③
『田中連続殺人事件』に新たな被害者が出てしまった。
ピエロ・カルデナス・田中(50)。
なんとラテン系人民である。
スペイン料理店店主。
またも『田中』以外関連性はない。
「これはまさか……『田中狩り』?!」
あれ?どっかで聞いたことあるようなネタじゃねぇのかコレ……ヤバイヤバイ。色々ヤバイヤバイ。
コレは犯人を早々に見つけねばヤバい。
リアルなんちゃらっぽさが増す前に!!
怪しい人物が多すぎてどうにもならんと思った俺は、思い切って崖へと向かうことにした。
勿論海の見える崖である。
崖──それは犯人がいきなり告白をし出す場所。
石動を筆頭に、部下が集めた情報に則して怪しい人物を片っ端から崖へと呼び出す。
マイクロバスで皆で向かった為、若干の遠足気分が否めない。
神無月探偵もしっかり乗り込んでいる。
自分が出した指示だが、もう滅茶苦茶だ。つーかよくこんな指示が通ったよね?!
「刑事さん……こんなところまで連れて来て、どういうおつもり?」
そう瑠璃香嬢が言うと、ピエロの妹であるアイナさんが「ソーヨ!ソーヨ!!」とカタコトで賛同する。
アイナさんはソバージュヘアーに、リアルな虎の絵の描かれた激しい色遣いのBIGTシャツに、豹柄のスパッツのアラフォー……
その口調ヤメレ。最早俺には板〇の嫁にしか見えない。
「轟刑事……こういうことですよね?」
神無月が眼鏡をクイッと上げながら、俺の代わりにあの台詞を言おうとする。
だが、そうはさせん。
「ああ……『犯人は、この中にいます』!!」
──ザワッ!!
空気が揺れる。
俺、神無月、石動、あと部下二名と所轄の警察官を除いた6名──
この中に犯人はいる筈だ!
…………たぶん!!
神無月の活躍に期待!!(人任せ)
「神無月……まずはお前の見立てから聞かせてもらおうか……」
と、勿体ぶった感じで神無月に振る。
「手柄はくれてやる」とばかりの余裕が大切である。
──名推理 期待してるぜ 神無月!
脳内で七五調に再生する。特に意味は無いが、『轟・心の一句』である。言うまでもなくこの場合の『神無月』は、季語ではなく固有名詞だ。
「フッ……任せていただきましょうか」
そう言うと、神無月はいつもの眼鏡上げを行いながら、皆に背を向ける。ゆっくりと崖の方へと少しだけ歩を進めた後で、華麗にターンしポーズを決めた。
「一連の殺人事件の共通点……それは被害者が男性であり、イケメンであり、女にモテる『田中』であるということです!!」
──ドォオォォォンッ!!
……っていう効果音が鳴りそうなくらいにキメッキメのジョ〇ョ立ちで、神無月は大分しょーもないことを言った。
だが、皆は例の如く『ザワッ』って感じになっちゃっている。なのでとりあえず様子を見ることにする俺。
そこに石動の謎の後押し。
「第三の被害者である、ピエロ氏の妹……あなた、妹じゃありませんよね?」
「チッ……チガウワ!」
あ、そこは「ソーヨ、ソーヨ」じゃないんだ……
「そう、彼女はピエロ氏の愛人! 羨ま……ゲフンゲフン……いや、男の風上にも置けぬ!!」
「いま羨ましいって言いかけただろ」
成り行きを見守りながら俺は思った。
神無月は単純に『複数女を囲っていることが羨ましい』のか、それとも熟女好きか外人好きか、その両方か、はたまた全部なのか?……と。
つづけ!
次回、クライマックス!(多分)