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11年前の春、君に出会いました。

今日から高校2年生。

初日が僕にとって1番辛い。目立つ事、注目されるのが苦手な僕は自己紹介が嫌いだ。なんでこんな事やらなきゃならないんだ…。できる事なら休みたいが、休んだら休んだで目立ってしまうのではないか。不幸中の幸いなのが友達の少ない僕の唯一の親友、佐藤春樹が同じクラスという事だ。性格は僕と違って人懐っこくフレンドリーだ。だから春樹には友人が僕の何倍もいる。すごいと思う。僕にはどう足掻いても無理だ。

「自己紹介なんて作ったやつ誰だよ…。」

小さく吐いた言葉は誰の耳に届く事などなかった。


もう学校についてしまった。どうしよう、自己紹介考えてたら1時間かかる登校が終わってしまっただなんて。何言うかなんて全然思い浮かばなかった。まぁ、本を読むのが趣味ですとでも言っておこう。別に嘘ではない。本は好きだ。本は人と関わらなくても誰かに出会えるから。ワイワイしてる人たちに絡むとろくな事がないし。

自分の席に着くと先に来てた春樹が僕の席に来た。

「はよ!蒼!また同じクラスだぜ、俺たち。やったな!」

「ほんとよかったよ…。こんな小さな箱の中に1人とか息できないわ」

「相変わらずだな、蒼は」

そういえば後ろの先って誰だったっけ。春樹の名前と自分の名前しか見てなかったから他に誰が同じクラスでいるのかなんて全然わからない。

「春樹」

「ん?どした」

「僕の後ろって誰?」

すると春樹が驚いた表情をした。え、何かまずいことでも言ったかな。

「お前…、後ろは西山さんだよ。西山茜」

西山茜?西山…にし…。え。

「…あの西山茜?」

「他に誰がいるんだよ…。西山茜なんてこの学校に1人しかいないだろーが。バーカ」

西山茜。この学校で1番の人気を誇る。知らない人なんて誰もいないほどだ。噂によると西山茜は明るくて彼女1人いるだけでその場の雰囲気がガラッと変わるらしい。明るくフレンドリーで勉強ができる彼女は男女問わずの憧れらしい。まぁそんなの関わりのない僕には無縁の話だ。それに、こんな僕が関わっていいほどの人ではないことは確実だ。気づかれる事なく席替えまで待ってほしいところだが、席が前後というハンディキャップを抱えているのでこれは無理ゲーに等しい。いや、無理ゲーに違いない。よりによってか…。

チャイムが鳴って担任が来た事によってガヤガヤしていたクラスが静かになった。


「ホームルーム始まるぞー。…新井、号令」

…始まった。自己紹介が。早く終わってくれよ…。

目立つのは嫌いだ。「なにこいつイキってんの?ちょーうけるんですけど笑」なんて言われて笑われたら次の日学校なんて行けない。


「中村蒼です。…読書が趣味です。よろしくお願いします」

はぁ、やっと終わった。たった一言なのにこんなに心臓が口から出そうになることなんてあるのか。これで安心だ。


33名の自己紹介が終わって休み時間が来た。

「ねぇ、君も本読むの好きなの?」


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