた。 


言葉のあやとかではなく、リアルにぎっしりと。 


「「………。」」


クラスの全員がその意見らしく、全員反応はない。 

というより、衝撃が大きくて声も出ないと言ったほうが正しいか。 


「…みんなの気持ちは良く分かる、」




クラスの全員がだんまりの静かな空間を切り裂いたのは、担任の澄んだ声だった。 



「だけど、やるしかない。」



そう。

本当にその言葉に尽きる。 

――やるしかない。


この学園に来た時に覚悟していたじゃないか。 

辛くても、大変でも、やってみせると。


 


――もう、俺のような被害者を出さない為に。 




クラスの気持ちが団結し、担任は少しだけ声のトーンを落とし話始めた。 


「みんな、いいか? 問題は週の一番最後なんだ。」


視線をするすると下げて行くと、そこには“合同演習”の文字が。 


――…え?



「この学園のモットーは、“習うより慣れよ”。

つまり、実践こそ最大の知識ってところかな。


今からお前達には、とりあえずこの演習に向け、鍛練をしてもらう。魔物には知っての通り、物理的攻撃も効く物もいる。


お前達にはまず、この物理的攻撃が可能な魔物を相手に実習をしてもらって、闘い方を分かって貰おうということになってる。」


ここまでで何か質問あるやついるかと、担任はクラス全体へと目をやり、いないようだと確認すると、また話始めた。



「そこで、お前達にはまず¨チーム¨を組んでもらう。」


「…チー…ム?」


誰かが呟いたそれにも、担任は優しく返した。


「そう、チームだ。

これはどのクラスも同じだし、全ての戦闘に対しても同じだが、




お互いの欠点を埋めあうという役目や仲間意識、まぁ…他にもいろいろと個人よりは有利に働く場合が多いんだ。


なるほど、たしかにそうかもしれないな。

人間である以上、欠点はあるし、寂しさは人を臆病にさせる。


「そこで、お前達には休み時間明けまでに、チームを組んでてもらいたい。

ちゃんと特性とか相性とかも考えて組めよー。

じゃ、ホームルーム終わり!」


担任は、何かあったら俺職員室にいるから!

という言葉を残し、部屋を出て行った。


一方、俺たちはと言えば糸が切れたように皆話だし、仲間同士で集まったりしている。


この様子だと、すぐにチーム分けは出来そうだ。



――俺以外は。






初日に出遅れた男にとって、¨チーム分け¨なんて不利だ。


どうしよう。どこかに無理に入れてもらおうかな。

そう思い、とりあえず席から立つ。


「あ、あの、」


控えめにかけられた高めの涼やかな声に反応し、首をそちらへと向ける。 


そこには、黒髪短髪でいかにも気が弱そうな女の子が立っていた。 


――あ、昨日の…。


その子は、昨日たった一人質問したあの子に間違いなかった。


その子は少し迷った後、目を思い切りつぶりながら勢いよく言葉を発した。 



「あ、あ、あのッ!わ、わたし榊原 恵っていいます。

よければチーム、わたしと組んでもらえませんかっ」



びくびくと返事を待っている女の子に、なぜそこまで怯えているのか疑問に思ったがそれよりなにより、 


――か、かわいい。 




榊原恵は本当に可愛かった。 

しかし、だから組む、という訳にもいかない。 


このチーム分けは恐らく自らの命運をも左右する。

安易に決めるわけにはいかない。



「あ、えと。その…」 



かと言って、こんなに可愛い女の子に声をかけられ無下に出来るはずもない。 

どうすればいいんだと内心わたわたしている俺の背中に小さな衝撃があたる。 

だいたい腰あたりをトントンと突いている原因を知ろうとぐるりと体を反転させる。 



――あれ? 



だがしかし、目線の先に人物の影はない。


 


おかしいな、気のせいか? 

そう思い、再度体を元の位置へ戻そうとした直後だった。 



「我を無視するな、阿呆め」



そう耳で聞いた次の瞬間、先ほどとほぼ同じ位置から信じられない衝撃波を受け、前方へと倒れた。 


「っ!?」


なんとか足を踏ん張り、ガバッと振り向く。 


だが、やはり人影はない。 

「一度ならず二度までも、我の呼び掛けを無視するとはお主、覚悟は出来ておるのか。」



やたらハスキーな声の方へと視線を向けると、そこには信じられない光景があった。





 




―――ね、こ? 




正確には、二足歩行している猫のような生物。 


いや、でも、しかし。 


「ねこ…だよな、間違いなく…」



白地に茶色の斑点のある可愛らしい猫は、服や靴まで着ていた。 


それが余計にアンバランスで、こちらを混乱させる。 


「…ねこ、か。懐かしい呼び名よ。

しかし、我には立派な名があるのだ。

主とて、“人間”とか“人類”と呼ばれ、嬉しい訳なかろう。」





いやに偉そうな話口調なのはさて置き、確かにもっともだなとひとり納得する。 

元来、“名前”とは同種の生き物を個別に区別しやすいようにつける物であるように感じるし、やはり猫の言う事は正しい。



 



「あ、あの…」



猫に名前を聞こうと口を開いたと同時くらいに背後から声が聞えた。 


榊原恵だ。 


彼女は猫を見つめ、猫もその視線を真っ直ぐにうける。 



なんだ、これ。 

なんの時間だよ。 



なんだか二人の間にほわほわした空気まで流れてるしッ 


まさかの猫と美少女の恋物語の始まりか!? 


そんな葛藤をしていることも知らず、少女は静かに口を開き、 



「ね、ねこさんは…三毛猫…なんですか?」 




と発した。 


「え?」



そこ気にするところっ!? 

心の中で突っ込んでいると、ハスキー声が一拍置いて聞こえた。 



「あぁ、いかにも。」




「いやいや、お前も答えるなよっ!?」



なんだ、こいつら新手の天然なのだろうか? 


…だとしたら、丁重に断らねば。 


天然美少女と2人、というのは魅力的だが、この流れで行くと確実に、二足歩行する猫と天然少女と俺というなんともアンバランスなパーティーになってしまう。 


正直、面倒はごめんだ。 

声をかけてくれた榊原恵には悪いが、ここは丁重に断ろう。 



――あぁ、でもこれで美少女との青い春はなくなるわけだ。 



さよなら、俺の青春…。 

…ちょっとでも、青春の扉を叩けただけで俺は満足だったよ。 



「主、主。」


「あ、あの…」






回想が終わり現実にフィードバックしてくると、目の前には、そろそろと覗きこんでくる榊原恵の姿があった。 


「っっ!?」



思わず、後ろへザッと下がってしまいそのままバランスを崩してしりもちをついてしまった。 



―――っ!! 恥ずかしい 



いくらチームを組むのは遠慮したい子でも、女子なのだ。 

しかも、美少女。 


そんな子の前で派手に俺は…!! 



自覚してくると、一気に恥ずかしくなってしまい顔に血が集まってくる。 


――どうしよう、どんな顔してるだろうか、 



笑っているかもしれない、或いは呆れているかもしれない、 


女子にあまり免疫がない俺は顔を上げれずにいた。





 

かと言って、その場を離れる事も出来ない。 



――《ヘタレめ。》 



胸の奥から低く、凛と届いた声音は間違いなくおれ自身の声。 


だが俺とは違う意志を持って発生するその声の主は、もう一人の《おれ》で。 

「っ、」



気持ち悪い、胸に響くこの声音も、顔を上げれずにいる俺自身も。 



ぐるぐる思考が回る。 

視界さえも回っている錯覚。 




気持ち悪い…。 





「おい。』




ハスキーな声がぐるぐる回る思考を遮った。




「っは、ね、ね、こ…?」



二足歩行…してる、猫… 


「っあ、」



思考回路がゆっくり回りだし、勢いよくあげた顔に写ったのは、泣き出しそうな榊原恵の顔。 



「え、あ、ど、」




一気に思考がクリアになって、さっきとは違ったぐるぐるが襲う。 


「ごめんっ! あの、ちょっとびっくりしただけで、その…嫌だったとかじゃなくて、」




とりあえず口走る言葉に文法など関係なく、ただの単語と単語の羅列にすぎないものが口からとめどなく溢れる。 


ただ、笑ってほしくて。 


その思いだけが、あまり話さない俺の口を動かし続けた。 


「だから、その、」


「…ぁ、の…」



更に続こうとしていた単語の間に、あの高めの声が静かに割って入る。 


「は、はい。」





「…分かり、ました。…あり、がとう。」



ふわりと微笑んだ、その笑顔は今まで見てきた中で一番綺麗なものだった。 



「あ。」



だから、俺は言ってしまった。 


言うつもりだった言葉とは全く逆の言葉を。 



―――俺と、チームを組んで、くれませんか? 




「は、はいっ!」


「ふむ。仕方ない。我はカーティル・ミィ・ヨンラ。以後よろしく頼む。」



「いや、お前は別に、」


「長い名前、ですね…カーティ、ル…すいません、なんでしたっけ?」


「ミィで良い。」


「では、ミィさん。と」

「うむ。」


「わたしは、榊原恵です。…技術は、に、忍術…もどきです、」




「…おれは、鷹木悠。技術は剣術だ。」




>やっとヒロイン出せた! 

あと、ストーリーも進められたのでよかったです…。 

これからも頑張りますので、チームカルテットをよろしくお願いします! 休憩所

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