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2話 ご紹介

・・・・目が覚めると、そこには見慣れない景色が広がっていた。

おかしい、絶対に、明らかに、確実におかしい。

私は先程車に轢かれて死んだ筈だ。

だから目が覚めるわけがないし、もし仮に一命をとりとめたとしても病院にいる。


だが私の眼前に広がる景色はどうだ。

金髪の、真っ白い肌の美人が、私を見つめてニコニコと笑っているではないか。


「かわいいでちゅね~」


彼女は小さな手で私の頬を撫でた。

赤ん坊扱いされた私は思わずカッとなって言い返してしまった。


なんだその言い方は、私は仮にも一国の国の大臣であるぞ!


そう言って威厳を見せるつもりだったのに・・・・


「あう!あうあうあ~!」


口から出るのは、ふわふわとした意味不明な言葉ばかり。

何故だ・・・思った通りに声が出ない。

と、いうか何となく彼女の言ってること理解できたが、彼女が話していた言語は明らかに日本語ではない。

私は混乱して、手足をブンブンと振り回した。


「どうちたの~?うんちかな~?」


女性は相変わらず腹正しい、赤ちゃん口調で話かけてくる。

なんあ、喧嘩を売っているのか。

そう思うやいなや


「じゃあお着換えしましょうね~」


彼女は私を、ひょいと、まるで赤子を持ち上げるかのように容易に私だっこした。

おかしい私は60kgはあった筈だ。

こんな華奢な女性が持ち上げられるわけがない・・・そう思って恐る恐る周りを見渡すと横にある大きな鏡には、嬉しそうな顔で赤子をだっこする20代前半くらいの女性と、目が腐った意地の悪そうな赤子がうつっていたのである。



「あ・・・あ・・・・あぁ・・」



私は、気絶した。



―――――




それから約一年後、私はこの世界の状況、そして自分が置かれている現状を理解した。

まず第一にこの国は日本ではない。そしてこの世界は異世界である。

言語が明らかに違うし、着ている衣服も何だか独特だ。

自宅はヨーロッパに建っていたような、レンガ造りだ。

それもかなり広いことから、私の家はかなり裕福な家であるとことが伺える。

どうやら父親が貴族らしい、といってもそんなに偉い訳ではなさそうだが・・・。

まあそれでも一応は平均以上の暮らしができているのだから、貴族というやつはかなりの権力や財力があるのだろう。



話を戻そう。

この世界が元の世界と違う、つまり異世界であると確信した瞬間は母の『魔法』を見てしまった時だ。

以前私のミルクを温めなおす時、マッチが切れてたことがあった。

それに気づいた彼女はむにゃむにゃと何かよくわからない言葉を話した。

するとさっきまで何も無かったところに、勢いよく火が着いたのだ。


「あうー・・・・」


と私が感嘆の声を漏らすと、彼女・・・いやお母さんは私を見て


「凄いでしょ~。これは魔法っていうのよ、貴方が大きくなったらおしえるからね~」


と自慢気に語ったのだ。

私は前世で、魔法のような科学を目にしたことはあったが魔法そのものを目にしたことは無かったので大変驚いて、しばらくはそれについてのこと以外は考えられなかった。


両親の会話からも察するに魔法というのはこの世界においては、ごく一般的なものらしく、前世の世界における電気程度の感覚らしい。

無論、私も使ってみたいと思うがそれにはそれ相応の勉強が必要らしく、未だに魔法らしい魔法は使えないのだ。

異世界に来ているのに、残念なことである。



「みんなー!!お父さん帰ったぞー!!」


バン!と勢いよく扉を開けて、私の父ことペテロ・スルーズが部屋に入って来た。

短く切った髪と、薄くはやした口ひげ、それに付随する整った容姿は男性である私からみても大変魅力的である。

前世でいうスリーピースに革のコートを羽織っていて、立派な貴族という感じだ。

だがこの父親、利発そうな見た目に反して大層な馬鹿である。

仕事相手と話していても、妻や私を小馬鹿にしたりいじったりした発言をした相手をボコボコにしたりするので、私も気が気でない。

まあ短気である点や、楽観的すぎる点を除けば、良い父親だ。

私は決して彼が嫌いではないのだ。


「今帰ったよハニーーーーー!!」


あと息子の前で、妻と熱い接吻を交わすのを止めれば良い父親だ。


「今帰ったぞクロ―!!!」


・・・・あと息子にヒゲをはやしたまま頬ずりしなけりゃ良い父親だ。



おっとりしているが実は冷静な母に、短絡的だが家族思いな父。



私が死んでから一年。

いや生まれ変わってから一年か





私はこの家族も、この異世界も徐々に好きになり始めていた。








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