やべ変なのに憑かれちゃった
時に、幽霊とはどんな存在なんだろうか? 幽霊と古くは、何かを伝えにこの世に残ってしまった存在。それが、次第に怨念(復讐や執着)のために、悪霊となる場合があるとされている。
人は、行ってはいけないと分かっていても、行ってしまう場所がある。その一つに、心霊スポットがある。そして、その中でも全国的に有名な、心霊スポットが存在した。
そこは、若者の間でも人気な心霊スポットとなっていた。テレビや雑誌などにも多数のるほどに。そういっている間にも3人の若者が肝試しをしにやって来た。その温泉に行くには、人が整備していない岩や木々が生い茂る険しい道を行くしかなく、三人ともいや一人を除く二人は辛そうに歩きながらも楽しそうに進んでいた。すると、1人の男が足を岩にぶつけた。
「痛っ・・・いてぇ。おい翔太早く来いよ! 日が暮れちまうよ。」
「まぁ、急につれてきたのは悪いけどさすがにビビリすぎだって。お前二十四にもなって、幽霊信じるなんて、今どき小学生でも信じねーだろ。」
そう言うと、二人のお気楽者は先へと向かった。
「うるさいな! 俺は別に来たくて来たわけじゃないし、買い物途中でお前らに攫われたんだからな。」
「へいへいすいませんでしたね。」
このかわいそうな若者が、この話の主人公となる男である。彼の名前は楠本翔汰。普通平凡な男なんだが一つ欠点が存在する。それは、子供が笑うほどの超ビビリ過ぎる男なのだ。なぜかというと、夜に買い物に行くときも、後ろから友達や知人から話しかけられると、ビクッと驚いたり、トイレに行くときも、急に電気が消えると大騒ぎするくらいだ。
「なぁー、まだつかねーのか琢磨?」
「う~ん? 確かにここ辺りにあるって言っいてた気がするんだけどな・・・。間違えたかな? ごめん迷ったかも。」
「おいおいそれはねーだろ。もう少し先にあるんじゃねーの?」
二人が話をしているうちに、翔太もやっとのおもいで追いついた。まだ見つかっていないらしく、二人が話している間に近くにあった岩に寄りかかるように座った。すると、座った拍子に足を滑らせそのまま後ろの坂を滑り落ちていった。
「うわぁーーーーーー!」
翔太が叫ぶと二人の友人が気づき、翔太のところへ木にしがみ付きながら降りていった。坂は数メートルの高さで、下は草葉が積もっていたおかげで軽い傷ですんだ。
「おーい。大丈夫か? お前どじにも程があるぞ!」
「悪かったな!」
翔太がそう言うと、もう一人の友人が何かに気づいたのか、森の奥を見て笑った。
「ハハ! 翔太お前変な運があるんじゃないか?」
腹を抱えて笑う琢磨。
「なんで・・・。」
少し間を空けて言った。
琢磨は翔太を置いて友人の元へ行くと、自分も少し驚きながら二人して戻ってきた。
「お前やっぱりなんか運的な奴あるぜ。だって、お前が転げ落ちなきゃこの温泉旅館見つかんなかったぜ。連れて来たかいがあったぜ!」
そう言うと、二人は翔太の手をとり、腰が抜けた状態ではあったけれど、そのまま温泉旅館へと向かった。玄関の前に立つと二人は周りを物色し始めた。扉にはあからさまにお札が全体に貼られていた。ここまでくるとなんだか胡散臭く感じた。
「すげー! 本物のお化け屋敷見てーだな!」
「いや、屋敷じゃなくて旅館だろ旅館。でもすごいな、こんなところに温泉なんてあるんだ? いつまでやっていたんだろうな。ていうか、まだ温泉出てたりすんじゃねーか?」
と、話しつつ二人は、扉や窓を探し開きそうな処を探していた。
「やめよーよ。ちょっと胡散臭いけどやっぱでそうだよ。よくテレビとかでやってるじゃん。それに、幽霊って悪ふざけとか冗談半分で遊んだりすると、めちゃくちゃ怒るって言ってたよ。」
琢磨の袖を摘みながら、恐る恐る足を進める翔汰。
「いいじゃんいいじゃん。でも、何処も開いてねーのな、つまんねーの。」
髪を聞きながら言う琢磨。
「んじゃいっちょ一周してみるか? ここにいても開けれそうにもないからな。どうする翔太お前も行くか? 俺と信也は行くけど?」
二人は少し笑った。
「いや待っとく。絶対戻ってきてよ! 此処にいるから早く言って来いよ。」
「わかってるって! じゃあとっとと行って来るわ。泣くなよ翔太!」
翔太は怒り目に言った。
「うるさいなー。さすがに泣かないよ! 早く行けよ!」
「はいはーい。」と、小馬鹿にしながら二人は裏のほうへと行った。
そう言う間にも、翔太が言っていた事が本当のこととなっていた。それは、温泉旅館の中の奥の部屋で無数の幽霊の小さな会議が行われていた。
「おい、どうするよ! また人間が来たぜ。ここら辺りで殺したろか?」
「やめとけ・・・。人間の死体は臭くてかなわんからな。」
「でも、あいつら入ろうとしてるぜ・・・。どうするんだい玄さん?」
幽霊たちがそれぞれ意見を言い合うと、幽霊たちの中でも一際異彩を放つ男の幽霊が腕を組み、少しばかり頭を悩ませるや否や、作戦を言った。
「よし、一度あの連中をこの旅館に入れて、二度と来れないようにするぞ! 危険だが、殺すんじゃねーぞ! さぁ行け・・・。」
落ち着いた低い声でその男の幽霊は、言った。そう言われると、幽霊たちはすぐさま作戦を立てて、ポジションへと移動した。最後のほうで、部屋を移動しようとした女の幽霊を呼び止めた。
「あやめ! お前は残れ。どうせ邪魔になるだけだろーが。それに、前にもミスして皆
を困らせただろ!」
玄が言うと、あやめは反抗な態度で言い返した。
「いやよ! 前は前よ。今回は失敗しないもん。私だって死んでからもう60年よ! もう立派な年だよ。お願いやらせて、今度失敗したら絶対にやらないから。お願い! 玄さん。」
玄は、また腕を組み少し考えていった。
「わかった・・・。」
「やったー。本当に! ありがとう玄さん!」
「しかしだ・・・! 今度失敗したら、ここから追い出すからな。それだけは、覚えとけよ。」
玄は強めに言った。
「わかった。じゃぁ、行って来るね!」
「あー。行って来い。気をつけろよ!」
「うん。」
玄は、しれっとした態度で、あやめを見送ると、暗い表情で姿を消した。 翔太はと言うと、まだ帰ってきていない二人を待っていた。
「はぁー、遅いなあいつら。なんか不気味だし、さっき旅館の中から声が聞こえたし。あぁ早く家に帰って、さっき買った奴冷蔵庫に入れないと、腐っちゃうじゃないか!」
翔太がそういった瞬間、もたれかかっていた扉が急に開いた。びっくりして、大声で叫ん
でしまった。腰を抜かすと思っていたが、驚きすぎて逆に抜けなかったらしい。すぐに、立って扉を閉めた。
「ふー、何も起こっていぞ。うん、何にも起こってない・・・よし。」
翔太は、あからさまに現実逃避をする。そして、さっきの翔太の叫び声を聞いて、あいつらが急いで走ってきた。
「おーい、大丈夫か! なに、なんか出たの?」
「どんな奴だった? 怖かったか?」
二人は、あまり翔太の心配はせず、出てもいない幽霊の事を聞いてきた。
「いや、出でねーし。ただ扉にもたれかかったら、扉が急に開いたからびっくりしただけだし。別に幽霊に、びびったわけじゃないから。」
翔太が言うと、二人は同じ言葉を言った。
「いや、それはそれでそっちの方が恥ずかしいから、男として・・・。」
「う・・・。」
「まぁー、そんな事はさておき、扉も開いたことだし、入りましょうか?」
琢磨はそう言うと、建物の中に入っていった。翔太も恐る恐る入っていった。見た感じは、さっきまで使っていたかのような不陰気だ。何処にでもありそうな古い温泉旅館にしか見えない。
入ってすぐ手前に受付があったので三人は、受付の方へ行った。
「スイマセーン・・・。誰かいますか?なんちって・・・。」
「ちょ、やめろよ。本当に出てきたらどうするんだよ?」
「大丈夫だって。どうせ誰もいないんだからよ。」
信也が冗談で呼びかけたが、もちろん反応はなかった。二人は少しつまらなそうに、他
のところへ向かった。すると・・・。
「チィーン・・・・・・チィーン・・・・。」
先ほど鳴らなかった受付けの処に置いてあったベルが鳴った。
「今の聞こえたか?」
「あぁー、確かにチィーンって鳴ったよな・・・。いやでも、古いから何かの拍子に、鳴ったんじゃないかな? たぶん・・・。」
「そうだよな。古いもんな、この温泉旅館って・・・。」
二人は、さきほどと違い、少し怖がり始めた。しかし、それ以上鳴らなかったせいか、気にせずに奥の方へと進んでいった。廊下を進むにつれ、部屋が見えてきた。少し疲れたのか、琢磨が一番近い部屋の襖を開けた。
「うおっ、意外にきれいじゃん。いっそのこと、ここに泊っていくか?」
信也は、笑顔で言った。
「ちょっと、冗談はやめろよ。俺、絶対にここには泊まんないからな! ていうか早く帰ろう
よ。それに、飯作んないといけないし。」
「はいはい。もう少し回ったら帰えろーな。」
翔太は、元気のない声で言った。
「そんなーーー。」
そう言うと、二人は畳の部屋に入り、横に寝転んだ。翔太もしかたなしに、荷物を降ろし、畳に座った。
そうしている間に、幽霊たちの追い出し作戦の序盤を誰がするか、三人には見えてない、窓の外で話し合っていた。
「誰から、行くかヒクッ? 俺は便所担当だから、ここはパスだ・・・ヒクッ。」
六十代のお酒が大好きなおじさんが、酔いながら言った。
「ここはやっぱり、ここで死んだ美崎ちゃんでしょ。あの時はびっくりしたよな、まさかこんな美人の人間が幽霊になったんだからな・・・。」と、スケベ親父が言った。
「やめてくださいよ・・・。何も出ませんよ。分かりました、私が行きます。例の奴で行きます。」
「おっ、美崎ちゃんの十八番」
他に幽霊より一段と小さい、幽霊が言った。
「じゃ、人間追い出し作戦開始。」と、スケベ親父が言うと、皆で一斉に叫んだ。
「おぉーーー。」
美崎は、緊張気味で、そわそわしながら窓際から入り、十八番の首吊りをした状態で三人の前に出た。
「あぁーあ、思ったより、つまんなかったな。さすがに、さっきのべルは少しびびったけど。でも、翔太はさすがにびびりすぎだったけどな」
信也が、がっかりした感じに言った。
「うるさいな、あの状況で鳴ったらそりゃびびるでしょ。げんに、お前らだって少しびびってたじゃん。」と、怒り気味で言った。
「たしかに、あれはちょっとびびったかも・・・・・・。」
琢磨は、話している途中に黙り込んだ。
「どうした、琢磨?」
「あっあれ・・・。」
琢磨、窓を指差した。指した方を二人も見ると、ゆっくりと唾を飲んだ。そこには、ロープで首を吊った女が急に現れ、怖い声で話し出した。
「ねぇー、誰から先に首を吊るの?」
「うわぁー、に、逃げろーーー。」と、琢磨が叫んだ。
そう言うと、翔太を除く二人は荷物を忘れて、玄関のへと走って行った。二人は、翔太がいない事は知らずに、扉を開けて外へ出た。
「何なんだよ。あいつ、首吊ってたぞ! 翔太の言うとおり、本当に出たじゃん。」
信也は、早く走ったせいで、息がままならなかった。
「まさか本当に出るとはな・・・。あれ、しまった翔太どこだ。まさか? あいつ、まだ中にいるんじゃないか・・・。」
「まじで! あっ、そういえば、荷物も忘れてるじゃん。」
「どうする? 取りに戻るか。」
信也は、少し考えたが、翔太のためにも行くことを決めた。
「よし、行こう。」
二人は、翔太がいない事に気づくと、また旅館の中へ入ろうとした。が、扉はさっきと違い押しても引いても横に引いても、開かなかった。
「あれ、開かないぞ・・・。」
「は? なんでだよ。くそ、なんであかねーんだよ。」
信也は、扉を強く蹴った。
「仕方ない。待つしかないか・・・。」
「でも、あいつがまだ中に・・・。」
「開かないんじゃ、仕方ないだろ。今は待っとこう。」
琢磨は、心配そうな様子で冷たいタイルへ座った。
ところで、翔太はと言うと、幽霊を見た瞬間に気絶した。幽霊たちも、思いのほか成功したので喜んでいた。
「やったー、成功したよー。」
「よくやったな。さすがだなヒクッ! でも、一人残ってちったなヒクッ。」
さきほどの、酔いつぶれたおじさんが言った。
「まぁ、あと一人だがんばろう。よし、みんな移動移動。」
「はーい。」と、幽霊たちは言った。
幽霊たちが話している間に、翔太も目が覚めた。起き上がると、部屋には二人の姿はなく、幽霊の姿もなかった。
「は、早く戻らないと・・・。」
翔太は、二人の分の荷物ももつと、受付のあったところへと向かった。しかし、ほとんど目を瞑っいたので、歩いた廊下がうる覚えだった。おぼつかない足で、歩き始めた。歩いてすぐに、便所が見えた。翔太は、なぜかこうゆう時に限って、トイレがしたくなった。
「便所って、出るよな幽霊。うっ、漏れそう・・・。やっぱ行こう。」
翔太は、なぜか怖さ以上に、尿意が勝ってしまった。急いで、便所へ入り、トイレを済ませ
た。翔太は、なるべく何も見ないように、手を洗うために蛇口を捻った。すると、何度か捻るが、一滴すら出ない。ほかの蛇口も確かめてみたがやはり出なかった。
「えぇー、なんで幽霊は出るのに水は出ないんだよ。まぁ、確かに誰もいないんじゃ仕方ないか? それにしても静かだな・・・。」
すると、急に人の笑い声が聞こえた。
「プッハハハ・・・。あっいけね!」
翔太は、手を洗わずに、便所を出た。なるべく便所から離れて旅館中をはしり回った。しばらく走って、近くに部屋があったので、そのまま入った。
「やっぱりいるのかな幽霊。でも、さっきの幽霊、あっいけねとか言ってたけど、何だったんだろう?」
翔太は、酒に酔った幽霊が自分が言ったダジャレで笑ったことも知れず、驚いていた。部屋の中を見ていると、自分が入った襖の反対側の襖が気づかぬうちに開いた。
「あれ? ここ開いてたっけ・・・。」
翔太は、確かめるために近くまで行った。すると、そこから、さっきとは違う女の幽霊が出てきた。翔太は、今度ばかりは本当に腰を抜かしてしまった。
「うわゎぁ~・・・。」
そのまま、後ろへと倒れていった。女の幽霊は、翔太が倒れたのを気にすることなく、自分の方へ向かってきた。
「く、来るな。お願いだからだから来ないで、殺さないで・・・。」
翔太が必死に頼むが、全くもって聞いてくれない。このまま終わりかと思いきや、彼女の幽霊は、自分の目の前にあった小ダンスの角で足の小指を行きよいよくぶつけた。
「いった・・・・・・。」
女の幽霊は、小指を掴みながら動かなくなった。
「えっ・・・。幽霊でも痛がるの。ていうか、大丈夫? 小指の先ぶつけるのって、かなり痛いかど・・・。」と、翔太は言った。
すると、彼女の幽霊は、こちらを睨み言った
「痛くないわよ、私幽霊だもん。お前を脅かすために、少し演技をいれてみただけだよ~だ。」
「いや、でさっきから小指押さえてばっかだけど・・・。」
「ちっ違う! この方がリアルでいいうと思ったからよ・・・。」
翔太は、この幽霊を見ていると、恐怖が無くなっていた。幽霊のほうへ近づいていくと、痛がっている演技をしている小指を触った。すると彼女は、ぶつけたとき以上に痛がった。
「うっ・・・、なにするのよ。別に痛くはないけどね・・・。」
「まさか? ツンデレ・・・、幽霊が?」
「つ、つん何とかってなによ・・・?」
「あ、別になんでもない。それにしても、ここって何なんだよ。幽霊は出るし、部屋は多くて迷っちゃうし。」
翔太が彼女を介抱しながら尋ねると、彼女は少しほほを赤くしてそっぽを向いていた。しばらくすると、彼女は痛みがひいたようで、立って部屋の奥へと戻っていた。
「ありがとうは言っとく。別に痛くはなかったけど・・・。まぁ一様、仕方がないから、脅かさないであげるから、早く出てってよね。」
彼女は、そう言うと翔太は、少し冗談を言った。
「はーい、別に怖くはなかったけど・・・。」
「なに、なんか言った・・・。早く出てってよね。」と、怒りながらいった。
「あーあ、いちゃた。どうしようここどこか分かんないし、彼女の名前聞きわすれたなー。」
翔太がどうして帰るか悩んでいる中、奥の部屋では、深刻な話が起こっていた。
「あやめ、分かっているな・・・。今回で失敗したら、出て行くという約束だったな。用がすんだら、早く出て行け・・・。」
ほかの幽霊は何も言わずに、玄の言うことをただ聞いていた。
「わかってる。でも一つだけお願いがあるの・・・。」
「なんだ・・・・・・。」
「あの男の人と、一緒に行きたい。あの人なら、私を受け入れてくれるかもしれない。無理は承知だけど、お願い。あの男の人、昔結婚した人と何か似ているきがするの・・・。それに・・・・・・。お願い玄さん最後の頼みだから。」
玄は、何も言わずに腕を組んで、深く考えた。
「わかった、いいだろう。だが、あの男がいいと言うかはわからんぞ? それでもいいんだったらやってやる。」
「うん、ありがとう、玄さん。」と、嬉しそうに言った。
そのころ翔太は、先ほどからいた、部屋から出ていなかった。幽霊たちは、玄を先頭になるべく脅かさないようにゆっくりと部屋へと、入っていった。
「ガタンッ!」
「ん、なに・・・。」と、言うと後ろを振り向いた
玄たちは、一斉に入ってきた。入っていきなり、翔太が逃げないように、全体的に囲んだ。翔太は訳も分からず、白目をむいて気絶をしてしまった。
「おい、こいつ本当に、大丈夫か?」
「まぁ、こんなに幽霊がいたら、そら驚くわ。なんせ・・・、えっと何霊だっけ?」
「13霊よ・・・。怖くて来てない霊があと数体・・・。」
幽霊たちは好き放題に翔太を馬鹿にした。しばらくして、翔太は目を覚ました。が、また怖い顔でにらまれて、気絶した。それを、数回繰り返した結果、何とか会話ができるぐらいになれることに成功した。
「おい、お前さん。何回も気絶されたら、さすがに死んでてもかなしくなる・・・。」
「あ、はい。すいません・・・。」
翔太は、緊張するあまりに、幽霊たちの真ん中で正座しながら話を聞いていた。すると玄が、翔太の近くまで寄ってきて、話をし始めた。
「あんちゃん、さっきの女の幽霊は覚えているか?」
「さっきの幽霊・・・。あっ、あの小指を打ってた幽霊かな?」
「そう、その幽霊がな・・・そのな、お前さんと一緒に行きたいと言っててな。どうだ?」
あまりにも率直に聞いてきた。翔太は、考えるまもなく言った。
「いや、無理です。なんで、僕なんですか?」
「それがな、さっきお前さんが優しくしてくれたのと、昔愛した人と似ているらしい・・・。やっぱり無理か?」
「なんかすいません。悪気はないんですけど。」
「いや、わかってるよ。こんなこと、急に言ったこっちが悪かった。」
「バタン・・・。」
翔太がそう言うと、玄の後ろにさっきの幽霊が出てきてた。彼女は泣きながら急いで扉を幽霊なのに、手で開けて出て行った。
「すまんな・・・。俺も最初にあいつが、ここへ来たときに聞いたんだがな、あいつお腹に赤子がいたらしいんだ。出産のときに、赤子を産むと母体に危険があるといわれて、旦那さんには、止めたらしいが聞かずに産むって言ったらしい。それで、結局自分の命より、赤子の命を選んだとよ。その後に、赤子の事が心配であっちにいかずに、さまよっているところを、俺が拾った。」
「そうだったのか・・・・・?」
翔太は、さっき言ったことを。訂正するかのごとく拳を強く握り締めた。
「ちょっと、言って来ます。彼女、どこ行きました?」
「行ってくれるのか・・・? たぶん、旅館の裏にある川だよ。あいつ、俺に怒られて落ち込んだりすると、いつもあの川に行って座っているから・・・。ありがとう・・・・・・。」
「あの・・・。」
「ん、何だ?」
目の色を変えて言った。
「一緒にいるだけでいいんですよね。なんか詳しく知らないけど、そんな事聞いたら、助けてあげないといけないじゃないですか! 僕、行ってきます。」
翔太は、急いで川へと向った。何年も使われていない道だったので、木々が倒れていた。一人の幽霊に道を教えてもらい近くと言われたけれど、考えてみれば人間と幽霊の感覚は、違う気がした。そうして、しばらく走った。少しずつ川の流れる音がしてくる。
「はぁはぁ・・・・・・。この辺かな?」
「ピィーヨロロ」と、鳥の鳴き声が聞こえた。
近いはずの、川へ向い森をさ迷っていると、やっとの思いで川が見える所まで来た。そこは、人がいないせいか、見た事にないような緑がきれいに輝いているように見えた。
「あいつどこだ? ここら辺って聞いたけど、あれ? 間違えたかな・・・。」
しばらく、周りを散策していると、彼女の声が聞こえる。
「なによ、もう少し考えてくれてもいいじゃない。」
「ん、あっいた!」
翔太は、声の聞こえるほうを見た。そこには、彼女の姿があった。起こっている様子で、水をけったり、石を蹴ろうとして、小指を打ったりしている。すぐに、行こうとしたときに、高さ2メートル程の坂から滑り落ちた。
「いっっ・・・。」二人同時に、言った。
「えっ・・・・・・。」
あやめは、驚きながら目元を拭いた。恐る恐るあやめは、翔太のもとへ向う。互いに二人は自分たちのさまを見て、笑った。
「じゃなくて、なんであんたがここにいるのよ。嫌だから帰るっていったじゃん。」
「いやそれは・・・聞いたんだ。おっさんに、お前が子供の事を捜してるって事を。」
「聞いたんだ? でも、本当にいいの・・・。」
「ああ」と、返事を返した。
翔太は、恥ずかしそうに頭をかいた。二人は、しばらく川を見ながら、何も語る事はなかった。すると、翔太が立ち上がり、
「よし! そろそろ行くか?」
「うん。」
翔太が、手を貸すと、あやめは手をとり立ち上がった。二人は、来た道を戻り始めた。翔太が、草木を分けて歩いているのに対して、あやめは、まったく気にせずに進んで行った。
相変わらず、長い道のりを歩く翔太だったが、さっき川で滑ったときの怪我が、まだ残っているためか全く進まなかった。そのことに、あやめは気づいた。
「どうしたの、大丈夫?少し休もうか?」
「いや、さっき滑ったときに、捻挫したみたいで・・・。でも大丈夫、さっ行こう!」
翔太が無理をしているのを分かっていた。あやめは、翔太に近づきおでこを指で弾いた。
「いて・・・。何すんだよ、痛いじゃんか」
「あんた、嘘下手すぎ。あからさまに痛がってるじゃない・・・。さぁ、背中に乗って。」
「いいよ、痛いけど歩けるし・・・。」
「いいから・・・。」
あやめは、抵抗する翔太を無視して背中に乗せた。最初は、抵抗していたが、落ち着いたのか、黙り込んでいた。しばらくすると、黙っていた翔太が小さい声で言った。
「あっ、ありがとうあやめ・・・。」
「いいって、別に。」と、照れくさそうに言った。
そうしている間にも、旅館が見えてきた。あやめは、急いで向った。旅館に着くと、幽霊の仲間たちが待っていた。
「ふぅーやっと着いた。足大丈夫?」
「うん、そろそろ降ろしてくれないかな・・・。恥ずかしいからさ。」
「あーごめん。ちょっとまって、皆ちょっと手を貸して、この人怪我してるから。」
あやめが言うと、男の幽霊が二人来て、翔太を連れて行った。すると玄は、翔太のところへ行く前にあやめのところへやって来た。それに対しあやめは、何も言わずに玄に抱きしめて言った。
「よかった・・・・・・。いいって言ってくれたよ玄さん。ありがとう。」
と、あやめは泣きながら言った。
玄は、抱きついてきたあやめの頭を撫でた。それに一言
「よかったな。そしたら早く、準備をして来いよ。俺は、あいつに話したい事があるから、準
備が終わったら、先に玄関に行っとけ。」
「うん、わかった・・・・・・。」と、涙を拭きながら言った。
「じゃ、行ってくるわ。」
そう言うと、玄は翔太のもとへ向った。捻挫の治療をしている翔太の前に座り話をし始めた。
「一つだけ聞く。本当にいいのかあいつの事?」
「あんな事聞いちゃったし、助けてあげないと、男が廃るし。」
「そうか・・・。じゃよろしく頼むな翔太。」
翔太の本意を確認すると、嬉しそうに笑った。
「あのそれと実は僕かなりの怖がりで、幽霊なんて怖いだけだ、人を苦しめるだけな存在だと
思ってたんです。」
「うん、怖がりなのは、さっきので分かってる。」
「え、あっですよね・・・。でも、あなた達みたいに優しい幽霊もいる事も知れて、うれしかった
んです。まー、幽霊がいた事自体驚きましたけどね。」
二人は、しばらく話して、玄関で待たしているあやめのところへ行った。玄関に着くと、不機
嫌なあやめがいた。
「おそいよ。何分待たせるの、全く。」
「ごめん、つい話が進んじゃって。まぁ、とにかく行こう。」
「うん、それもそうだね。」
翔太とあやめを見送るために、旅館の幽霊たちがみんな集まってきた。
「じゃ気お気をつけて。」と、皆で言った。
「うん、行ってきます。」
そして、その掛け声と同時に旅館の扉を開いた。




