置いていく歯ブラシ
君の家に泊まりに行く時、
コンビニで3本入りの使い捨て歯ブラシを買おうとしてたら
「1本のやつ買いなよ、そしたら家に置いとけるし、いない時見たら思い出せるし」
って言われたのを思い出した、ああこの子は寂しがりやなんだなって思ったのも覚えてる。
次の日君は仕事で私よりも早くに家を出たから、
それをいい事にわたしは家を出る前片付けをしてて
君の言っていた“置いていくべきだった歯ブラシ”を持ち帰ったなあ、ごめんねわたしは優しくないから置いていかなかった。
それに置いていける資格なんかなかったから。
思い出してもらう資格もなかったから。
好きじゃない相手の家に置いていく歯ブラシはないのだと思った。君も私も互いがただの寂しさを埋める夜の友達でしかないということがなにより一晩の仲という事をハッキリとさせる。
君が彼氏でなくて良かった、そうだったらきっと苦しくなっていたから。
ごめんね、君と過ごした夜も相変わらず寂しかったけどきっと君も寂しかっただろうね。
お互いを埋められる仲にはなれなかったけど会えて良かったよ。
あぁ、もう今年も終わるね、良いお年を。