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第7話 デート的な何か side:美波

 それは脳と天を突き上げるような衝撃でした。


 ──かわいい。


 そう、かわいい。


 かわいいという単純明快な四文字が、紙吹雪のように舞い上がっていくのです。 



「──────────!?!??!?」

 

 ここがゴールです。

 終点なのです!


 もう帰っていいかな、かなぁ……。


 120パーセント満足したような気はしますが、ここで引いてしまったら負けなわけでして、何でもない風を必死に装って先導することにします。


 何だかまさとくんの頬が痙攣しているようにも見えますが……もしかしたらあまり体調がよろしくないのかもしれませんね。

 



♧♧♧♧♧♧♧



 

 街に繰り出して行きたいところなど、正直ありませんでした。

 お、男の子と出かけるなんてゴリゴリの初めましてですしね。


 あえて挙げるなら、映画館とかシュタバとかで、普通の『初デート』が出来たらいいかな〜愚考します。


 でも──


「…………よし、行こうか」


 男らしくキリッとした表情を見せたまさとくんが選んだのはカラオケでした。


 思わず「え…… 」と声が出てしまいましたが、()()()()()()良い選択な気がしなくもないので、むしろ歓迎です。

 完全個室での攻防戦は臨むところ。


「あっ、ごめん」


 錆びついたロボットのような動きで、まさとくんが振り返ってきます。


「……勝手に決めちゃったけど、大丈夫?」


 やや青ざめた表情です。

 なぜそのような顔をしているのか皆目見当もつきませんが、ここはいつも通り返しておきましょうか。


「全然。初デートでカラオケとか前代未聞です──なんて考えてませんよ!」

「はは……っ、ありがとう」

 

 ツンによる攻勢です──が、しかし、返ってきたのは乾いた笑いと安堵の表情。


 よく分からないですが感謝されてしまいました。

 そんなにツンが良かったのでしょうか……?


 どう返すのが適切なのか、瞬時に言葉を出すことのできないわたしがアタフタしていると、まさとくんがしっとりと言葉を続けてきます。


「……でも、ごめんよ。これ以上自分に嘘はつけないや」


 その声、その表情に、わたしが大好きな──まさとくんの色が含まれていました。


 結局この人は何かを隠そうとしても隠し切れない正直な人なのです。

 

「あー、クソ!」


 パチンっ。


 まさとくんは自らの頬を罰し、今日、初めて真正面からわたしの目を見据えます。

 

「よぅしっ、どんとこい。美波さんはどこに行きたい? 俺は分からん!」


「……??」


 何か、まさとくんの中でスイッチが切り替わったようですが、はっきり言って何のことかしら──って感じです。

 わたしが思うのすら憚れると思いますが、まさとくんも結構情緒不安定な部分があるんですね。


 まあ、それも。


「──ふっ、ふふ♪ 何ですかぁ? それ。最初からそう言ってくださいよ」


 新しい一面が知れたってことで、お得感満載です。


 しっかしそうですね、改めて聞かれてもわたしだって何も分からないですし……あっ、良いこと思いつきました!


 ずっとわたしのターンということで♪


「でしたら、ここからはわたしに付き合ってもらいます!」

「へい、なんなりと……」


 軽く頭を下げるまさとくんの手を取り、スキップ気味にショッピングモールへと向かうのでした。

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