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初めての事件!

雨傘千里は、放課後学校の非常階段に行った。クラスでは友達が居なくて、家庭では離婚調停中で居場所がない。お母さんとお父さんが怒鳴りあっているところに帰りたくないから今日も誰にも見つからないところで隠れて本を読んでいた。


「その山は、天をつくように高く……」


ふいに、太陽を覆う雲が無くなったのか周りが白く明るくなった。顔を上げると壁に昨日はなかった張り紙がはられていた。


「アトリエ…友達を作りたい人。君たちにミッションを与える。この暗号を解いて、アトリエに来ること!ヒント、黄昏堂の横の路地をまっすぐ進んで、黄色い家を左に曲がって空き地の三件隣の風見鶏が目印です?」


なんだこれ。座った時はあったかな。全然気づかなかった。

でも、友達…欲しいな

よしっここに行ってみよう!


黄昏堂は、近所にある有名な駄菓子屋さんの名前だ。学生が放課後友達と集まる憩いの場所として知られている。


黄昏堂の、脇にある細い路地を見る。ちょっと暗くて狭い道を決死の思いで先に進む。だんだん道が広くなってきたところに黄色い家があった。


「えっと…黄色い家を右だっけ?左だっけ?」


不安になり急に1歩も進めなくなった。

どうしよう。怖いよ。


「どうした、迷子なの〜?」


ふわふわした声は何故か聞き覚えがあった。後ろを振り向いて、綺麗に編み込んだ三つ編みとたれ目で柔らかい顔立ちの少女を見て思い出した。


「えっと…風見ほのかちゃん?」


クラスメイトで、いつもみんなの中心にいるめっちゃかわいくて優しい女の子。


「アトリエに行きたいんでしょ〜じゃあ、千里ちゃん。君に、試練を与える!この問題が解けたら君は秘密結社アトリエのメンバーだよ〜」


突然、問題を出すと呼ばれて驚いたけど、入団テストと言うんだったら受けて立とうじゃない!


「さて、朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足の動物ってなんだ?」


朝は4本足?

脚の本数が、一日で変わるってことかな。4本足の動物は、犬、猫、猪。2本足の動物が、ネズミ……人間は2本足?クマは、2本足と4本足のイメージがあるけど……うーん。


「全然わかんない。ヒント、教えて!」


「私に言えるのは、比喩的な表現ってことかな。」


比喩って……なにかに例えてるってこと?

普通に考えて朝昼晩で足の本数が変わる動物は存在しない。

そういえば……前読んだ本でこれみたようなスフィンクスの試練で出てくる。そうだ!

赤ちゃんは4本足、おじいちゃんは杖も含めて3本足ってことだった。つまり答えは!


「人間だ!」


「千里ちゃん!すごい、正解だよ〜」


ほのかちゃんが、飛び上がって喜んでくれた。でも、私これ元々知ってたから……


「ごめん、私この問題知ってたの。ヒント聞いた後に思い出して……」


「え〜そうだったんだ!千里ちゃんは博識だね。アトリエはそんな仲間が欲しいから、全然大丈夫だよ。逆に正直に言った千里ちゃんと仲良くなりたいな」


前を向いて歩き出した。ほわほわしている。


「仲良くしてね!私のことは、千里って呼び捨てにしていいよ」


その言葉に、風見ほのかは後ろを振り向いて微笑んで答えた。


「うん!じゃあ、私のことはほのかって呼んで。そうそう、あの張り紙貼ったの私なの〜。」


「え〜!!!?!」


ほのかちゃんは、男ばかりのアトリエで女の子の仲間を探していたんだそう。そこで、いつもひとりでいる私を見かけて仲間に誘おうと思ったんだって。


歩きながら話し込んだ。ほのかちゃんは、思ってたよりも意見をはっきり持ったかっこいい女の子だってことがわかった。


アトリエは、風見鶏のある少し不思議な家だった。全体的に洋風の可愛らしい家で扉にはᗩTᗴᒪIᗴᖇとオシャレな看板が出ている。


中に入ると、同い年位の子供たちがいた。みんな楽しそうに絵を書いている。


その中で、私たちが入ってきたことに気がついて何も特徴のない平々凡々な男の子が話しかけてきた。


「俺は、パブロ・ピカソ!君が新入団員だね」


突然、有名な画家のしかも外国風の名前で名乗られて私は困惑した。

どういうこと……?


「このアトリエに入ったやつはみんな画家の名前をコードネームにつけるんだ!」


ピカソが元気に言った。そして、ほのかちゃんも付け加える。


「私たちは、秘密結社アトリエとして正義のために活動してるんだよ」


私は、コードネームとか初めてだったから顔をぱあっと明るくさせた。なんだか秘密の組織に入れてもらったみたい!


「お前の名前は?」


「わたし、雨傘千里。よろしくね、ピカソ」


私も入れて欲しい……そう伝えようとした。そしたら、ピカソが何か言い始めた。


「俺は、将来いくつもの顔を持つスパイになるのが夢なんだ。だから沢山名前があるピカソがコードネームさ。雨傘は、雨…あめ……レイン…あっ!」


こちらを満面の笑みで見つめて言う。


「君のコードネームはレンブラント。レイン・レンブラントだ。よろしく」


自分だけのコードネームにじんわりと仲間に入れた喜びを噛み締めた。

みんなによると、ここのアトリエはピカソのおじいさんのもので放課後みんなの秘密基地になっているんだそうだ。


「ここは、独りの人とか困ってる人を助けるための秘密結社なんだ。」


笑顔で自分の理想を言うピカソに太陽のようなエネルギーを感じて、私はここに入りたいと思ったのだ。


ほのかちゃんが話しかけてくる。


「レンブラント!よろしくね。私はモネだよ。クロード・モネ。」


「レンブラントじゃなくてレインって呼んで!そっちの方がかわいいから好きだな。」


レインっていい名前だな。なんか自分にしっくりくるような気がする。


「レイン、ここはアトリエだから絵を描くところなんだ!一緒に絵を書かない?」


私は、絵を描くのが好きだったから笑顔で言った。


「うん!風景画を書くのが好きだな。お花の模写とか。モネはどんな絵を描くの」


「私はね。漫画書いてるの……」


モネが漫画!?


「えー!すごい。読みたいな。」


「いつか、この秘密結社を題材に漫画を書いて有名な漫画家になるの!」


話しながら絵を書いていると突然アトリエに駆け込んでくる子がいた。


「ピカソ。助けてくれないか……」


背が高くて痩せていて丁寧な言葉遣いはとても大人びて見えた。


「ミケランジェロ?どうしたんだ」


どうやら彼は、アトリエのメンバーの一人でコードネームをミケランジェロというらしい。


「パブロ、太陽が覆い隠されて、私の心はもう壊れてしまいそうです。」


あまりにも詩的な言い方に一瞬意味がわからなくてぽかんとしてしまった。


「それってつまり、どういうこと?」


そう私がつぶやいてしまったとしても無理はなかっただろう。


「つまり、ミケランジェロはこう言いたいんだよな。学校でいじめられて困ってるから助けてって」


見事に、暗号を解読するピカソ。凄すぎる。モネによると、ピカソは人の気持ちを読むとることが得意なんだって。損得考えず、メンバーのそして正義のために力を尽くす。そんなピカソをアトリエメンバーは慕っているんだ。


「よーし、ミケランジェロを助けようか!」


アトリエメンバーに集合をかける。

すると、たちまちメンバーが集まった。さすがリーダーは、人望がすごい。


「じゃあ、司会は俺パブロ・ピカソが務めるとして……書記はフェルメールよろしく頼む」


フェルメールと呼ばれた男の子は、静かに立ち上がりホワイトボードの前に立った。余り喋らない子なのだろう。


さっきから楽しそうに絵を描いていた子は、一応こちらを伺いながらも絵を描くことはやめていなかった。よほど絵が好きなんだろうか。顔をあげず、羊のデッサンをしている。


「ゴッホ。絵ばっかり書いてないで少しは会議に参加したらどうだ?せっかく新入りも来たのにさ。」


とんでもなく美しい、まさに完璧な顔をした少年がずっと絵を描いていた男の子に言った。


すると、静かにスケッチブックを閉じ手に抱え込みこちらを見た。彼がゴッホだとしたらあの少年はだれなんだろう。


「今回は、ミケランジェロをいじめているやつを懲らしめるための話し合いをしよう!今日司会を務めるパブロ・ピカソだ。」


さっき、ゴッホを注意していたイケメンな少年が手を挙げた。


「レオナルド、どうぞ」


この少年は、レオナルドというらしい。なるほど、レオナルド・ダ・ヴィンチだろう。まさに完璧な少年にぴったりな名前だ。


「まずは、ミケランジェロに話を聞いてみるべきだと思うな。」


「ふむ、それも一理あるな。ミケランジェロどういう経緯で俺に助けを求めに来たんだ?」


ミケランジェロが口を開く。


「真の姿を覆い隠したうさぎは狼の中で仮面を剥ぎ取られ正体がバレた。」


うん、全然わかんないからピカソに翻訳を頼もう。


「なるほど、ミケランジェロも自分の言葉遣いが分かりにくいことはわかっていたからどうにか隠して普通にやっていたけどそれがバレてしまってバカにされたりものを隠されたりしていると。」


「真実の友は、泥人形だ。」


「友達だと思っていた人は、普通じゃないとわかった途端いなくなってしまった。うーん困ったな。ミケランジェロはどうしたいんだ?復讐だったらフェルメールがやってくれるぞ」


フェルメールがやってくれるとはどういうことなんだろう?フェルメールを観察していると、突然フェルメールがバックから呪符のようなものを取り出してミケランジェロに渡した。


「呪いたい人、貼り付ける。」


呪う?どういうこと。呪符にはおどろおどろしい不気味な雰囲気が漂っていた。


「それ、危ないんじゃ…」


「レイン、フェルメールはこう見えて呪いのプロなんだから任せておけば大丈夫だよ。」


「私、いじめられたからって呪うのはいけないことだと思う!」


とにかく自分の伝えたいことをそのまま話す。


「復讐なんてしちゃったらいじめっ子と同じになっちゃうよ。それに、復讐の連鎖なんて世の中不幸な事だらけになっちゃうんじゃないかな」


ゴッホがせせら笑った。


「はっ、正論だな。ミケランジェロは助けを求めに来たんだぞ?俺たちにできることはやらないとだろ。それに呪符って言っても殺すようなものじゃない。目には目を歯には歯を、いじめにはいじめを。相手を呪い返す、いじめ返すだけさ」


「だから、それがダメだって言ってるの。友達が困ってる時は、悪の道に進めようとするんじゃなくて寄り添ってあげないといけないんだよ!」


モネも同調してくれる。


「私も、人には優しくしないといけないと思う。情けは人の為ならず、巡り巡って自分に帰ってくるように、人を呪わば穴二つ、いいことをすればいいことが帰ってくるし、悪いことをしたら悪いことが帰ってくると思うんだ。」


話はデッドヒートして、みんな冷静に話が出来なくなっていた。ピカソとフェルメールは静かに私たちの意見を聞いていた。


「はっ、じゃあミケランジェロは悪いことをしたから今いじめられてんのか?自分と違うものを認めずただ否定してくるだけのやつに我慢する必要なんてないだろ。所詮この世は、公平じゃないんだから。」


ピカソとレオナルドがヒートアップしすぎじゃないかと慌てて私たちをとめに話に入ってきた。


「まあ、落ち着いて?僕はどっちも間違ってないと思うよ」


その言葉で、周りは大人しくなった。気まずくなった空気をどうしようかと思っているとレオナルドが話し始めた。


「でもさ〜やっぱり女子が入ってよかったよな」


私は訳が分からず固まっている。

それに気づいたピカソが説明するように言った。


「モネってさアトリエ唯一の女子メンバーでしょ。俺たちと対立することはあっても意見が通らないことが多くて」


「うんうん、ただでさえモネは優しくて気が弱いし僕たちが間違ったことしようとしても流されることも多くて。」


「その点、レンブラントははっきり言ってて、かっこいいな。びっくりしたよ」


なんだろう私、何か悪いことしたかな。


「まあ、君がいてよかったってこと!意見が偏るのは良くないことだからね。アトリエは正義の組織なんだから」


その言葉に私たちは落ち着いて、いつの間にか強ばっていた体をほぐす。一気に緊張状態だった場所が柔らかくなった。


ずっと黙っていたフェルメールが話し出す。


「やっぱり、一般人に呪符を使うのは父上にも禁止されてるし…本当はちょっとやろうか迷ってたんだ。だから、良かった。」


フェルメールが久しぶりに長文を喋った!?

と周りが妙に驚いているのを見てなんだか無性におかしくなって、みんなで笑いあった。


「じゃあ先に、ミケランジェロと同じ学校のやついる?」


「その点、僕はミケランジェロとは同じ学校だよ。生徒会長をしているからたまに見かけることもあるでしょ?」


「確かに、レオナルドが学び舎の王ということは知恵の紙から賜ったことがある。」


??レインはさっぱり分からなかったけど何とか読み取ろうとして。


「レオナルドが、学び舎だから、学校の……王?ああ、トップ、生徒会長ってことね。知恵の紙は、なんかお知らせのプリントで知ったってことか」


周りからびっくりされたような顔で見られて驚くとモネが言った。


「ミケランジェロの言葉がわかるなんてさすがレイン。馴染むのが早いね。私でさえほとんどわかんないのに……」




レオナルド・ダ・ヴィンチに、学校でのミケランジェロの様子を後日、アトリエ会議で報告してもらった。


ミケランジェロは、ほんとにいじめられてたんだろうか?

そうだとしたらどんな風に?辛いことも沢山あっただろう。どうにかしていじめをなくしたいな。


「修司……あっ、これはミケランジェロの名前ね。暴力を振るわれてた。しかも、わざと服に隠れるところに……あいつら卑怯だよ」


レオナルドが言うには、

ミケランジェロの話は詩的な表現が多くピカソじゃないと正確に解読するのは難しい。

だから、少し雰囲気的にも怖がられていてミケランジェロには友達が出来なかった。先生に相談しようにも、「もっとちゃんと喋りなさい」と怒られるばかりで話が上手く伝わらなかった。それで、いじめられたと。


でもそれって、ミケランジェロが悪いわけじゃないよね。ましてや、普通に話したらいいってことじゃない。

いじめっ子以外にもミケランジェロにちゃんと向き合わなかった、先生や、クラスメイトにも責任はあるんじゃないかと思う。


アトリエメンバーは、押し黙った。

この中でも、1番仲間思いなフィンセント・ファン・ゴッホが言う。


「学校に乗り込もうぜ!」


さすがに学校に乗り込むのはやりすぎかもしれないけど、例えばいじめていたやつを呼び出したり……


「私達も、それがいいと思う。ただし、周りにバレない程度だよ!私たちは秘密組織なんだから」


ピカソが手を挙げて言った。机をバンッと叩いてあくどい顔で笑いながら言う。


「はい!ミケランジェロ。スマホ貸して」


そうして、何やらスマホを操作しているようだ。何してるんだろ


「うん!できたよ。いじめっ子に、『明日の放課後、ハナミズキ公園に来い(秘密結社アトリエより)』って送ったから」


秘密結社アトリエ……なんかいい名前。


「なるほど、決戦は明日の放課後!集まれるやつは各自武器を持って集まれ」


私は、多分戦力にならないと思う……でも代わりにいいことを思いついた。


「モネ、こうしてみたらどうかな?」


私は、いじめっ子以外にクラスメイトや先生にも罪はあると思う。だから……みんなのスマホをハッキングして、些細な秘密をみんなにばらしちゃおう。


「レイン、それ名案!」


「ふふーん、昔からハッキングだけは得意中の得意だったんだよね。」


父がプログラミング関係の仕事に就いていたのでパソコンについては誰よりも小さい頃から触ってきた。


「ていうか、昨日は正義の味方とか言ってたのにハッキングなんでやってる事正反対だね。」


まあ、ミケランジェロが正義だと思ったのもあるけど……


「昨日はミケランジェロのいじめって言っても悪口とかその程度だと思ってたから。これからはもっとちゃんと話を聞くようにする」


「ふふっレイン成長したね。私も精進しないと。」


クロード・モネは、華のある笑顔を浮かべた。かっ、可愛い!


早速、ハッキングしていこうと思う。えっと……ミケランジェロの先生は、へ〜浮気してるんだ。

これを奥さんに、転送っと


クラスメイトで、一緒に笑ってた奴は友達の悪口を言っていたとか些細な秘密をばらすことにした。



今日は決戦の日だ。

アトリエメンバー全員が時間の10分前には集合した。マイペースな私たちには珍しいことだ。


「みんななにか武器持ってきた?」


そういうピカソの背中にはありえないほど巨大なナップサックが背負われていた。中から鉄パイプなど物騒なものが飛び出している。


「ピカソ。何持ってきたんだよ」


ピカソはニヤニヤしながらリュックをおろし、荷物の中から武器を取り出し始めた。


「これはスタンガン、これはナイフ……ロープにえっとこれなんだっけ?」


アトリエメンバーは呆れて声も出なかった。

どんだけ持ってきたの!?


「さすがに持ってきすぎ……」


相手が心配になりそうなほどの備えだ。


「でも、あんなクズのためにメンバーが怪我するとか嫌だし、ダサいじゃん。」


ということでと、ピカソは私たち二人に荷物を押し付けた。


「お前ら女の子だろ。怪我したら大変だしここで荷物見て待ってろよ」


かっこよくたち去っていった、4人は正直言って喧嘩が強そうじゃなくて不安だった。

だから4人の喧嘩の強さを聞くと


「フェルメールがいたら大丈夫かな?不思議な力があるしね。

ダ・ヴィンチも、完璧だし喧嘩も強そう。

ピカソを意外と器用貧乏だしなんでも出来る。ゴッホは、キレたら手がつけられなくなるくらいは強いかな。」


あまりにも弱そうな人が居なくて

あれ?これ楽勝じゃない?

そう思った。


4人とも後ろから忍び寄りって奇襲をかけた。


いじめっ子が、4人に気づいて


「あん?何ガンつけてんだよ」


と、ガラの悪い声で言った。彼らは近所でも有名な不良らしく周りには取り巻きのような人達もいる。


「ちょっと……復讐に来たので」


「大人しくやられてもらってもいいですか」


レオナルドと、ピカソの声で殴り合いが始まった。相手は、いじめの主犯3人と、取り巻き5人。戦力差は倍だけど……


アトリエメンバーが勝つだろうな。

それを裏づけるようにもう立っているのはいじめっ子たち3人だけだ。


ピカソと、レオナルド、フェルメール、ゴッホが一斉に飛びかかって。


最後に立っていたのは思った通りアトリエの4人だった。


「あ〜、疲れた」


地面に倒れ込み、荒い息を吐いている。よく見ると黒いマスクをつけていたので顔が見えない。後で、復讐しようとか思われても誰がやったかは分からないだろう。


「まじで強かったな。フェルメール……」


取り巻きのうち2人はフェルメールが気絶させたらしい。


「何やったんだよ?」


そうピカソが不思議そうに聞くと、フェルメールは妖しげに笑って言った。


「ちょっと身体強化の呪符をつけただけさ。」


それは、それは……

さすがに相手の怪我が心配になった私たちでした。


ミケランジェロ!私たちは後日アトリエで集まっているとミケランジェロがやってきた。


「……」


何も言わないミケランジェロに不安になってピカソが声をかける。


「ミケランジェロ?」


「学び舎で、ミケランジェロは禁忌として扱われている。もう、花が踏みしめられることは無い」


ピカソは翻訳してくれた。


「ミケランジェロは、虐められることは無いけど周りからは避けられてるって……やっぱり方法間違ってたかな?」


しかし、ミケランジェロはぱあっと顔を明るくさせてピカソに言った。


「希望の星。翻訳家」


その言葉で、ピカソは満面の笑みを浮かべた。私たちに顔を向けて言う。


「ミケランジェロの言葉を理解できる人が友達になってくれたってさ!」


「ほんと!良かったじゃん」


「秘密結社アトリエ、任務達成!」


誰よりもアトリエ思いのゴッホが嬉しそうな笑い声をあげた。


ピカソがとっておきのことを思いついたかのように言った。


「ねえ、これからはゴッホのことあの方とかボスってよんでみない?正直言って僕がリーダーとか向いてないと思うし。仲間思いのゴッホがやってくれたら嬉しいなって」


ゴッホが戸惑ったように、でも少し嬉しそうに言った。


「えっ、俺でいいの?」


みんな、全力で賛成した。ゴッホがふさわしいの思ったからだ。

こうして、一切姿を表さない幻のボスが誕生した。


一旦は、アトリエから帰ったもののスケッチブックを忘れてしまったので取りに戻るとちょうどピカソとレオナルドが話しているところだった。

驚いて思わず隠れてしまう。


「ピカソ、本当は裏から手を回してたんじゃないか?」


「レオナルド急に何の話かな。」


レオナルドはずっとニコニコ笑っていて、いつも通りに見える。


「じゃあ、ミケランジェロを虐めていたヤツらはなんで俺たちがやつたことの復讐にミケランジェロをいじめなかったんだ。それに、随分都合のいいタイミングでミケランジェロのことが分かる友達が現れたものだね。」


確かに、私たちのせいでミケランジェロのいじめがもっと酷くなる可能性もあった。それに、ミケランジェロの友達が急に現れたのもどこかおかしい。


「別に、いじめっ子に関しては少し脅しただけだ。秘密を握って、少しお話したらすぐにいじめなんかもうしないって誓ってくれたよ。」


ピカソは悪気のない純粋無垢と言った笑顔で言った。脅した?秘密結社アトリエは正義の組織なのに……どうして


「そもそも、千里だってネットでミケランジェロのクラスメイトの秘密を流してた。レオナルドだって一緒に殴っただろ?情報の使い方が違うだけで何が悪いんだ。」


そうだ。確かに、私も……ハッキングは悪いことだって正義に反することだって、お母さんが言ってたのに。


私は胸を撃ち抜かれたような痛みを感じた。

走って家に帰ってお母さんに泣きついた。


「お母さん…私ね。ハッキングしちゃった。悪いことしちゃった。どうしよう。もう、嫌だ。」


お母さんはハッとした顔をして私をぎゅっと抱きしめて言った。


「千里のやった事は間違ってると思う。お母さん、昔友達に酷いことしちゃったの。それを償おうと思って今度こそ立派な人になろう、優しい人になろうと思って警察官になったの。千里も知らなかっただけでしょ?そうだったらこれから、自分で考えて優しい人になったらいいんだよ」


「お母さんごめんなさい……」


私は泣いて、今度こそ悪いことはしないって誓った。たくさん学んで、みんなの役に立てるような立派な大人になりたい。


「私、謝ってくる。」


傍観していたクラスメイトだって、自分がターゲットになりたくなかったから必死に目を背けていただけかもしれない。そうじゃなかったとしても、私みたいに後悔したりする権利だって、私を責める権利だってあるはずだ。話に行こう。


学校に言って、出てきたミケランジェロのクラスメイト一人一人に声をかける。


「宮崎さんですか?ごめんなさい!実は」


話したら、怒鳴られたり、叩かれたり、泣かれたり色々あってでも、後悔してるっていう気持ちに変わりはなかった。


私のせいで、友達と喧嘩してしまってひとりぼっちになってしまった人もいた。


今でも、ふとした瞬間に罪の意識に苛まれる。なんであんなことをしてしまったんだろう。仲間ができて浮かれていたから?


落ち込んでいると、お父さんがやっていた。


「千里、仲間と協力していじめっ子をやっつけたんだってな。」


なんでお父さんがそれを知ってるんだろう?


「お父さんも、小さい頃は仲間たちとつるんで、たくさんやんちゃなこともしたし、その頃がいちばん楽しかった。」


「お父さんも……?」


「だからね。今くらいは、青春を楽しんでみてもいいんじゃないかな。でも、パッキングは危ない目にあうこともあるかもしれないから控えるんだそ」


「うん!お父さんありがとう。みんなに会いに行ってくる」


家を飛び出して、アトリエの拠点に着いた。


「レイン!心配したんだよ。何日も連絡つかなくて」


モネが心配そうにしているが、私は笑って言った。


「気にしないで。」


「気にするよ!大事な仲間が急に来なくなったら。」


歯を食いしばった顔に、目からは涙が出てきそうで……驚いた。


「ごめん……」


モネが、満面の笑みで言われた。


「おかえり!」

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