1話→オフィスワークデビュー
私の名前は神山 理絵20歳でまだ独身だ。
私の人生はいつも誰よりも充実していた。
やりたい仕事が見つかるまでアルバイトで働いていた私も、出会う先でいつも良い上司や仲間に恵まれ、仕事や家事に常に熱心な私を恋心抱く男性は少なくはなかった。
さらに理絵には付き合っている彼もいた。
いつも笑顔で気を使える優しい彼に周りにも自慢出来る程のことだった。
でも、そんな私でも本当の恋愛とは何か思い知らされる日が突然くるだなんて今の私には分からなかった。
今年の春に転職をした理絵は、とあるオフィスワークのコールセンターに勤めることにした。
18歳で高校を卒業して、今まではスーパーの店内スタッフやアパレル会社での接客業などをしてきた私にとってパソコンを使う仕事は初めての経験だった。
派遣のお仕事で安定はしないけど、時給も高くてネイルが大丈夫、そして採用試験も受けなくても良い、ましてや男女合わせて100人近い人数が働いている大手企業だという条件に気を引かれ入社をした。
先方先「では来週の月曜日からよろしくお願いしますね。」
神山理絵「はい、こちらこそよろしくお願い致します。」
派遣元「それじゃ神山さん来週からお仕事の方頑張ってください。何かあれば僕に相談していただければすぐに対応しますので。」
神山理絵「ありがとうございます!!」
その日は会社の仕事内容についてお話を聞いて家に帰ることとなった理絵。
自宅に着いた理絵は
理絵「お母さん仕事受かったよ!!」
母「あんた採用試験も受けてなくて派遣元の人が居てくれたんだから受かって当然でしょ。」
理絵「いや、そうだけど少しくらい喜んでくれてもいいじゃん!!」
母「せっかく決まったんだから、しっかりと働いてきなさいよ!!」
理絵「分かってるし!あ、そうだ。彼にも電話をしないと!」
母は彼女の仕事が決まったことに内心喜んでいた。
彼女もなぜか初めての経験をする仕事に喜びが隠せない状態で付き合っている彼にも電話で報告をした。
理絵「あ、もしもし康ちゃん?」
彼「もしも-し理絵ちゃん?」
彼の名前は佐藤 康介
20歳。男性。
理絵と同じ高校で出会い1年生の頃に両思いとなり交際が始まったのだ。
理絵「康ちゃん聞いて!!やっと仕事決まった!!派遣なんだけど採用してもらえて、月曜日からよろしくだって!!」
彼「お-!おめでとう!!理絵ちゃん!!今度お祝いしないとね!」
理絵「いいよそれは…!受かったって言っても派遣で採用試験とか受けて合格したとかじゃないからさ…!」
彼「そう?ほんなら今度デートでご飯くらいはご馳走させてよ!!」
理絵「うん…!分かった。ありがとうね康ちゃん…!!」
その後理絵は、来週の月曜日まで今働いているアルバイトを頑張りそして…。
迎えた月曜日(仕事当日)の朝。
目覚ましの音に跳び跳ねた理絵。
理絵「やばい!!遅れる!!」
母「何やってんのよ、あんたは。」
理絵「なんで起こしてくれなかったんよ!!」
母「あたしはちゃんと起こしたのにお腹空いたとか寝言ばっかりだったのはあんたでしょ!!」
今まで遅刻をしたことがない理絵。
仕事が決まっていたことに浮かれて緊張感が薄くなってしまっていたのだ。
初出勤の私が早々に遅刻してしまうのはまずい。
すぐに着替えを済ませ準備を始めた理絵。
理絵「お母さん行ってきま-す!!」
母「は-い気を付けてよ!!」
初出勤を玄関の外で見送る母。
そして急いで走り会社へと向かった理絵。
理絵「はぁはぁ。着いた。5分前。セーフ。」
理絵はギリギリ息を切らせてでも間に合った。
理絵「おはようございます!今日から働くことになった神山理絵です!よろしくお願いします!」
先方先「お、おはよう。随分と疲れてるようだけど大丈夫?」
理絵「はぁはぁ。大丈夫です!ちょっと走ってただけなので(はぁはぁ。)」
先方先「良かった良かった。あ、そうだ。自己紹介がまだだったね。この会社のクライアントで山崎 豪と申します。」
理絵「あ、よろしくお願い致します!!一生懸命働きます!!」
彼の名前は山崎 豪
42歳。男性。
大手企業のクライアントで要は依頼人だ。
山崎「それじゃ、皆が活動してるオフィスまで案内するよ。こっちきて。」
理絵は「良い上司じゃん!絶対頑張れるじゃん私!!良い男もゲッツ!!」
と心の中でガッツポーズをした。
山崎「あれ?神山さ-ん!」
理絵「あ…!すみません…!」
理絵はビルの高層階や端に渡る廊下に興奮が隠せなかった。
山崎「はい、じゃあここが今日から神山さんが働く部屋になります。」
理絵は驚いた。
理絵「え?想像以上に女の子ばっかりじゃん」
と小声で呟いた。
山崎「コールセンターだからね。男性というよりは女性が好む職業でもあるんだよ。」
理絵「ゲッ…聞こえてたんかい…。そうなんですね…。知らなかったです…。」
そうこの日から私はとんでもない日常を送ることになるとは今では想像も付かなかったのだ。
2話へ続く…
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