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5.攫われても問題ないよね?

「……うぅ~し!今日も終わったぜ!」

「お疲れ~」


学校が終わった。後は帰るだけ。


「じゃあ、また明日な」


「うん。ばいばぁ~い」


友達に腕を振って教室で別れる。その瞬間、誰かにがしっと抱きつかれて、


「目覚君!帰ろ~」


一緒に帰ろうと誘ってくる声。この声、そして背中の感触。間違いないね。明里ちゃんだよ。

そして、その光景を見た友達を含めたクラスメイトは、


「「「「……えっ!?」」」」


困惑の声を漏らす。全員体が固まってるね。突然のことにビックリしてるんだろうけど。

僕は不満げな顔をしながら、


「明里ちゃん。学校だと極力関わらないようにしようって言っといたじゃん」


「アレは私が友達を作れるようにするためでしょ?友達作ったから良いじゃん。それに、見た感じ帰るのは1人でしょ?一緒に帰った方が楽しいよ~」


「いや、質問攻めにされるのが面倒なんだよ。それに、1人で帰っても暇が潰せるようにスマホも買ってあげたでしょ?」


「そうだけどさぁ~」


明里ちゃんは唇をとがらせる。文句を言いたいのは僕のはずなんだけどね?

僕は「はぁ」とため息をついて、


「まあ、知られちゃったし帰ろうか。質問攻めにされる前に逃げるよ!」


「らじゃ~」


明里ちゃんに呼びかけて、小走りで廊下を通る。廊下を走っちゃったダメって言われてるけど、小走りなら良いよね?え?ダメ?……まあ、バレなきゃ問題ないでしょ!

そして結局、2人で電車に乗って家に帰る。


「……ただいま」


「ただいまぁ!」


僕は少し疲れた声で、明里ちゃんは楽しそうに帰宅する。ちょっとムカつくね。僕が困ってるというのに明里ちゃんだけ楽しそうで。

ムカつくから腹いせに仕返ししてあげよう。手を洗った明里ちゃんをソファーまで引っ張って、……押し倒す。


「えっ!?ちょっ!目覚君!?」


「ふふふっ。約束を破る悪い子にはお仕置きだよ。……新しい制服を汚しちゃうことになるけど、仕方ないよね」


僕たちは制服を着たまま絡みついた。その後の洗濯がちょっと大変だったとだけ書いておこうか。

そんでもって、結局次の日に質問攻めに遭ったとも書いておこうか。さらにさらに、なぜか僕と同棲してることをものすごく自慢げに明里ちゃんが語っていたとも書いておこう。家出関連のことは話してないから、親戚だと思われてるのが救いだね。


数日後。

「ふふふぅ~ん」


「……楽しそうだね」


明里ちゃんが楽しげに鼻歌を歌ってた。最近ずっとこんな感じなんだよねぇ。

テンション高すぎて怖いんだけど。夜に押し倒したときも妙に積極的だし、何か裏があるんじゃないかって思ってる。


「そりゃあね。こっちの生活にも慣れてきて、外の世界ってこんなに楽しいんだって実感してさ。毎日が充実してるんだよ!」


「そっか。それは良かったね」


そう言われると僕も皮肉は言えない。逆に、思わずこっちまで笑顔になりそうだよ。幸せって言う雰囲気が全身から溢れてるよ。


「あっ。四ノ原さん!今日カラオケ行かない?」


「行く!」


2人で話してると、明里ちゃんは女子から遊びに誘われた、今日の帰りは少し遅くなりそうだね。夕食の時間を合わせられるように、帰る時に連絡してもらおう。

……あっ。そうだ、カラオケと言えば、


「明里ちゃんって歌分かるの?」


「歌?演歌とか童謡とか上手いって言われたよ」


「「……おぅ」」


僕と明里ちゃんを誘った女子は、揃ってなんとも言えない表情に。ある程度予想はしてたけど、やっぱり最近の曲とか分からないよね。カラオケ楽しめるかな?


「とりあえず、明里ちゃんには昼休みに最近の流行曲を一通り聴かせておくから」


「あっ。うん。よろしく。私も定番曲とか聞かせて手伝う!」


そうして僕たちは協力して明里ちゃんに曲を教え込むことになった。明里ちゃんの他の友達とかも集まって、今日歌う予定だっていう曲も聴かせてる。明里ちゃんは終始、自分の知らない曲に顔を輝かせてた。

後は楽しんで行ってくるだけ。の、はずだったんだけど。


「おい!明里ぃ!出てきやがれぇぇ!!!」


「ひっ!?」


学校の校門付近で出会う、がたいのいい男の人たち。辺りには黒い高級車と黒服の人たちが集まってる。その顔を見て明里ちゃんは怯えてるね。たぶん、家出してきた家の関係者なんだと思う。

その人は明里ちゃんを見つけるとこっちに歩いてきて、


「何?テロか何か?」


明里ちゃんに男の人が触れる前に、僕はスマホを構えながら尋ねる。テロって言う言葉に男の人は反応して、


「あぁ?お前みたいな下民のガキは知る必要が無いんだよ!黙ってろ!!」


そんな言葉と共に、拳が、


「ぐはっ!?」


僕の腹部にめり込んだ。いったぁ~~い。


「目覚君!?」


明里ちゃんは驚いて僕に駆け寄ろうとしてくれるけど、


「お前はこっちだ!」


「きゃっ!?」


男の人に腕を捕まれて、そのまま引きずられていく。そして、車に連れ込まれてどこかに消えちゃった。

……はぁ。嫌なことが有るものだねぇ。折角明里ちゃんに曲まで教えて、カラオケ楽しめるように準備したというのに。こんなことで壊されるなんて。

ムカつく。本当にムカつく。僕は苛立ちと共にスマホを取り出して、


「……もしもし。赤城?今ちょっとさ」

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