君の様になりたかったのは自分だけではなかった。
「あと1年と4ヶ月と5日で世界が終わる」
今日はこの話題がテレビや新聞、ネットの記事で持ち切りだった。生憎今日は4月1日ではなく、エイプリルフールではない。政府は頭が狂ってしまったのだろうか。こんな胡散臭い話誰が信じると言うのか。
ただおかしな事に日本だけにこの話が広まっているのではないらしい。本日1月29日の日本時間午後1時27分13秒、アメリカも中国もロシアも全ての国の各国の偉い人が同時に発表したのだ。何故今日この時間に発表したのかわからないが、地球に住んでいる全員に伝えられたのだから、100%嘘というわけでもないのだろう。
実を言うと僕、中村蒼は世界が終わると言う話を信じている。今まで約15くらいあった地球滅亡の話は全て信じて来た。…全てデマだったのだが。
まあ世界が終わると言う話は信じるとして、一つ不可解な事がある。
世界が終わる理由が、根拠がないのだ。
「世界が終わる」と言う発表だったので地球がなくなるとかそう言うのではないのだろう。なら何故だ?聞くところによると隕石が落ちてくるわけでも、未知のウイルスが蔓延するわけでも地球温暖化でも大規模災害でもないらしい。
何故終わるのかわからないのにあと1年4ヶ月と5日で終わるだなんて信じる人間が僕以外にいるのだろうか。窓から街の様子を見てみるが誰もそんな話を信じて混乱を招く人なんて1人もいない。ある者は夕食の材料を買いに。ある者は友人と遊びに。ある者は恋人とデートに。信じているとするならば今頃暴動が起きているだろう。その様子が見られないのは皆信じていないからなのではないか。
世界が終わる事を信じてる僕は今から終活を始めようと思っている。終活といっても墓の用意とか葬式のための金の準備などではない。終わってしまえば埋める者もいないだろうし。…いかん、話の路線がずれてしまったね。僕は未練を作らないために最後にやりたかった事をやろうと思う。やりたかった事、それは小説を書く事。それだけだ。世界が終わるまでに書き終えるかなんてわからないし、書き終えたところで終わってしまうので意味はないがそれでも書こうと思う。
日記の様な書き始めになってしまったが、今から話すことは11年前、僕が高校生だった頃の話。なにも考えずに生きていた時代なので記憶があやふやなところも多いが、忘れもしない出来事があった。友人に話したところ「そんなホラ話に付き合ってる暇はない」と軽くあしらわれてしまった。だが、これから話す事は僕が見てきた事実だ。平凡な人生を送っていたなに一つとして取り柄のない僕が変わった話。