「狂った夢の世界」第十話
琉斗「はっ!って……え?俺は確か……もしかして……夢……?な、なんだ……夢だよな……石とか鍵とかんなの知らねぇし」
私はいつも通り起きて、家を出た。
すると、そこにはいつもと変わらない黄葉が立っていた。
黄葉「おはよう!」
琉斗「なんだお前か」
黄葉「失礼だなー!」
琉斗「え?お前に失礼とかあんの?」
黄葉「皆無だね!」
琉斗「無いのかよ……」
黄葉「ないよ!」
琉斗「ったく、お前は元気だなぁ……」
黄葉「元気だけが取り柄だからね!」
琉斗「先が思いやられるよ。」
黄葉「ねぇ、なんか雰囲気変わった?」
琉斗「え?」
黄葉「変わってないなら別にいいけどさ、いつもなら突っ込んで来るから」
琉斗「私はそんなことないと思うけどな」
黄葉「そう?」
琉斗「まぁ、変な夢見たってことだけかな?
それでちょっと頭がボッーとしてて」
黄葉「どんな夢なの?」
琉斗「えっとな……」
私は黄葉に夢のことを全て話した。
秘密にするようなことでもないし別に害はないし言っても損はないしな。
たかだか夢だ。
黄葉「なるほどねぇ、そりゃぁ、ボッーとするよね。」
琉斗「まぁな。」
黄葉「ってか、俺って…」
琉斗「なんだよ……夢なんだしそこには触れるなよ…」
黄葉「しかも、僕との恋愛って……」
琉斗「おいおい、そこも敢えて触れるなよ」
黄葉「笑えない夢だね!」
琉斗「そこは認めよう」
黄葉「そこは認めるのかよ!」
琉斗「何か悪いか?」
黄葉「いや別に?」
琉斗「まぁ、そろそろ、学校に着くぞ」
黄葉「話してると近く感じるねぇ」
琉斗「まぁな」
そうして私達は学校へと行き、いつも通りに下校をした。
そう…いつも通り…のはずだったんだ。
琉斗「やっと終わった終わった。」
黄葉「そう言えば、琉斗授業中に貧乏人揺すりしてたね?」
琉斗「覚えてないのでわかりません」
黄葉「こういう奴いるよねぇ、自分の都合の悪い時はこうやって誤魔化そうとする奴」
琉斗「うぐっ……そ、それ言うならお前もだろうが!」
黄葉「僕?僕は素直だよ?」
琉斗「嘘つけ!」
黄葉「ふふ、琉斗……」
琉斗「な、なんだよ」
黄葉「さようなら」
琉斗「え……?」
そう黄葉に告げられた瞬時に私は黄葉に背中を押され、鉄の音と鈍い音が聞こえたのだった。
琉斗「え……?う、嘘……だろ?」
私は暫くして後ろを振り返ると黄葉の体に数本の寸切が突き刺さっていたのだった。
琉斗「お、おい……も…黄葉っ…な、なんか言えよ……なぁ……?」
そう黄葉に駆け寄って黄葉に声をかけるが返事もなかった。
琉斗「なんなんだよ……私ばっかり…急すぎて何が何だか分かんねぇよ。」
そんな時に追い打ちをかけるように麗奈の言葉が頭に思い浮かぶ。
麗奈「非現実的な世界なんて誰が決めたの?
この世界には私を含め能力者が5人ほどいるのにね。」
琉斗「っ……やめてくれよ……私は普通の高校生だ…この世界は一体…?」
ふとその時に思ってしまった。
そもそも非現実的なことを出来ないとは誰が決めたのか?
ほんとに出来ないのか?
もし、私が能力者なら……?
私はどうする?
そもそも、ここはどこなのだ?
なぜ、私は今、黄葉が目の前で死んで悲しいはず……慌てるはずなのにどうしてこんなにも冷静なのだろう?
琉斗「夢……」
ここは夢の世界…私が作った夢の世界…
裕翔が居たのも夢ならば黄葉も…夢?
私はこの世界が夢だと理解してしまった。
ホントに全て思い出してしまった。
何もかもが可笑しいんだよ。
どうして、冷静なのか、この記憶はなんなのか。
これは、記憶なのでは無い、私が見た夢だ。
それを記憶と勘違いしてしまっていた。
そして、そのまま本当の記憶すら忘れていた。
もう思い出したから私は現へと戻っていく。
琉斗「まって…黄葉…」
現実に戻ると黄葉はいない。
じゃぁ、なぜ俺はこんなにも黄葉に依存してるんだ?
恋してるんだ?
なぜ黄葉の夢ばかり見るんだ?
なぜこんな夢を見たんだよ?
いや、もう分かってるはずだ……
黄葉は死んだんだよ。
交通事故で…俺の前で車に轢かれて死んで…
俺達はその時付き合っていて…それで、俺も意識不明になって…こんな状況になっちまって…
頭が困惑しながら俺は必死に考えた。
俺は黄葉のいる世界に逃げ込んだ。
それが、この世界…夢の世界…
そう思い出す度に自分の体が粒子となって消えゆくのがわかった。
琉斗「いやだ…俺は…黄葉と…一緒に居たい…一緒に…っなんなんだよ…なんなんだよ!!」
そう叫び冷たい黄葉の手に俺は手を伸ばした。
琉斗「訳わかんねぇよ!」
そう泣きながら叫ぶと同時に俺はそこで意識を失ったのだった。
麗奈「…………もう一度だけ…貴方にチャンスを上げてあげる。」
この世界は…狂ってる。
この世界は可笑しい。
非科学的な世界を……貴方はどう捉えるのでしょうか?