「もう一度だけ…約束を…」第八話
琉斗「はぁ……疲れた……」
黄葉「無駄な体力使うから……」
琉斗「う、うるせぇ……」
黄葉「で、何処に行くの?」
琉斗「それは、秘密だよ。」
黄葉「そこは、教えてよ。」
琉斗「あと少しで着くから」
黄葉「いやかれこれ乗り換えして5時間も経ってるよ?」
琉斗「もうすぐだって」
そう俺が言ってるうちに目的の駅に着いた。
黄葉「ってあれ?ここって……田舎……?」
琉斗「そう、昔俺達が住んでいた…懐かしの田舎だ。」
黄葉「ホント懐かしいね!久しぶりに此処に来れて…嬉しい。」
琉斗「そりゃぁ良かったな。」
黄葉「うん!」
琉斗「さて、探すか。」
黄葉「なにを?」
琉斗「石をだよ。」
黄葉「え?それは裕翔が持ってるんじゃないの?」
琉斗「そうだったな…」
黄葉「大丈夫?」
琉斗「でもあれは…鍵が無きゃ使えないんだろ?」
黄葉「うん、そうだね。」
琉斗「その鍵とかまだ見つかってないんだよな?」
黄葉「なに…言ってるの?」
琉斗「え?」
黄葉「もしかして、元から知らなかった……?」
琉斗「え?なにがだよ……」
黄葉「鍵は琉斗だよ?」
琉斗「はぁ!?俺が鍵ならどうするんだよ!?」
黄葉「鍵は人間、鍵というのは生け贄みたいなもの。
鍵の心臓に石を突き刺すんだよ。」
琉斗「いやいや!そうだとして、その時点で俺死んでんじゃん!消される前提に突き刺されて死んでんじゃん!」
黄葉「死なないよ?」
琉斗「いや心臓に突き刺されたら死ぬから!?」
黄葉「言ったでしょ?生け贄だって、そんでね?刺してお願い事を言うの、裕翔の場合「琉斗と言う存在を消して下さい」ってね。そしたら、鍵ごと消せるでしょ?」
琉斗「えぇ……まじかよ……ある意味怖いよ。」
黄葉「つまり僕が琉斗を守らなきゃいけないということか!」
琉斗「いや俺が守るし」
黄葉「いやいや!その鍵の癖に何言ってるの?」
琉斗「それでも…」
黄葉「ダメだって!」
琉斗「守りたいんだ!」
黄葉「えっ……?」
俺は強く黄葉を抱き締めた。
もう一度…もう一度だけ……この約束を……
琉斗「大人になったら結婚しよう。」
黄葉「もうっ……言うセリフがそれ?だらし無いなぁ……」
琉斗「だらしなくたっていいさ、愛が積もってればそれでいいんだよ。」
黄葉「臭い台詞言って恥ずかしくないの?」
琉斗「恥ずかしくないよ、黄葉を愛してるから」
黄葉「っ……でも、今度はもっと沢山約束をしてよ。」
琉斗「いいよ。何度でも沢山…約束をしてやる。」
黄葉「その約束は全部守ってよ?」
琉斗「守るよ。」
黄葉「なら、良かった……でも、これから、どうするの?明日……学校あるよ?」
琉斗「勿論、駆け落ちなので行かない。」
黄葉「そっか……」
琉斗「でも、裕翔は俺達のいる場所は知ってるのかもな。」
黄葉「怖いな……」
琉斗「俺も正直いったら怖いさ、でも…二人でなら…」
「乗り越えられる。」
俺達はこの田舎でまた約束を交わしたことを俺はもう忘れもしないし、昔の事も勿論忘れやしない。
どれぐらい月日が経っただろうか?
ざっと、一週間ぐらいだろうか?
この1週間どこで過ごしていたのかというと、昔お世話になった、とても優しい婆ちゃん家である。
婆「へぇ、そんな事があったんだねぇ…しかもあの裕翔がね…」
琉斗「え?婆ちゃん裕翔を知ってるのか?」
婆「知ってるも何も琉斗との執事だった奴じゃよ?覚えておらんのか?」
琉斗「え?執事?んなのいなかったような……」
婆「琉斗は執事さえも友達のように接してたからあまり記憶に無いのかもしれんな…」
琉斗「黄葉は知ってるのか?裕翔が俺の執事だってこと」
黄葉「え?知らなかったよ?ってか、執事がいること自体知らなかったし」
琉斗「まじかよ……」
婆「で、いつ街に帰るのじゃ?」
琉斗「…婆ちゃん…それは、分からないけど…婆ちゃんは知ってるだろ?石のこと…」
婆「知っておるよ。」
琉斗「その鍵が俺だってことも知ってるだろ?」
婆「あぁ、知ってる知ってる。」
婆ちゃんが知ってる事を俺は確かめた上で鍵のことも裕翔が企んでる事も全て話した。
婆「なるほどな。」
琉斗「それで困ってるんだよ…」
黄葉「何か裕翔を止める方法はないのかな?」
婆「恐らくないだろうが…それはお主自身だ。」
琉斗「え?」
婆「お主らがどうあるべきか、どうしたいのか、本当の答えが見つからないまま、どうする状況かも分かっていないのなら何も出来んよ。ただ、何もせずここにいるのは良くない。」
黄葉「何でですか?」
婆「お主らがよく分かってるだろ?この先このままだと、後悔しか残らないじゃろ?」
琉斗「確かに…そうだよな。」
婆「きっと、琉斗ももうすぐこちらに向かってくるだろう…」
黄葉「そっか……」
琉斗「やっぱり、怖いな…」
婆「その怖さを乗り越えなければ幸せなんて尊いもんじゃよ。」
琉斗「分かってる。婆ちゃん決心がついたからここでお別れな、一週間ありがと!バイバイ!」
黄葉「有難う御座いました!」
婆「よく分からんが、元気な子達じゃな」
黄葉「決心が着いたって言ってたけど何処へ行くの?」
琉斗「裕翔の方だよ。」
黄葉「え?死にに行くの?」
琉斗「んな事言ってねぇ!」
黄葉「じゃぁ、何しに行くの?」
琉斗「止めに行くんだよ。」
黄葉「止めれなかったら?」
琉斗「意地でも止めるんだよ。」
黄葉「それでも止めれなかったら?」
琉斗「その時はその時で考える。」
黄葉「無計画なんだね。」
琉斗「お前もな!」
そう言って俺達は走り、森の方へと足を運ぶ。
黄葉「何でこんな所に来てるの?」
琉斗「この森の奥に居るはずだから」
黄葉「なんで分かるの?」
琉斗「勘かな?でも、この先に言ってはダメだと俺の直感が言ってる…」
黄葉「どうするの?後ろから来るかもよ?」
琉斗「怖い事言うなや」
裕翔「やぁ、どこ行ってたの?」
琉斗・黄葉「えっ?」
背後から裕翔の声が聞こえ、俺達はただそこで震えながら立っていることしか出来なかったのだった。