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推し活に励む底辺冒険者、毎回レア素材を貢いで実力者をざわつかせる  作者: フーツラ


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第22話 開封の儀③

「……完成だ……」


 床に敷いたベルベッドの上には、天に昇っていく龍に模した杖がある。その龍の口には赤く輝く宝石のようなものが咥えられている。


 この世に一つしかない龍の杖。俺の会心の作だ。


 まず、支柱部分について説明しよう。


 これは白龍の骨を削って作った。滅茶苦茶硬い素材なので、何本もノミが駄目になった。「蛇の巣」の自室で昼夜問わずカンカンとノミを叩いて削っていたら流石にスネイクのおっさんがガチギレされた。


 それ以降、スラムに行ってずっとカンカンとやって、やっと支柱部分が出来上がった。俺が作業しているといつものオスガキ二人とメスガキ一人が寄って来て、「ロジェ、何を作っているの!?」としつこく尋ねた。適当にモンスターの肉を渡して黙らせたが。


 ヘッド部分はより繊細な作りになっている。彫刻刀で龍の頭に見えるように細工をし、その口には加工した魔王の瞳を咥えさせた。


 魔王の瞳は薬屋のババアの処理により、赤い宝石のようになっている。どんな手順を踏んだのかは謎だが、見た目もよくなり、その上で効果は失われていないので「良し」である。


 ちなみに魔王の瞳は二つある。一つは【吸収】のスキルが込められた右の瞳。もう一つは【放出】のスキルが込められた左の瞳。


 エルルちゃんに捧げる龍の杖には【吸収】の瞳を使った。【吸収】は身を守る上でかなり優秀なスキルだ。


 薬屋のババアに協力してもらって何が【吸収】出来るのか検証したが、結論は「なんでもあり」だった。


 魔王の瞳を手にした状態で吸い込む対象を意識し、【吸収】と唱えるだけでいい。魔法だろうが衝撃だろうが臭いだろうが、赤い瞳に【吸収】してしまう。


 薬屋のババアは色めき立ち、「老いを【吸収】!」とやっていたが、流石にそれは無理だった。


 ちなみに魔王の左の瞳は俺が持っている。エルルちゃんとお揃いである。イヒヒヒヒヒヒヒ。


「ロジェ、気持ちの悪い笑い声を上げるな!」


 ドン! と壁を殴られ、文句を言われた。いつものことだ。気にしない。


 俺は手紙と一緒に龍の杖をベルベッドに包み、金糸で編まれたロープで封をする。


 あとは白蘭魔法団本部へ行って、ギフトをポストに投函するだけである。



#



『王国民の皆んな! いつもありがとう! 白蘭魔法団のギフト開封配信を始めるね! 明日からしばらく遠征だから、いつも以上に張り切っていくから!』


 タブレットからの音声が狭い「蛇の巣」の部屋に響く。


「……始まった……」


 いつものようにパオラ団長の挨拶から配信が始まった。「遠征」とは帝国が派遣した盗賊団討伐の件だろう。


 カメラが引いて白蘭魔法団の団員を全員映す。お揃いのローブ姿でカメラに向かって手を振る。一番最後はエルルちゃんだ。


 水色の髪はつやつや、頬もつやつや。胸はバインバイン。


 白龍の櫛や水のエレメンタルスライムの化粧水の効果だろう。今までのギフトがちゃんと役に立っているようで、胸が熱くなる。


 俺が感涙にむせぶ間に、ギフト配信は進んでいた。


 パオラ団長、カリー副団長のギフトは数、質ともに凄い。やはり皆、遠征の噂を聞き付け、餞別の意味を込めてギフトを奮発したのだろう。怪我を心配している人が多いらしく、高級ポーションの類が目に付いた。


『最後は新人エルルちゃんのギフト開封です!』


 パオラ団長がエルルちゃんの横に立ち、紹介する。エルルちゃんはいまだに緊張しているらしく、カメラを向けられると、つやつやの頬を赤く染めた。可愛い。可愛過ぎる。もうこの時点で絶頂失神しそうである。


「耐えろ……! 耐えるんだロジェ……!! 絶頂には早い……!!」

「うるせえぞ! 気持ち悪いことを自分に言い聞かせるな!!」


 薄い壁が殴られ、隣人からクレームが入る。いつものことなので無視である。


『今回はなんだろうね? エルル、開けてみて』

『はい』


 ギフトボックスから出されたベルベッドの包がテーブルに置かれる。エルルちゃんは慎重な手つきで金糸が編み込まれたロープを解く。


『わぁぁ! 凄い』


 エルルちゃんが声を弾ませた。カメラは龍の杖を手に取るエルルちゃんの姿を映す。


『また凝ったギフトね。通りすがりの冒険者さん、今回は一体どんな素材を使ったのかしら?』


 パオラ団長が探るように問い掛ける。はい。魔王の瞳を使ってます! 滅茶苦茶レアです! もう二度と手に入りません!


 一方のエルルちゃんは龍の杖を手にしたまま、俺からのメッセージを開き、まじまじと目を通していた。


『なんて書いてあるの?』

『どうもこの杖には、とんでもないスキルが込められているみたいです……』


 パオラ団長が俺からのメッセージが書かれた紙を受け取り、さっと目を通す。


『これが本当だとしたら、とんでもない代物ね……』


 一方のエルルちゃんはカメラに向かって笑顔を作り、龍の杖を両手で握って胸の前にもってきた。


『通りすがりの冒険者さん、ありがとうございます!!』

「杖が……胸に挟まれてるぅぅぅうううううう……!!!!」


 こんなことをされて、意識を保っていられるだろうか? 否。俺は早々に絶頂に身を委ね……そのまま床に沈んだ。



#



 ギフト開封配信終了後、白蘭魔法団の団員達は明日からの遠征に備えてそうそうに自室に引き上げていった。


 残っているのはパオラ団長とエルルだけ。二人は「通りすがりの冒険者」から贈られた龍の杖を眺めている。


「【吸収】なんてスキル、聞いた事ないわね。本当かしら?」


 パオラは険しい顔をして、エルルに問い掛ける。


「試してみるしかないですね。この後、修練場に行って簡単な魔法を【吸収】してみます」

「それがいいわ。もし、この紙に書いてある通りの効果があるなら、非常に有効よ」


 二人はテーブルに置かれた紙に視線をやる。


「しかし、例のB級冒険者も熱心ね。エルルは会いに行ったの?」


 エルルは急に表情を硬くした。


「……いえ……」

「そうなの? まぁ、今度の遠征には多くの冒険者も参加するらしいから、何処かで会うかもね」

「……そうなんですね……」


 顔を強張らせたまま、エルルは返す。


「そんな照れないのよ。さぁ、修練場に行きましょう。私もその杖に効果を確認したい」

「……はい……」


 パオラはスタスタと配信を行っていた食堂を出て行く。エルルは龍の杖をベルベットに包むと、手紙をローブの中に大事そうにしまって、パオラの後を追った。

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