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やるべきことが分かったからか、ぐっすりと眠ることができた。
世界一の朝食を胃袋一杯に詰め込んで、家を出る。
学校に行けば、スライムテイマーのことを馬鹿にされたりと少なからず嫌な思いをするだろう。でも、僕の足取りは軽い。
ラビちゃんを迎えに行ったけど、予想通り領主様の館で保護されているらしい。
もし会えるタイミングがあれば声をかけて欲しいと、ラビちゃんのママに伝えておいた。
学校に着くと、やはりみんな適性の話をしている。
サモナーになった子は楽しそうで、テイマーを引いてしまった子はどこか浮かない表情だ。
僕も再度ステータスを見てみたが、スライム超特化テイマーとばっちり書かれていた。
テイマーが必ずしも弱いかといわれたらそうではない。
例えば召喚枠が5つのドラゴン特化テイマーがいたとしよう。
テイマーには従魔のステータスが加算される。つまり、5体分のドラゴンの力を持った人間になるというわけだ。考えるまでもなく最強である。
問題は、レベルを上げなければゴブリンにすら勝てない素の体で、どうやって強いモンスターをテイムするんだってこと。
テイマーが生活していくには大きく分けて二つ。
召喚士として生きることをやめるか、運命を受け入れるかだ。
前者は、普通の職に就けばいい。モンスターを使えないハンデはあるが、食糧生産に関わるもよし、頭を使う仕事もいいだろう。
後者を選ぶのなら、よほど家が裕福でない限りは冒険者を選択する。
足しにもならぬほどの小銭を稼ぎながら、ひたすらスライムを倒し続けてレベル上げ。様子を見て格上のモンスターに挑戦し、想像を絶するようなひもじい生活に耐え、長い年月をかけて自分を鍛えていく。
そんな苦行に誰が立ち向かえるというのか。つまり、強いモンスター特化であればあるほど、テイマーとして活躍するのは難しい。
だからこそ、クラスのテイマーたちは落ち込んでいるのだ。
「よおカイト、適性診断で気失ったらしいじゃん? お前の適性何よ?」
ポンと肩に手を置かれ、声の方に視線を向ける。
くるくる天然パーマの薄い緑髪。犬の鼻頭を押し潰したような顔。クラスの悪ガキ――ザンブ・ヨークシャーだ。
背が高くてめちゃくちゃに太ってる、縦にも横にもでかい奴。ザンブ軍団と名付けたグループを率いてたむろしたり、イタズラばかりしている。
僕はこいつが苦手なんだよね。うるさいし、乱暴だし……。
「どうせ後で発表することになるんだから、べつに今は言わなくていいよね?」
「なんだよなんだよおいおいお~い! 隠すような適性なわけぇ? みんなー、カイトの適性すんげえらしいぞ!」
耳が痛くなりそうなほどザンブが大声を出すので、クラス中が騒めき始めてしまう。これでは、嫌でも注目を集めてしまいそうだ。
「分かった、言うよ。耳元で大声出すのやめてよね。僕の適性はスライム超特化テイマー。これでいい? もう構わないで」
「超特化テイマーってなに? 超ダセェじゃんか! ぶひょひょひょひょ! スライムごときで隠してたのかよこいつ。あんな地面を這いずるだけのナメクジみたいなモンスターをテイムしてどうするってわけぇ? なぁ、俺っちに教えてくれよ~」
ほら、これだよ。だから言いたくなかったんだ。
息も臭いし、笑い方も下品だし。なんだか僕のことがずっと嫌いみたいなんだよね。
だったら距離を置けばいいのにって思っちゃう。
……って、あれ?
言われてみれば確かにそうだ。ザンブなんかに気付かされるなんて。
「俺っちの適性はぁ、なんとなんとぉ、オークサモナーでしたぁ! ぶひょひょひょ! 今度俺っちのオークちゃんとお前のクソ雑魚ゴミスライムで模擬戦しようぜ? なぁなぁなぁ、いいだろいいだろ~?」
「まだテイムしてないし、従魔にしたってゆっくり育てなきゃいけないんだ。すぐに戦わせる気もない。あっち行けってば!」
「え、ええええぇ! テ、テイマーって……テイムしないと……た、戦えないんですかぁ! し、し、信じらんなぁい! ぶひゃひゃひゃひゃ!」
「サモナーになれてよかったね。いつでもオークを召喚できるなんて羨ましいよ。……これでいい? もう分かったから、放っておいてくれないかな?」
これでもかと馬鹿にしてくるザンブ。
いい加減、耳が痛かったので言葉で突き放したんだけど、気に入らなかったらしい。ザンブの目つきが変わった。
眉間にしわを寄せ、元々細い目をさらに細めて不機嫌を露わにしていく。
こいつはすぐムキになるし、怒ると手が出るタイプの人間だ。
「なんだよその態度はよぉ? ラビがいなきゃ何もできねえくせに、俺っちに歯向かうってのかおい!」
右手で胸ぐらを掴まれて、持ち上げられてしまう。
……はぁ、少し考えたいことがあったのに。
「ラビちゃんになんの関係があるわけ? 分かった、そんなに勝負がしたいならさ、一ヶ月後でいい? 正々堂々モンコロルールでやろうよ!」
「おーし、言ったな? 俺っち決闘を受けちゃいましたーっと! みんな聞いたか? カイトと俺っちは、一週間後に試合をする! 負けたら一生奴隷だかんな!」
ザンブがクラス中に向けて、決闘の成立を言い放った。




