繋がる糸の思うままに。
2学期初めから虐められるとか…。一体僕は何をしたんだ…。
僕はクラスメイトの気に触る様なことは何もしなかったはずだ。それとも陰キャだからなのか?…うん、そうに違いない。でもそうだと思わないと、やっていけないと思った。そのうちみんな飽きるだろう。
そんな考えは甘かった。
いじめなんてそう簡単に終わるはずがなかった。机の落書き、クラスメイト達からの陰口を言われるという小さないじめは終わるどころか日に日に増してくばかり。
まるでアニメやドラマにありそうなものに変わっていった。
「てめぇみたいな奴がいるからクラスのみんなが楽しく過ごせないんだろうが!!」
「さっさと死ねや!」
「お前なんて生きてたところで価値なんてないんだよ!」
山田、坂口、安藤の3人が僕の腹を蹴った。
主犯はこいつらだ。こいつらは消して腕や顔は蹴ったり殴ったりしてこない。怪我なんてしてたらすぐにバレてしまうからだ。
「ゔっ…」
3人は今日は化学の原田先生に叱られたからか機嫌が悪かった。それだからかいつもの倍以上殴られたし、蹴られた。胃液が喉まで上がってきた。
…苦しい。痛い。辛い。
でも誰も助けてくれなかった。
春樹以外は。
「おい!」
春樹の声がした。助けに来てくれたんだ…。
「お前ら何やってるんだ!!」
春樹が1、2発殴りかかると3人は唾が悪そうに逃げていった。
「蒼!大丈夫か!?」
「…うん。なんとか」
「…ったく、アイツややってる事がガキなんだよ!先生に言ったほうが…。いや、警察の方がいいか?」
け、警察!?こんな事が大事になったら…あの3人は職につく事だってできなくなるだろう。
「いや、いいよ。本当大丈夫だから」
別にあいつらのためというよりあいつらの家族のためにだ。家族までが不幸になって欲しいわけではないから。
「….。そこまでいうなら」
春樹も納得…はしてないだろうけど、大事にはしないでくれそうだ。
「茜は?」
最近、茜の様子がおかしい。側から見たら普通なんだろうけど、なんていうんだろう…元気がないっていうか、空元気っていうか。
「…でも茜って蒼がいじめられてらのに助けようとしないよな」
普通はそうだろう。誰だって自分の身を削ってまで誰かを助けようとなんてしない。自分がいじめられないための正しい判断だと思う。
「誰だって標的になりたくないだろ?ならいいんだよ、これで」
春樹は何か言いたげだったが、次の授業のチャイムが鳴ったので何も見なかったことにして家庭科室に向かった。
家庭科室では女子達が先に調理器具の準備をしていた。確か今日作るのはカレーだったはず。
「ちょっと2人とも遅いよ!」
茜は鍋を運んでいたのか、鍋を持ちつつこちらに向かってきた。
「…まさか、またいじめられてた?」
気まずそうに茜が言った。
「まあ、大した事じゃないから大丈夫だよ」
「そっか…。話ならいつでも聞くからね」
そう言ってもらえて僕は嬉しかった。
「今日のカレー何入れる?」
春樹がキラキラした目でこちらを見てきた。春樹はカレーが好物なので早く作って食べたいのだろう。
「俺の家だとひき肉使うけど」
「私も!」
「僕も」
「なんだー。ならひき肉でいい?」
「人参とじゃがいもとナスいれる?」
「なんでナス?」
「…え、入れないの?」
「俺の家入れない」
「僕も」
という事でナスの入っていないカレーができました。
皆でカレーを食べてたら授業も終わり、放課後になった。部活に入ってない僕たち3人はカフェにケーキを食べに行った。チョコケーキを見て目をキラキラさせている茜が可愛く見えた。
「…あと少しで落ちるはず」
そう言えば教室でそんな事呟いてる奴がいたけど、あれは誰だったのだろう。