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推し活に励む底辺冒険者、毎回レア素材を貢いで実力者をざわつかせる  作者: フーツラ


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第3話 鑑定師コリーナと魔法師エルル

 ギルド所属の若手鑑定師コリーナは、音もなく去っていく冒険者の背中を見つめていた。


「ロジェ君……」


 静かにギルドの扉が閉まり、完全にロジェの姿は見えなくなった。


「なんの依頼を……?」


 コリーナは依頼掲示板の前に立ち、張り出されている依頼票に目を通す。


 王都の西の森に出現するモンスターの討伐依頼が多い。この時期はモンスターの数が増える。モンスターが増えると上位個体も生まれやすくなる。


 依頼票は、そんな上位モンスターの討伐依頼ばかりだった。薬草等の採取依頼もあるが、森の深いところでしか取れないものしかない。


 F級冒険者が一人で挑むには厳しい依頼票ばかりだった。


 コリーナは依頼掲示板の前から立ち去り、買い取りカウンターの中に入っていった。


「あっ、先輩。見ましたよ~。あれって万年F級の人ですよね。知り合いなんですか?」


 コリーナが席につくなり声を掛けて来たのは、後輩の鑑定師のクラリスだった。今年ギルドに入ったばかりの新人だ。


「あぁ。ロジェ君のことね。彼、私がギルドに入って初めて素材を鑑定した人なの」

「へ~。あの人、前は冒険者らしいことしてたんですね。今はお昼にコソコソやってきて、依頼掲示板を見て帰るだけですけど。さっきみたいに」

「……うん……」

「あれ、何かあったんですか?」


 コリーナはなんどか瞬きをしてから話し始める。


「私が初めて鑑定した素材はロジェ君の持ってきた魔石だったんだけどね……」

「はい」

「その魔石、鑑定の結果が【オークキングの魔石】だったの」

「えっ……!?」


 クラリスは目を剥いて仰け反るような仕草をみせる。


「それ、本当にあの万年F級冒険者が討伐したんですか? 盗品じゃなくて?」


 コリーナは表情を暗くする。


「当時もギルド中の人がロジェ君のことを疑ったの。彼は二階の会議室につれていかれて、かなり長い時間、副ギルド長に尋問されたわ」

「まぁ、それは仕方のないことですよね。だって、F級冒険者がオークキングを倒せるわけないですから」

「結局、どこからも被害届も出されていないってことでロジェ君は放免ってことになったんだけどね、それ以来、彼はギルドの依頼を受けることも、素材を売りに来ることもなくなったの……。冒険者の間ではしばらく『盗人野郎』って呼ばれていた……」


 ため息をついてから、コリーナは物憂げな瞳でクラリスを見た。


「だから、たまにギルドに顔を出しても依頼掲示板を見て帰るだけなんですね。他の冒険者がいない時間を選んで」

「そうね……」


 コリーナは諦めたように答える。


「彼と同時期に冒険者になった人の中にはもうB級に上がっている人もいるから……。色々気まずくて、なるべく、他の冒険者とは顔を合わしたくないんでしょうね」

「なんか世知辛いですねぇ。あのロジェって人。どうやって生活しているですか?」


 一方のクラリスは興味津々らしい。


「住んでいるのは『蛇の巣』っていう安宿らしいわ」

「えっ……!? 野宿の方がマシって言われてる『蛇の巣』ですか?」

「うん。それで中央通りの怪しい屋台にモンスターの肉を売って生計を立てているみたい」

「なんか悲しくなってきました……。わたし、【鑑定】のスキルあってよかったぁ~」


 クラリスがそう呟いたところでカウンターに冒険者が現れた。買い取り依頼のようだ。クラリスは慌てて接客を始める。


 それからは次々と冒険者がやってきて、いつもの慌ただしいギルドになった。



#



 リンデ王国王都にある白蘭魔法団本部。本隊所属となった魔法師には宿舎の個室が与えられる。最近下部組織から上がってきたエルルについても例外ではない。


 夕飯を終え、浴場で身体を清めたエルルは頬を上気させたまま自室にもどり、こじんまりとした椅子に腰を下ろした。


 その前には小さな机があり、鏡が置かれてある。


 エルルは髪をしっかり拭いた後、机の引き出しから白く輝く櫛を取り出す。そして、鏡を見ながら髪を梳かし始めた。


 白蘭魔法団は王国の中で唯一、女性だけで構成された魔法団だ。他の騎士団や魔法団は男女混合が基本である。


 白蘭魔法団には二つの役割がある。一つは国を守る魔法団。もう一つは国民の人気を集める偶像。


 配信魔法により様々な騎士団や魔法団の活躍がタブレットに配信されるが、白蘭魔法団の配信だけ別格の人気があった。


 その理由は白蘭魔法団の団員が全て見女麗しい女性だからだ。


『強く美しくあれ』


 これは白蘭魔法団の活動理念だ。団員は己の魔法と容姿を磨くことに余念がない。それが、国から与えられた使命だから。


「この櫛……やっぱり凄い……。髪がピカピカに輝く……」


 エルルは最近、視聴者からギフトとして贈られた白い櫛を愛用していた。その櫛で髪を梳かすと艶が増し、輝くようになるのだ。


「一体、なんの素材で作られた櫛なんだろ……」


 こんなに髪の質を高める櫛なんて聞いたことがなかった。魔道具でもないただの櫛なのに目に見えて効果がある。きっと、特別な素材で作られているに違いない。


「通りすがりの冒険者さん……ありがとうございます」


 エルルはまだ見ぬ冒険者の顔を想像しながら、髪を梳かし続ける。


「私、頑張って凄い魔法師になります!」


 決意を新たにしたエルルの顔におどおどとした表情はなく、ただやる気に満ち溢れていた。

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