8.もらっても問題ないよね?
「あのね。僕は君たちの組織が不透明すぎると考えてるんだよ。今まで赤城のことを信用して出資には口を挟まなかったけど、ここまでされたら流石にやらないわけにもいかないの。分かるよね?まず、君たち普段何してるの?出資を沢山受けてるけど、一体何に使ってるわけ?ちゃんとお金の使い道を細かく記載した書類を出してくれないかな?」
「そ、それは、その…………あ、赤城様。あなたからも説得をお願いします」
おばあさんは言いよどむ。そして助けを求めたのが赤城。僕が信用してるって言ったからなんだろうけど、赤城は当然難しい顔をして、
「私も先代の父からここには出資し続けるよう言われてますし、必要性も教わっています。ですので私個人としては出資をやめるつもりはありません」
「それなら!」
「しかし!……しかし、上がこう言ってるのなら私にはどうすることも出来ないのですよ。それに、私もここが不透明なのは気にしているんです。本当に役割通りに動いているのか。そして、本当にこれだけの額を出資する必要があるのか。正直に言いまして、出資額は1割ほどに抑えて良いのではないかと何度か検討しているのですよ」
「そんな!?」
おばあさんは目を見開いて驚く。赤城が出資額を減少させるって考えてたことに驚いてるみたいだね。でも、当然の考えだと僕は思うんだけど。
「私とて父の言いつけがありますから、今までは思いとどまっていたのですよ。しかし、そんなときに今回の暴力沙汰です。私には内部腐敗しているようにしか思えませんね。……今回の事案へ誠意を持って対応して頂けなければ、私は父の言いつけを破る事になってしまうかもしれません。是非ともそうならないよう、あなた方にはきちんとした対応を願っております」
「……はい」
おばあさんは力なく頷く。今頃あの頭の中では、どう対応すべきなのかと悩んでいるのかもしれないね。
それなら、僕はもっと悩ませてあげよう。まだ攻めるポイントはあるんだから。
「で、また僕から質問なんだけど、明里ちゃんのあの小刀は何かな?まるで、自殺でもしそうな握り方だよね。……ここは料理をするにしても不適切な場所だけど」
「こ、これは明里がおかしくなってしまって……そ、そう!気が動転してしまっていたのです!」
「ふぅ~ん」
あくまでも自分たちは関係ないと言い張るみたい。
それなら、
「調べたところによると、君たち1度も保護してから明里ちゃんに医療的検査を受けさせていないみたいだね。それに、学校にも行かせていない。……これは保護者としての義務を怠っていると言えるんじゃないかな?僕が保護している間に検査を受けさせたら、明里ちゃんには軽い精神疾患があったんだけど?」
「「「えっ!?」」」
おばあさんも含めた家の人たちが驚いている。明里ちゃんも驚いてるね。
検査を受けさせたのが数日前だったから、検査結果が届く前に連れ去られちゃったんだよね。自分が精神疾患だったなんてビックリだろうなぁ。
「自殺しそうなのも君たちに原因があるんじゃないの?君たちに責任があるとしか思えないから、明里ちゃんは暫く僕が保護するよ。良いね?」
「し、しかし!」
「何?病院にも学校にも連れて行ってないことに、何か言い訳でもあるの?本人が拒否したとかでも言うつもり?というか、君たちが保護者だというのならその証拠を出して貰える?そういう書類もあるんだよね?」
「うっ!……わ、分かりました。明里のこと、お願いします」
明里ちゃんの保護者であることを証明する手段がないから、ものすごく悔しそうにおばあさんは言う。生け贄にする存在がいなくなっちゃったんだからね。
逆に、明里ちゃんは凄い嬉しそうにしている。嬉しいのは分かるけど、笑顔で小刀を振り回すのはやめて欲しいね。危ないからやめなさい。
「……まあ、何かに人を使うなら、僕に暴行を加えた人がいたよね?」
「「なっ!?」」
僕は生け贄の代替として、男の人を提案する。当人もおばあさんも、驚いて固まってるね。
そんな2人の様子に僕は笑みを深めて、
「僕を殴ったんだから報いは受けてもらうよ。……それ相応の報いを、ね?」
「……は、はい」
おばあさんは力なく頷く。ここで受け入れる以外の選択肢は残されてないから、当然だよね。
ただ、当たり前だけど本人が受け入れられるはずがない。他の人を生け贄にすることは躊躇しなくても、自分に被害が及ぶのは嫌だよね。だから、
「ふ、ふざけるなぁぁぁぁ!!!!!!」
そう叫びながら、こちらへ走っている。何かの術でも使ったのかその腕は巨大化されていて、それを僕へ振り下ろそうとしているみたい。
でも、僕を攻撃範囲に捉えた瞬間、
ガンッ!
「ぐあっ!?」
重い物で殴られ、転ぶ。そしてその眉間へ、銃口が突きつけられた。
「動くな。少しでも動けば殺す」
そう言って彼へ銃を向けるのは1人だけじゃない。男の人を拘束してる1人と、僕の周りにいる4人。そして、色々な角度から10人近く。全員が男の人へ銃口を向けている。少しでも動いたら蜂の巣だろうね。
「目覚様。いかが致しましょうか」
僕は問いかけてくるのは、隣で銃を構えている人。この銃を持っている人たち全員、僕の護衛だよ。隠密性が高いうえに強いから、凄い便利なんだよねぇ。
「とりあえず身柄をこっちの家に引き渡そうか。……で?、この人の力はどうだった?」
「常人ではあり得ないほどの力がありました。何かしらの身体強化が施されているかと」
「なるほど。……やはり、こっちの家には文書を全て公開してもらった方が良いね。こんなよく分からない力で襲われたら、ひとたまりも無いかもしれない」
僕はそう言って、おばあさんの方を向く。おばあさんは拒否したそうにしてるけど、
「わ、分かりました」
受け入れるしかない。1度は暴行されてるし、2度目の暴行まで行なおうとして、更に術まで見られた。ごまかせるわけがないからね。
「この人の処罰と資料の公開。明日までに決めておいてね。内容によっては、すぐに出資は打ち切ってもらうから」
「わ、分かりました」
青ばあさんはまた頷く。男の人の失態もあって、もう頷く以外の選択肢を全て奪われてるね。
奪ってるのは僕なんだけれども。
「あっ。あと、明里ちゃんはもらっていくから。ほら、行くよ。明里ちゃん」
「え?あっ。……うん!」
僕は明里ちゃんの手を引き、部屋を出る。赤城も黙ってその後ろに着いてきた。色々苦労をかけたし、後で労ってあげないとね。忙しいだろうからどこかに連れて行くのも難しいし、知り合い経由でお酒でも送れば良いかな。
屋敷から出た僕たちは、近くの空港へ向かう。そこからプライベートジェットで家に近い空港まで飛んだ。3つも隣の県だったから、電車でも時間が掛かるんだよね。やっぱり急ぐときにはプライベートジェットに限るよ。
「……私、戻ってきたんだね」
帰り着いたら、明里ちゃんが上の空な様子でソファーに座った。まだ気持ちの整理が付いてないんだろうね。寸前まで死ぬと思ってたんだろうから。
でも、1人で考え事なんてさせてあげない。
「じゃあ、僕が実感させてあげる。帰ってきたんだって。……今回の貸しは大きいからね。いつも以上に毎日激しくするから覚悟してて」
「んっ///」
僕は明里ちゃんへ覆い被さる。明里ちゃんのために沢山コネを使ったんだから、これくらいじゃ全然足りないよ。これいからいっぱい返してもらおう。
なんて思ってたんだけど、
「目覚君。私、すっごい感謝してるから!だから、学校が終わっても体で沢山お返しするから!!……良いよね?」
目覚ちゃんは、凄い熱が入ってた。
これ、完全に惚れられてるね。可愛い子に惚れられて僕としては嬉しい限りだよ。……ただ、あくまでも借りを返してもらってるだけだから、それ以上の関係になる気も無いけどね。
そんな風に夜が前以上に激しくなってから数日。その日、僕は資料を読んでいた。
「それ、神道家の資料?」
「そう。この間交渉して公開させた資料だよ。かなり古い資料だから写真で撮って送ってもらってるけど……凄い面白いね。やるつもりはないけど、この技術が表に出たら世界が変わるよ」
因みに、資料を読みながらも明里ちゃんとは色々してる。そう。色々と……。
そんなときだった、ピンポ-ンと、インターホンの音が。
「はぁ~い」
明里ちゃんが返事をして立ち上がる。僕は癒しが離れてしまって寂しいよ。
なんてただれたことを考えていたんだけど、明里ちゃんの方では、
『お願い!私もここで保護して!!』
「え?葵南!?」
何やら明里ちゃんの知り合いが来たみたいだね。名前にも聞き覚えがあるし、ゲームのヒロインだろうね。……またヒロインを拾うことになるのかなぁ~。次は面倒ごとじゃないと良いんだけど。……まあ、保護なんて言葉が出てきた時点で望み薄だろうなぁ。
「捨てられ負けヒロインを拾いました ~僕がもらっても今更文句はないよね?~」 《完》
この作品は一旦ここで終了です!
この作品の他にも同じような短さの作品を投稿しているので、作者のページから「長編化予備群」のシリーズを覗いて頂ければ!!
人気があった作品は長編化します。勿論この作品も……チラチラッ(ブックマークや☆をつけて頂ければ、続きが書かれるかも……
すでに
デイリーミッションを諦めたら美女と仲良く(意味深)なった
を投稿済み。また1時間後から、
ナンパしたら聖女を拾うことになりました ~異世界から来た美少女と一緒に楽な暮らしを目指す~
を投稿予定です。金曜日から続けた毎時投稿ですが、これが最後の作品です。よろしくお願いします。