アケディア 始まり
魔王の話
暗い部屋で一人、パソコンに向かう青年がいた。
青年の両手にはマウスが握られていて、それを目にも止まらぬ早さで動かしていた。
「ふはっ、また世界記録達成だぜ」
青年は一人、満足げに笑ってパソコンの電源を落とした。
青年は眠りにつこうと布団に潜ったのだ。
今日は世界記録達成したし、5日ぶりに入る布団は最高だぜ。
興奮で目はまだ冴えてるけど明日は大事な用があるし寝なくては。
青年がやっと夢の世界に飛び立とうとしていた時だった。
ピンポーン
一発で眠りを妨げるような間抜けで、イラつく音が青年の部屋に響いた。
青年はイラッとしながらも居留守を使い、眠りにつこうとした。が。
ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン
眠りにつくという行為はしつこい来訪者によって阻止されてしまった。
「あー!もう出ればいいんだろ!」
イライラしながらもスウェット、ボサボサの髪のまま部屋の扉を開ける。
と、そこには黒いローブを羽織り、眼鏡をかけた男が数名たっていた。
見るからに怪しい軍団だが、青年は臆する様子などなく溜め息をつく。
「なんだ?ロバートかよ。今から寝るんだけど」
ロバートと呼ばれた、恐らくインターホンを押しまくった男は爽やかな笑みを浮かべた。
「マオ様。今日が何日かご存知で?」
「あ?24日だろ。それを聞くためだけに来たのか?」
ロバートは爽やかな笑みのまま、額に血管を浮かばせた。
そしてそっと携帯を取り出し待受画面。
つまり、時間と日にちを見せた。
「・・・・・・・・・あは、ごめん」
そこに映し出されたのは4月25日、午前11時。
「マオ様、今から言う非礼をお許し下さい。
とっとと用意しろ!!!こんっの、クソニートがああああああ!!!!」
七つの大国のひとつ。
王国、アケディア。
七つの大国一の魔導の国であり、本日4月25日は魔導師のNo.1を決める大会が行われる。
そして、今年の大会はいつも行われてる大会とは別の意味が含まれていた。
「王、連れてきました。」
ロバートは椅子に座る青年の前にマオを突き出す。
マオは先ほどのスウェットではなく、魔導師の証と言ってもいいシワ一つないローブを羽織っていた。
「おくれてしまい、申し訳ありませんでした。」
深々と頭を下げると「頭を上げろ」と王はいい、その表情は楽しみで仕方ないと子供じみたものになっていた。
「マオ、お主の腕見せてもらおう。」
「おおせのままに」
今度は軽く頭を下げて王の前から姿を消した。




