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パラドックス  作者: ノイズ
アケディア
2/3

アケディア 実力

なんて、めんどくさいんだ。

いつまでもこんなことをして何が楽しい。

本当に馬鹿みたいだ。

人類は。


マオの心の中はその思いでいっぱいだった。


マオは国一番の魔導師と呼ばれていた。

全ての魔導要素を操り、魔導師の中で勝てるものはいないと言われるほどマオの力は凄かった。

しかし、マオからしてみればそんなこと当たり前だった。


何故ならマオは人間ではないのだから。


この世界には大きく分けて三つの種族がいる。

人類、亜人、魔族。

数は人類、魔族、亜人の順で多く、魔導適正は魔族、亜人、人間の順で多かった。


マオはその中でも魔族に所属しており、更には魔族と亜人をまとめあげる魔王と呼ばれる者であった。


そんな者が魔導師の、強いては人類の。

魔導師の大会において負けるはずはないのだ。


「試合開始!」


審判が叫んだ瞬間、相手は魔導書を開き攻撃してくる。


「雷帝」


ぼそりと呟いたのを合図に相手の真上に雷が落ちる。

相手の魔導書は雷によって焼き落ちてしまい、審判はマオの勝利を告げた。


本当につまらない。

こんなことならパソコンでゲームをやって暖かい布団の中で眠りにつきたい。


魔王であろうが、力は凄かろうが、マオの根本はただのクソニートだった。


「いよいよ決勝だな」


マオのとなりにいる王は本当に楽しそうな様子で告げる。

あれから反則とも呼べる圧倒的な実力で勝ち進んだマオは最後まで勝ち残り残るところ決勝戦だけになっていた。


「いつもならマオには負けて欲しくないが、今回ばかりは負けて欲しいな」


マオ贔屓の王が訳のわからぬことをいい始めた。

王は力の強いものが好きで、数年前なにかの間違えで参加してしまったこの大会で優勝してから王はマオのことを王宮に呼び出したり、魔力増加アイテム(そんなものは必要ないが)をマオに送り続けていた。

そんな王が負けて欲しいなどというとは何があったのだろう。

マオは柄にも合わず心配というものをしてしまった。


「王、どうしてです?」


疑問に思ったら即質問のマオが尋ねると


「我は大変マオの事を気に入っているからであろう」


王は少し照れながら答えた。


いやいや。気に入られてるのはわかってるって。

じゃなきゃ毎年俺の住居に側近を寄越さないだろ。


なんで負けて欲しいなどと言ったか教えて欲しいんだけど。


「大変恐縮でございます。

しかしながら、何故負けて欲しいなどと?」


「そんなの・・・・・」


王が答えようとしたときだった。


「決勝戦をはじめます。マオ様、クライン様は会場入りしてください。」


アナウンスが流れてしまった。

そのアナウンスを聞き、王は答えをとぎらせた。


「そなたなら心配ないと思うが頑張れ。

我はそなたの華々しい活躍を期待しておる」


「おおせのままに」


答えを聞きはぐってしまった。

正直嫌な予感しかしない。

あの王があそこまでいうなんて今回の優勝景品はなんなんだ?

毎年、金だったり食料だったりしたが。

今年はなんか違うのか?


かんがえごとをしながら会場入りし、相手を見据える。


確か、クラインと言ったか?

確かに人間にしては魔導適正が強い。

下手したら下級魔族くらいはあるんじゃないか?


「試合開始!」


今日一日で何度も聞いたセリフを合図にクラインが魔導書を開く。


「炎玉!!」


「反射」


「火柱!!」


「氷漬」


「チッ・・・・・さすが王国最強・・・」


クラインが攻撃したものをマオが防御、無効化する攻防が続いていた。

マオからしてみればクラインなんて人間にしては強いだけで大した相手ではない。

ただ、本当に優勝しても大丈夫なのかと先程の王の発言がずっときになっていたのだ。


いや、まて。


必死に頭を回転させていたマオであったが、視界に入ってきたものに脳を動かすのをやめた。


現在の時刻、午後9時。


まてまてまてまて。

俺の計算では8時にはこの大会が終わり、11時から行われる『愛と魔導のカーニバル』のイベントをじっくりとプレイする予定だった!!

はやくおわらせたとして、閉会式にでないと確実にロバートに怒られてイベントをやる時間なんて無くなる。

閉会式に出たとして、長くて1時間。

その後、王と話すとして30分。

家に帰り、配線を繋いでパソコンの起動時間で5分。

ってことは・・・・・

早くてもあと15分以内に終わらせなくてはいけない。

・・・・・物思いにふけってる場合じゃねぇ。


マオは閉じていた魔導書を開く。

その数七冊。

本当はここまで必要ないのだが、王との話を早く切り上げるためにも「魔力が切れて早く休みたい」という口実が必要だったのだ。


「炎、風、水、地、雷、光、闇。全ての魔導書起動確認。

これより、閲覧を開始する。」


マオが高らかに言った瞬間、全ての魔導書のページが一斉にめくれ、マオの周りに魔力のうずができる。

クラインはその渦に巻き込まれぬようにしながら攻撃を続けていたが、クラインの攻撃は全て渦に飲み込まれてしまった。


「くそ、こんなの」


勝てるわけないじゃないか。


各属性の最高魔術書『ソロモンの秘法』を持つ、国内最強の魔術師マオ。

間違いなく、こいつは勇者になり魔王を倒すことができる。

幼い頃、魔物に両親を殺され、勇者になろうとずっと努力してきたが、コイツほどの魔力の持ち主に任せた方が確実だろう。


クラインは負けると覚悟をし、ゆっくりと目を閉じた。


「散れ」


マオのその声により、クラインの持つ魔導書を蹴散らした。


「凄かったぞ!!マオ」


興奮気味で抱きついてきたのは勿論王だ。

王はマオに対しキラキラとした目でどーやったのだ、何故あんな力を、と話しかけまくっていた。


マオは疲れた振りをしながらも微笑んでみせた。


はやく、はやく閉会式を始めろ。

今の時刻、9時5分。

予定通りことが運べば余裕でイベントに取り組むことができる!!


このとき、マオの頭の中はネトゲの事だけで試合前に王が言ったことも、試合中の嫌な予感も全て消えていた。


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