源氏川を流れる姉弟
この作品は史実を元にしたフィクションです。
源氏川に流れる姉弟
1905年4月8日
今日は中学の入学式だ…
汽車が来た!
「常陸太田行きです。」
隣の郡なのに…遠いなぁ…
那珂郡と久慈郡と多賀郡の人は太田中
東茨城郡と鹿島郡と行方郡の人は水戸中
と原則決まっている。
学区外の中学行ける人は優秀である。
僕は学区内の太田中に通うことになった。
汽車で常陸太田まで30分だ…上菅谷駅に着くと上菅谷駅は水戸駅ほどではないが立派だった。
上菅谷から15分ほどで常陸太田まで着く。
茨城県那珂郡菅谷町を進む。
額田村を越えると久慈川超え久慈郡についた…久慈郡についてから6分で常陸太田駅に着く。そこから歩いて30分で太田中に着く。
太田中は鯨ヶ丘という丘を登ったところにある。常陸太田駅からこの坂を登るのはきつい…
てこてこ太田中を目指して進む。進む。
登ると活気がある商店街が広がっている。まるで横浜の港町のような人通りの多さだ。茨城有数の大都市を感じる!
そんなこんなで茨城県立太田中学校に到着した。
校門をくぐり入学を実感した。教室に入場しする。木の匂いがいい匂いだ!
入学式前に先生が話し始めた。
「自己紹介します。某の名は高橋菊助だ。出身は江戸……間違えた…東京府南葛飾郡新宿町だ。出身校は昌平坂学問所だ。私は『太田中で働ける』と聞いて驚いた。太田中…義公様の隠居先だからねぇ。」
「先生優秀ですね!」
周りが持ち上げる…僕には発言権がまだなかった…柳河村は水戸との結びつきが強いため、水戸中に行く人も多い…なので僕は同じ小学校の人が一人も学級にいなくて浮いていた。
入学式を受けあっという間に帰宅の時間となった。
汽車が来るまで時間が2時間ほどあるので源氏川で桜を見ることにした。
「シャジクモだ!かわいい!」
「品性に欠けるわよ。幸夫」
シャジクモの話をする少年に驚いた!
「シャジクモの何が好き!」
僕は咄嗟に少年に声をかけた。
「見た目はオモダカ目トチカガミ科のオオカナダモに似ているが原始的な藻類の仲間だからです。」
早口で語っていた。
「植物じゃないんだ……マツモとかの一種だと思ってた…」
「いきなり話しかけてお前さんの名は何だ?」
「僕は太田中の1年鈴木隆だ。君たちも名を教えてくれ?」
「オラの名前は、鴨志田幸夫だ。」
「私は鴨志田オウと言います。太田小の6年生で、幸夫は双子の弟です。」
声が可愛いと思っていたがよく見ると顔も可愛い。そして桜色の服が似合う……
「なるほど。」
「『男女の双子の娘なんて気味が悪い』と言わないんですね…」
こんな可愛い子にそんなこと言う人が許せなかった…
「こんな可愛いオウさんに…」
あ…
「かわいいですか…」
オウが頬を赤ながら言った。
「もちろん可愛いよ。」
もう隠さず答える事にした。
「え……照れてしまいますよ……」
照れるオウも可愛い。オウをずっと見ていたい。オウちゃん可愛い…
「お前ら付き合えば?」
幸夫は言い僕とオウは目を合わせ、二人で顔を赤らめた。
「いいかもしれませんね。隆さんと…」
好きだ。だが今言ったら良くない…
馬車が20分後に来る…
「馬車の時間があるので帰る。」
「また明日の午前9時に来いよ…もっと藻類話がしたい。」
「もちろんだ…行くべ!」
鴨志田双子は忌み嫌われ、人が寄って来なかったため僕を慕ってくれた。オウちゃんはかわいい。
走って常陸太田駅に着くと馬車に間に合った。電車に揺られ、上菅谷を過ぎるとすぐ常陸津田に着いた……
もう次はもう常陸青柳駅だ。
常陸青柳駅の駅舎から見る川田村や柳河村はいつ見ても綺麗だ!
ぬかるんだ、道を抜け家へ帰った。
「兄上。太田中はどんな場所であったか?」
いきなり弟の太聞いてきた。
「優秀そうな人がいっぱいいた…」
そうテキトーに答えた。
そんなことより
明日は日曜日だ!そして鴨志田姉弟に会うのが楽しみだ!
「太田に花見に行ってきます。」
そう言って家を出ようとした。
「まぁ…友達もうできたのけ?」
母が言う
「まぁそんなところかな…」
って言った。
「気をつけっぺよ。」
そう母から言われ家を出た。
そこから太田鉄道に乗り一瞬で太田駅まで着いた。昨日と同じ場所ということは東橋の方に行けばいいべ。すると鴨志田幸夫となんか見覚えある人がいた。
「隆!っよ!」
そう幸夫が言ってきた。馴れ馴れしい奴だ。
「こいつは川鯉お前さんと同じ太田中で1年だ!」
そうなんか見覚えある奴のことを言った。
「?…」
不思議な顔をしていると、
「僕の名前は大金川鯉だよ。世矢小から太田中行ったんだけど、君は太田小?」
大金が丁寧に名乗った。この2人と仲良くしてることから彼は僕が太田小だと予想したようだ。
「僕の名前は鈴木隆。那珂郡の柳河小から太田中に進学したんだ!」
柳河村が通じるかどうかわからなかった…
「柳河村…水戸の手前にある村?…常陸青柳駅前に役場がある村だよね?」
柳河村の位置を正確に言ってくれた。
「そうだよ。」
嬉しい。正直言って柳河村なんて正直微妙な位置すぎてどうでもいいだろう…
「嬉しいは!なんで鴨志田姉弟と仲良いの?」
僕は疑問を大金に投げかけた。
「2年前にたまたま知り合ってそこからずっと月1くらいであってるんだ!」
「隆に川鯉を合わせたくて呼んだんだ!」
色々あって尊敬する学者の話になった。
「ロバート・フォーチュンのお茶の研究は素晴らしいよ。法を犯してまで清に大冒険しに行ったのだから。」
川鯉は植物が好きでロバート・フォーチュンを尊敬していた。ロバート・フォーチュンは1870年代に活躍したイギリスの植物学者だ。インドで茶葉の栽培をするため茶葉の栽培方法を日本や清に調べに言った男だ。この男が清を弱体化させたとも言われている。川鯉は面白い奴だ。
「おらは義公様かな…義公様の執筆した植物図鑑のおかげで多くの人が薬の情報を手に入れることができるようになったのだから。」
義公様つまり徳川光圀は大日本史だけでなく植物図鑑も執筆しておりその図鑑のおかげで多くの庶民が救われたと言われている。
「僕は菊池先生…知らないよね…鮭の人工孵化に日本で初めて成功させた人の1人で僕と同じ村の出身なんだ!彼に憧れて教師を目指したんだ。」
僕が言った。
「水戸藩の百姓出身の生物学者の助手だよね!彼は才能の原石は田んぼにあることを体現したよ!彼を発掘した水戸藩の連中もすごいけどね…」
大金川鯉が言った。
「我らが水戸藩にもすごいのがいるもんだな!おらが来年太田中入ったらそんな奴を発掘する同好会を造るべ!」
幸夫が自信満々で言った。
「やれよ!俺も協力はする。」
大金と僕は一緒に同じことを言っていた。
「あれ…?オウさんは?」
僕はオウさんに会いたくてきたんだ!
「せっかく来てくれたんだ!僕の家に2人とも来るといいよ!隆、お前は大好きな女に会えるぞw!」
僕を小馬鹿にするように幸夫は言う…
西山荘の北の谷津に鴨志田の家はあった。山の湧き水を生活に使っており、私の家とは全く違かった。
「ちまきをどうぞ。」
とオウちゃんからちまきを貰った。太田町のちまきは特殊で戸惑っている。
「笹団子と同じだよ。」
と大金から言われても笹団子も食べたことがない。
だから直感で1枚に笹の葉だけ残してぱくりと団子を食べた。
「このちまきは手作りなんだ。」
すごい上手に結ばれているように見えた。
「素人が結んだ笹団子だから下手だべ」
幸夫が言った…
そこまで言わなくてもいいだろうよ…そんなことを思っていると
「幸夫には人の心がないんだね。」
少しキレ気味にオウが言った…
「……」
僕と大金で沈黙した…
「失礼しました」
オウが言った…
そんなこんなで7月25日に僕、大金、幸夫で上野博物館に行くことになった…
続く
水戸藩士は新潟から帰ってくる際、腰に笹団子を巻いて帰って来ていた。そのことから常陸太田でも『笹団子』は太田ちまきといって食べられている。しかし新潟の笹団子と違い太田ちまきはヨモギが団子に入っていない。
また一説には徳川光圀の好物は笹団子だったとも言われている。




