②
現場には特に何も無く、そうこうしているうちに『田中殺人事件』に第二の被害者が出た。
ガイシャは田中 晴一(45)。
またも死因は頭部損傷によるショック死である。
これは『田中連続殺人事件』に違いない──そういうていで捜査本部が作られた。
だがちょっと待て。
共通点は『田中』と『頭部損傷によるショック死』だけなんだけど……
晴一さんは、商店街で豆腐屋を営んでいる田中さんである。……関係なくない?!
(2時間ドラマ転生恐るべし……)
大体、『頭部損傷によるショック死』なんて、事故と事件の両面から調べない?普通。
なんで事件性を大きくしてるんだ。
この世界の警察は大丈夫か?
御曹司田中には複数女がいたうえ、婚約破棄だけでなく、ホワイトナイトのフリをした企業買収も行っており……彼を怨む人間は多い。
だが豆腐屋田中は気のいいオッサンで有名。
離婚歴はあるが、離婚相手は既に他の男と再婚して幸せな生活を送っている。
(これ、『繋げないといけないフラグ』かなんかなのかなぁ……)
繋がりが全く解せないので、適当に部下に指示を出して豆腐屋田中の身辺を洗うことにする。
「つーかこの時点で明確な繋がりがないのに、なんで連続殺人事件になってんの?」
捜査本部の人員がはけた後でひとりごちると、後ろから不敵な声──
「フッ……轟刑事はふたつの事件が別件である、という見立てでいらっしゃるようだ」
「いや当然だろ?……つーか誰?」
「私をご存知ないようだ。 ではこの事件で覚えて貰いましょう。 私は神無月 團! 探偵だ!!」
「民間人キタ──!!」
出た出た!!
2時間ドラマ七不思議のひとつ、民間人が勝手に警察内に入り込む件!
「誰かコイツをつまみ出せー!!」
「フッ……ご自分の見立てに自信がないと見える」
「いやいや、当然の処置だからね?!」
「轟刑事……ここは勝負といきましょう」
「話を聞く気ないよね?!」
「そう、推理勝負です!!(ドヤァ)」
「勝手に決められている!!」
自称名探偵・神無月 團は銀縁眼鏡を光らせながら、これでもか!という程のドヤ顔で、俺に推理勝負を持ちかけて去って行った。
警察、セキュリティどうなってんだよ。
つづく。
CMのうちに、トイレに行っておこうぜ!