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四話後 公衆の面前で熱烈なキス達成

 なんだかんだで二人仲良く(?)お鍋を食い終えた俺たちは、口内に残る魚介スープのしょっぱさをお茶でちびちびと洗い流しつつまったりと過ごす。


「まあ、元気出しなって。きっとあなたのことを好きだって言ってくれる女の子なんか、結構身近にいるはずだから。だからこそ、私――じゃなくて臨時総帥様も、あなたの対応急がなくちゃって思ったんだし」


「じゃあまず、今一番物理的に近い距離にいるキミが俺のこと好きになってくれよ」


「あっはっは!! ウケるー!」


 ばっしばっしと俺の背中を叩いてけらけら笑う彼女を、俺はただひたすら恨めしい目で睨めつけることしかできない。


 じ〜〜〜〜〜〜っと破壊光線出そうなレベルで見つめ続けてたら、やがて少女が笑いを引きつらせて距離を取った。


「……い、いや、ほら、ね? でもあの、私だってきみのこと、実はわりと嫌いじゃないよ? うん、これはほら、あれだね、きっともう好きと言ってもそれはさすがに超過言ですね!」


「結局過言なんじゃねぇかよ!! 嫌いじゃないと好きの間には月と大地ほどの差が有んだよ!!!」


「だ、だって、私が率先してキャットファイトに参戦するわけにはいかないじゃん!! さっきまでの話を一体どの口が言ってんのって話になっちゃうでしょ!? いや私ただの使者Aでしかないですけど、それでも立場ってものがね!!? だから、私だけは何があっても絶対あなたを好きになんかならないんだからねっ!!!」


「………………………。お、おう」


 それなんてフラグ? と言いかけたけど、この世界でフラグの概念を説明するのが難しいので、うっかり押し黙ってしまう俺。


 そのことを『言い負かしてやったぜザマミロ』みたいに思ってそうなクソ憎らしい笑みで、少女は胸を張り勝ち誇る。


「ま、正直なとこ、ほんと嫌いじゃないんだけどねー? うん、嫌いじゃないよ。嫌いじゃない。だってぇ、美味しいごはん貢いでくれたしっ!!」


「ゼノディアスしょーねんの存在意義は、またしてもごはん係にしかないのかよ……。いや、ぶっちゃけ美味い飯で懐柔しようとしてここ数日頑張ってたわけだから、狙い通りっちゃ狙い通りなんだけど」


「………ん? え、そなの?」


 完全に煽る目的で貢ぐ君扱いしてたであろう少女が、奇跡のビンゴを叩き出して目をぱちぱちと瞬かせる。


 やがて『それなんのジョーク?』と言いたげな様子を滲ませ始めた彼女に、俺はのんびり茶を啜りつつ付け足した。


「俺の魂の故郷的なとある国では、仲良くなりたい相手とは一緒に鍋料理を囲めってのが定番のひとつでな。正直、理屈の上では死罪やむなしと思ってたから、臨時総帥様と一緒に美味い飯食って仲良くなって、なんとか情に訴えてお目こぼしなり手心なりを頂こうと画策したわけよ」


「えぇぇぇぇ……、それ色々無理有る作戦じゃない……? 世界でいちばんってくらいに偉い人の前に引っ立てられた大罪人が、『そんなことより鍋食おうぜ!』とか言って食材持参してくるとか、頭とか人間性より先にまずは毒殺か暗殺の可能性疑うし……」


「いや、仮にも世界の守護者にして支配者たる【魔女機関】の、〈力有る魔女〉筆頭並み居る魔女様達や、あまつさえその頂点に君臨するトップ魔女様が鎮座ましますホームに連れていかれるんだぞ?

 毒だの暗殺だの小手先でどうにかならないレベルの想像もつかない罠なり防御機構なりが有って当たり前、なんてのは誰にだって考えるまでも無くわかりきってるだろ?」


「……………あ、ああ、うん。やっぱそう思うよね……。普通に考えたら、絶対ぜったい無理だよね……?」


「? だから、俺だってちゃんとそれはわかってたってば。ゆえにこそ、そこは『では何か別の意図があるのでは?』って深読みしてもらって、それで毒見でも何でも誰かしらに最初の一口さえ食ってもらえさえすれば、あとはなし崩しでみんな仲良く一緒にご飯と洒落込めるかなって。だって美味いし」


「……………………あー、うーん? …………うわぁ……、理屈の上では絶対全力で否定したいのに、ほんとにそうなってそうで怖い……。てゆーか、実際そうなってるし……。…………これはちょっと、新しい考え方の暗殺防止装置追加しないとマズいね……」


 ヒヤリハット事例への対応策に頭を悩ませてぶつぶつ呟いてる彼女には悪いけど、更なる防御を固めるのはどうか俺の一件で盛大に事故った後でお願いしたい。まあ、この少女がほんとに俺の想像通りの人物だっていうなら、既に大事故は起きた後かも知れんけどさ。


 顎に指をあててすっかり考え込みモードに入っちゃった少女を放置し、ていうか逆に俺が放置されて、手持無沙汰になっちゃったので無駄にお茶をお代わりしながらてきとーにその辺を見渡す。


 なんかもう、前もって準備してたやけっぱちみたいな作戦が殊の外成功を収めちゃったし、おまけに伝えるつもりのなかった作戦内容もまるっと暴露しちゃってスッキリしちゃったので、もう今日の山場は完全に超えたような気分だ。

 この少女がこうしてここにいる以上、きっとまだ急ぐ必要はないどころか今日のおでかけの必要性さえ無くなったのかもしれないが、そうなると今日という休日をどう過ごしたものか――。


「…………ん? ……おー、あれに見えるはアリアちゃん」


「……んー? アルアリア? ……あ、ほんとだ」


 ちょっと前まで俺が突っ立ってた例の門柱。そこに心細げに手を当てて身を預け、しきりに辺りをきょろきょろと見回しているのは、いつもの如く防壁みたいなローブ&フードで完全武装済みの人見知り娘アリアちゃん。


 思わず声を漏らした俺につられて、俺のお隣に座ってる少女はおろか、アリアちゃんまでもがこっちを見て声を上げる。


「…………あ、ぜのせんぱいっ……!!!」


 まだ実際に声は聞こえない距離だけど、アリアちゃんの可愛い唇をガン見していた俺は、彼女が確かに俺を愛称で呼ぶのをしかと読み取った。しかもあろうことか、俺の眼に映る彼女はなんと『ぱああぁぁぁぁぁ……!!!』と発光せんばかりに輝く笑顔を浮かべているではないか。

 俺の見間違いでなければ、そんな彼女の反応は、この間食堂でみーちゃんを迎えた時よりもめちゃめちゃ嬉しそう。


 あまりの喜びように思わず俺も『うへへ……』とだらしない笑顔を返しそうになったけど、柵伝いにこっちへちょこちょこ歩いて来るアリアちゃんのお足元、黙々と侍るみーちゃんがなんだかご主人様とは真逆のめちゃめちゃお疲れな表情を浮かべているのが気になってちょっと笑いが引っ込んじゃった。


 何があったんだろ……と思ってみーちゃんを見てたら、みーちゃんは一瞬目が合ったものの――更なる疲労にどっと押し潰されたように肩を落として顔を逸らすのみであった。

 なんだよその意味深な反応。俺が使者少女にくびり殺されてなかったことがそんなに御不満なのですか? いやそんなわけねぇけど。逆に、俺が殺されるかもと心配してたのに、二人仲良く並んで座ってるものだから呆れてるとかの可能性はあるな。


 ま、それはすっかり間近に歩いてきてくれたご本人様に聞けばいいか。


「よっ、みーちゃん。さっきぶり。元気してた?」


「なぁーお。……みぃうぅぅぅぅ?(まあまあよ。……あんたの方は、おげんきそーでなによりねぇぇぇぇ?)」


 ……あれ、俺、もしかして今なんかめっちゃなじられてる……? こんなに恨みがましい目で見られなきゃいけないようなこと、俺なんかしたっけ?


 また自分の気付かないうちに失礼なり無礼なりを働いてたのかとキョドる俺を他所に、頭から足まですっぽりローブかぶってる二人の少女が『再会』を喜び合う。


「やあ、アルアリア。久しぶりぃ。あなたも、ちゃぁんと元気してたかなぁぁぁぁ? 私ぃ、あなたが全っ然『実家』に顔出してくれないものだから、とってもとっても寂しかったんだよぉぉぉぉぉ~??」


「え、えっ、だ、だ、だだ、誰、です、か……?」


「あァん!!!? …………っ、あ、え、えーっと、それは、そのぉ……、…………え、えへへぇ?」


 何故かみーちゃんばりにアリアちゃんをなじりにかかってた使者少女だけど、認識阻害オンにしてるせいで正体をわかってもらえずおもっくそビビられ、そして愛想笑いを浮かべながら俺の顔色を伺ってくる。


 俺は極々自然な風を装って少女達から顔を逸らし、俺に対して何やら思う所のあるらしいお猫様を「よっこいしょー」と抱き上げて、嫌がる彼女を無理矢理もふもふこしょこしょしてごきげん取りに没頭。


 そんな俺を見て、ほっとしたんだか不満なんだかよくわからん溜め息を吐いた使者少女は、アリアちゃんに向き直って「これでどーお?」とフードをあっさり下ろした。


「あっ、エスタお姉ちゃん……」


「そーよ、麗しのエスタお姉様よ。随分と久しぶりよねぇ、呼び出しブッチ常習犯の〈深淵の魔女〉さん? 初呼び出しの少年がもう何時間も前から健気に待っててくれたのに比べて、あなたは随分と遅いご出勤なのねぇ~?」


「…………え、え、でっ、でも、まだ集合、時間、まえ、だし……。それに、こっちから、行くって、おはなしで、お姉ちゃんが勝手にこっち来ただけ――」


「うふふ」


「………………ごめんなさいでしたぁ……!!!」


 どしゃあぁぁ、と崩れ落ちるような全力過ぎる土下座を敢行するアリアちゃんを、背筋の凍るような甘ったるい笑い声を零しつつ見下ろす――エスタお姉ちゃん。


 みーちゃんをうぎゃうぎゃ嫌がらせつつ横目に少女達を伺っていた俺は、ちょっと何から反応していいのか、そもそもそっちの会話に混じっていいのかもわからず、使者少女改めエスタお姉ちゃんのようやく明らかとなったご尊顔をまともに拝謁することもできない。


 てか、横目にちらっと見ただけでもエスタお姉ちゃんがとんでもない美少女すぎることが確定してしまったので、心臓がどっきんこしちゃって絶対にそっちを見れなかった。


 俺、こんなかわいい娘とさっきまでサシでお鍋食ってたんか……。いや、認識阻害されてる段階から既に『かわいい』という印象だけは伝わってきてたけど、ちょっとこれは流石に想像の遥か上すぎてなんかもう言葉が出てこない。


 ――だから、不要な言葉はそっと飲み込んで、心の日記にただ静かに『今日はとっても可愛い女の子とお鍋をつついてらぶらぶデートしちゃいました♡』と太字で書き込んでおきました。

 え、デートじゃない? いいんだよ、男と女が半径一メートル圏内でお互いに言葉を交わしたらもうそれだけでデートなんだよ!! おまけに同じ鍋の料理までつついて長時間ダベってたんだから、もうこれはセックスと言っても過言ではないね!!!


「………はぁ。もういいよ。おかげで、しょーねんとたっぷり話す時間も取れたしね。ねっ、しょーねん?」


「…………俺、そっち向いていいの? その、えっと――――、『エスタ』、ちゃん?」


「………………………………………………」


 何やらしばし硬直したエスタは、その後突然ふるふるとわななき始め、かと思ったらフイっと全力でそっぽを向いて両手でがばっとフードを被り直してしまった。


 そのまま内腿を擦り合わせて何やら身悶えているらしいエスタを見て、土下座から面を上げた上体のアリアちゃんがぽそりと呟いた。


「…………おねえちゃん、顔、真っ赤……」


「……………………赤くねーし」


 真っ赤らしい。やっぱ、お忍びで近づいたはずがうっかりとかボロが多すぎて正体露見しかけてるこの状況、臨時とはいえ大組織のトップ張ってる人間としてはあまり赤っ恥すぎてどうにも堪らんのでしょうな……。


 でも俺はデキるおのこなので、当然彼女のうっかりミスになど気付きはしないので安心してくれ。闇深き陰の者でもある俺は、間違いを正す愛よりも共に墜ちていく偏愛を選ぶ派である。


 ともあれ、これでようやく本日の役者は揃った。――んだけど、ちょっと今更な疑問がひとつある。


「なあ、エスタ」


「エスタじゃありませんけど!!? 私っ、エルエスタですからね!! エスタとかそんないきなり馴れ馴れしく呼ばないでくださいっ!!!」


「………………………。あ、ああ、じゃあ、えっと、良くあるありふれたお名前で、偶然とある組織のトップと同じお名前の、エルエスタさん?」


「よくないよ!! 私今まで生きて来た中でエルエスタなんてかわいい名前の女の子私しか――んんっ!!? あー、あーあーあーあー、そう、そうですね、えるえすたって、とっても、よくある、とってもかわいいおなまえだとおもいました……」


 何気にちょいちょい自画自賛激しいよな、この子……。いや、でも少なくともかわいいという一点においてははっきり言って反論の言葉がどこひっくり返しても出て来ないので、まあ仕方ないからスルーしてやろう。

 俺は基本、可愛い女の子には激甘である。だってかわいいんだもん。


「じゃあ、とってもとってもかわいい、エルエスタちゃん」


「ねえ、そこでかわいいって言う必要有った? 私がとってもとってもかわいいのは事実だけど、他の人に言われると自意識過剰な女みたいでちょっとアレというか、まあとってもとってもとってもかわいいのは事実」


「ねえアリアちゃんあんどみーちゃん、もうこの自意識過剰なねーちゃんほっといてデート行こうぜ」


「もっとちゃんと私を構ってよ!!?」


 なんかめんどくさい女みたいなこと言い出して縋りついてこようとするエルエスタをさらっとスルー――できずにみーちゃんを「みやぁっ!?」と掲げてお猫様ガードを展開しながら、目を白黒させてるアリアちゃんにお誘いをかけてみる。


 正座して地に手を突いたまま、慌ただしい面々の顔をきょろきょろきょろきょろ見回し、呆然と何事かを呟くアリアちゃん。


「……ぜのせんぱい……、ぷらす、ひとまえ……いこーる……」


「あ、ああ、人前でちょっと騒ぎ過ぎたか……?」


「――ぜのせんぱいに、『ちゅー』しなくっちゃ!!!!」


「うん、キミのぽんこつな脳味噌はいつも俺の想像の遥か彼方をブッ飛んでいく式と回答を弾き出すよね。一応聞くけど、何がどうしてそうなった? 胸に手を当てて思い返すというか思い直してみましょうね」


「だって、ひとまえだよ? ぜのせんぱいが、いるんだよ?? じゃあ、ちゅーするしかないじゃん!! あぶないおくすりをキメて、ぜのせんぱいとのちゅーを世界に見せつけなくっちゃ!!!!」


「思い直すどころか意味わからん方向にグレードアップしてんじゃねえよ!?!?」


 震える脚でぷるぷると立ち上がったと思ったら、懐から謎の試験管を取り出してこぽこぽ言わせながらはぁはぁ荒い息でにじり寄ってくるアリアちゃん、完全に眼がイっていらっしゃる。


 思わず俺のみならずみーちゃんやエルエスタまで「ひぃ」と引きつった悲鳴を漏らすけど、みーちゃんからの必死のアイコンタクトを受けた俺から更に半泣きのアイコンタクトを受けたエルエスタお姉様が、一瞬『この野郎……』みたいに俄かに憎悪を滲ませながらも、こほんと咳払いをして場を取り成してくれた。


「ま、まー、あれだね! ちゅーの話はおいといて、さすがにそろそろ場所移そっか? 流石に人の目が厳しくなってきたし――」


「だったら、もっと激しくちゅーしなくっちゃ!!!!」


「うっさいわ!!!! そんなにしたきゃヤればいいでしょ!!!!!」


 とうとうキレたエルエスタが、俺の腕から一瞬でみーちゃんを奪うと、そのまま熱烈にちゅーを切望しているアリアちゃんに向かって突き出して『ぶちゅっ♡』とマウス・トゥ・マウスさせた。


『―――――――――――――』


 お口とお口でちゅっちゅしたまま、仲良く言葉を失って見つめ合う主従。


 遠巻きに見ていた通行や間近で見守っていた俺が目ん玉をひん剥く中、心底晴れやかな笑顔となったエルエスタはみーちゃんを掲げ持ったままで俺にくるりと振り返る。


「それじゃあ、まだ時間には早いけど、ぼちぼち行こっか?」


「………………あの、もし俺がここでちゅーしたいって騒いだら、俺もキミ達三人の中の誰かと強制ぶっちゅっちゅさせてもらえたりいえなんでもないです」


 俄かに力づくで地面にキスさせられそうなオーラをメラっと燃やし始めたお姉ちゃんに恐れを成し、俺は神速で目と話を逸らしにかかった。


「あ、そ、そだ! 今更だけど、俺達ってまだ出頭の必要あるの? なんか話はさっき粗方終わった気がするんだけど……。あ、そういやアリアちゃんの方は結局なんで呼び出しなんだ?」


「……………………。はぁ」


 ものすんごく何か言いたげだったエルエスタは、しかし煮えたぎる文句と熱を溜め息と共に吐き出し、疲れ切った様子で言葉を垂れ流した。


「……アルアリアは、まあついでよ。この子、書類も仕事もお母さん経由でしかやり取りしない根っからのひきこもりだから、本人にしか対応できない類のあれやこれやが溜まりに溜まってんのよね。だから、良い機会だしまとめて片付けさせようかなと」


「ぴゅぇ」


 みーちゃんとキスしっぱなしでちょっと嬉しそうな笑みになりかけてたアリアちゃんが、エルエスタにじろりと睨まれて悲壮な悲鳴を上げる。

 ところでキミらいつまで接吻してんの? みーちゃんも何気に満更でもない感じで『しょーがない子ねぇ』みたいに微笑んでるし、この主従あまりに仲良さ過ぎて、うっかり百合の間に挟まれなかった俺はとっても疎外感です……。


「……じゃあ、今度は逆に俺の方がアリアちゃんのついでにお呼び出し、って感じになるのか? こき使われてくださいなとか言ってたから、俺もなんか契約書類とか書かされたり……」


 俺についての話は既に終わっちゃってるからもう用済みだとは思うけど、寂しさのあまりにしれっと便乗しようと画策する策士俺。かわいい女の子達と一緒にランデブーするためならば、藪を突いて余計な仕事と責任を負わされることも辞さない所存。


 そんな感じで百合に割り込むモブ男子のようなムーブをしていた俺だけど、どうやらそんなことをするまでもなく、俺は未だ事の渦中にいたらしい。




「ついでじゃなくて、本題はあくまでもまだあなたのままだよ。――あと一応言っておくけど、あなたはまだ生き残れるかどうかもまだわからないっていうか、たぶん普通に死ぬと思う」

 



 ごく当たり前のことを言うかのようにそんな死亡宣告を突き付けてくる素面のエルエスタに、俺は意味も無く笑顔を返しながら『おやぁ……?』と俄かにお尻に冷や汗をかき始めていた。

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