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どう伝えたらいいんだろう・・・

(5・13 PM11:47)


ガザガサ・・・


カタッ・・・


コツコツ・・・



「え?何?」



誰だろう・・・?

用事だったら超えかけてくれたらいいのに・・・。



ガチャ・・・



「誰だろ?ドアノブじゃなくて直接渡してくれたらいいのに・・・。」



その日から毎晩、ほぼ同じ時間に紙袋だったり、お花だったりが置かれるようになった。


みんなに聞こうと思ったっけど・・・なんとなく聞きづらい。

でも、誰か知りたい。



ありがとうって言いたいし・・・



(5・19 AM7:28)

(リビング)


リビングに行くと、キッチンで緑涼さんが朝ごはんの支度をしてる。


「おはようございます。」

「おぉ!おはよ!大丈夫か?まだ部屋にいたほうがいいべ。」

「少し動いたほうがいいような気がしたんで。」

「そうか?じゃ、朝ごはん食べて、ゆっくり休みんさい。」


出てきたのは、卵粥。といっても硬さは5分粥ぐらい。

すってのどを通過していくので食べやすかった。


「あんまり硬いものは、傷が開くといけないから、椿のご飯はまだしばらくはお粥だべ。」

「ありがとうございます。スープの日々は終了ですね。」


ふと、キッチンのほうに眼を向けると、厚揚げお皿に気って置かれていた。


「あれは、火燐のご飯。あいつも先生から絶対安静って言われてね・・・ま、おらのせいでもあるんだけど・・・。」


お部屋が吹っ飛ぶくらい怒ってたし・・・怪我も相当ひどかったんだ、やっぱり・・・。


「あいつの好きな、紅葉庵の厚揚げ豆腐を取り寄せたんだ。きっと喜ぶだろうな・・・。」

「火燐さん厚揚げ好きなんですね。」

「そうなんだよ。前に取り寄せしようとして売り切れだったことがあって、その時なんてショックで部屋に閉じこもって、大変だったべ。」



閉じこもった・・・

子どもみたい(笑)



「相当好きなんですね。その厚揚げ結構人気なんですね。」

「そうそう。1週間に1度しか販売しないし、数量も200枚限定で・・・いつも、ものの数分で売り切れって感じだべ。疲れる。」



相当人気商品なんだ・・・。



「大変ですね・・・でも、どうやって注文かけるんですか?ネットとかですか?」


「ま、そんな感じだべ。“AY.nyatえーわいどっとにゃっと”っていう、幽霊や妖怪とか専

用の通販サイトがあるんだべ。そこを通して注文かけてとるんよ。」


え?あの世もネット社会?なんか凄いこと聞いた気がした今。


「あと、禮漸もキセルに入れる葉っぱもこだわりがあるみたいで取り寄せてたな・・・。」

「そ、そうなんですか・・・あ、あの世もこの世もあまり変わらないんですね。」

「んだな。昔は、お店に伝書鳩飛ばして、それから取りに行ったりしたから大変だったべ。」



で・・・伝書鳩?なんか昔はもっとすごかったんだ・・・。



「とりあえず、これ火燐のところに持って行ってくるべ。食べたらお部屋にも戻っときなさい。」

「は~い。」



見てみたいな・・・そのサイト。



(5・19 AM10:05)



コンコンコンコン・・・・



「うん?誰だろ?は~い!」



ガチャ・・・



「あれ?誰もいない・・・」



ガチャ・・・



「う~ん・・・も~誰?気になるな・・・。」


本当気になるな・・・・。



コンコン・・・



カチン!



「も~誰ですか!」

「は・・・蓮流ですけど・・・。」


え?

蓮流さん?



ガチャ・・・



「どしたの?」

「ごめんなさい。ちょっといろいろあって・・・。」

「そ、そうなんだ。」



ごめんなさい。

思いっきりイライラをぶつけてしまって・・・


「で、今いいかな?」

「あ、はい・・・」



「火燐ここに来てないかな?」



火燐さん?

何があったんだろう・・・

いや、何起こしたんだろ・・・



「いや、来てないですけど・・・。」

「ならいいんだけど。あいつ、勝手に俺の部屋、出て行ったみたいで・・・。」



思いっきり脱走してるよ(焦)

また、緑涼さんに怒られることが確定だ・・・。


「とにかく、来たら教えて。」

「分かりました。」


ガチャ・・・。


ふわ~!

大変だよ。前みたいに、いきなりお部屋にいましたってこともありえるってことだよな・・・

これって。


うわ・・・

いやな予感しかしない・・・。


ササッ!


え?

なんか今窓に映った!

まさか・・・


ガバッ!



「椿ちゃん!」



やっぱり・・・

前と一緒だ!



「ちょ・・・火燐さ・・・」



スッ・・・。



「ごめんね。声出したらみんなにばれるべや。だから・・・」



く・・・口塞がれた!

おまけにギュってされてるから動けないし・・・。



「少しだけ、話したいことあるから。ここにいていいべか?」



もういていいですから!



苦しい・・・


(蓮流の部屋)



「あいつは本当・・・(怒)」



緑涼の怒りのボルテージが徐々に上がってきていた。



「しかも、厚揚げを食べてから出て行ったみたいっすね(笑)」



禮漸さんのその言葉が、火に油を注いだようだ・・・。




「また、きつくに叱らないといけないみたいだな・・・(怒)」




緑涼の怒りボルテージはマックスになった。



(椿の部屋)


「お話って・・・」

「うん・・・ごめん。俺のせいで怪我しちゃって・・・」


不安で、今にも泣きそうな眼をしながら火燐さんは私に謝罪した。


「そんなこと、無いですよ。」

「本当に?」

「はい。」

「でも、風燕が・・・。俺のせいとしか思えなくて・・・」



どう言葉をかけるべきかためらってしまった。

親父から風燕さんと火燐さんのことを聞いているだけに余計ためらった。



「俺と風燕は、目の前で親も友達も殺されたんだ。皆殺しだべ・・・。」



親父から聞いていたことを火燐さんから直接聞くとは思わなかった。



「村も焼かれて・・・何にも残らなかったべ。俺と風燕が生きているってわかった人間は、俺達に手当てするとか言って騙して、実際は街で人間相手に見世物やらされて・・・あの時の生活・・・自由なんて無かったべ。その時から俺達は、人間なんて信じないって決めて生きてきたべ。」



親父というフィルターを通して聞いた話よりもっと残酷で、もっと衝撃的な言葉が火燐さんから出てくる・・・。



ストレートに・・・。



「だから、俺が椿ちゃんと話したりしてるの見るの嫌みたいだべ。きっと俺のことも裏切り者とか思ってるんだべ。」



「それは・・・違います。」



火燐さんは、驚いたような顔で私を見た。



「風燕さんは、私に“お前さえいなければ、火燐はあんな大怪我しなかった”って言ってました。だから、裏切り者とか思ってないです、きっと・・・。」



そう聞くと、火燐さんは泣き出した。

何かがぷつって切れたように少し笑いながら泣いていた・・・。


「椿ちゃんの眼。正嗣と一緒だべ。」

「親父と?」

「んだ。透き通ってて・・・きれいだもん。それにやさしいべ。だから大丈夫、信じていいんだって・・・」


私も泣いていた。

だって、この気持ち共感したかったから・・・



ガチャ・・・



「もう話は終わったか・・・」



禮漸さん?

聞いてたんだ・・・全部・・・



「部屋・・・勝手に飛び出してごめんなさい。」

「そうだな。緑涼さんキレかかってるから、早く戻ったほうがいいぞ。」

「うん・・・椿ちゃん。」

「はい。」

「俺、やっぱり椿ちゃん好きだべ。また、元気になったらここに来る。」

「はい。今度は何かお菓子用意しときますね。」


「じゃ、手作りで♪」

「調子に乗るな!」


ポン・・・


キセルで頭叩かれてる(笑)



「熱いべや~(泣)」

「帰るぞ!」

「は~い・・・」



ガチャ・・・


なんか

火燐さん、すごく不安だったのかな・・・

私のことも風燕さんのことも・・・

でも、笑顔になった火燐さんみてなんかほっとした気がする。



さ、問題は風燕さんだ・・・。


どう接したいいんだろ・・・。



このこともだし、例のドアノブのことも・・・


先に解決できそうなのは・・・ドアノブかな。


てことで、こんなことをしてみようと思います


相手をほかの誰にも知られないように特定して、お礼を言うこと・・・。


ってことで、今日の晩そのことを決行します!


(5・19 PM11:30)



「そろそろかな・・・」



私は、さささっとドアの内側に準備。

来て・・・ドアノブに何かかけたらさってドアを開けるんだ♪



(5・19 PM11:49)


ガサガサ・・・


来た!


カタッ・・・


今だ!


ガチャ・・・




「うわっ!」




か・・・風燕さん?!



「え・・・う・・・え?」


「べ・・・別に、お前が心配でこんなことしてんじゃねぇべや!」



コツコツコツ・・・・



あ、帰った・・・。



まさかの風燕さんだった・・・

ちなみに今日は・・・チョコレートと紅茶。



ガチャ・・・


「椿・・・どしたべ?なんか風燕の声がしたけど・・・。」

「あ・・・いや・・・なんでもないです。」

「本当か?嘘ついてねぇべか?」


見抜かれた・・・。


「おらの部屋で話そうか。」

「はい・・・。」


(緑涼の部屋)


「失礼します・・・。」


緑涼さんの部屋は、和室っぽい感じ。

畳と墨の香りが部屋を包む空間だった。


緑涼さんは、敷いていた布団を軽くたたむと、ちゃぶ台と座椅子をセッティング。


「どしたべ?」

「実は、数日前から毎晩ドアノブにお菓子とかお花とかが掛かっていて・・・」



緑涼さんは、私の言葉に少し小さく頷いて話を聞いてくれた。


「で、みんなにも聞きたかったけど・・・聞きにくくて・・・。それで、思い切って・・・」

「来た瞬間にドアを開けて見たら風燕だったって訳か・・・。」

「私・・・風燕さんにどうお礼を言っていいか解らなくって・・・。」


緑涼さんは少し俯いたまま。悩んでいるのがはっきりと分かる感じだった。


「あいつも、椿と一緒で、どう接していいのか判らないのかもしれないべ。」

「昔のことがあったから・・・ですよね?」


「・・・」



「火燐さんと・・・父から聞きました。」



親父の名前を出すと、緑涼さんは驚いて固まってしまった。


「風燕さんのことがあった時、夢の中で父に会ったんです。その時に風燕さんのことを聞きました・・・。具体的なことは、火燐さんから聞きました。」


「そうか・・・。あんなことされたら、誰でも信じれなくなるのは当たり前だべ・・・。」


私と緑涼さんの間に重い空気が流れ始めていた。


「でもあいつなら、きっと椿も信じることが出来る。だから、普通にありがとうって言ったらいいべや。」


「そ・・・そういわれても。」


「大丈夫。そうだ!」


そういうと、緑涼さんは、いきなり席を立ち私を置いて部屋を出てしまった。



「あ・・・私・・・どうしたらいいんだろ・・・。」



コツコツコツ・・・



「いきなり部屋で飲もうなんてどしたべ?」


え?まさか・・・



「そんな気分になったべや。付き合えよ、風燕!」



やっぱり・・・風燕さんだ・・・


どうしよう・・・。



ガチャ・・・



「な・・・何でこいつもいるんだよ!」

「おらが呼んだべや!」

「おらがて・・・俺は!」

「いいから!はい!座るべ!」


そういうと、ちゃぶ台の上に日本酒の一升瓶をドン!


「椿、ごめん!コップ3つ台所から持ってきてくれ!」

「わ・・・わかりました。」


私は、キッチンに行って小さなコップを食器棚から出すとすぐ緑涼さんの部屋に・・・


「ありがとう!ごめん!あと、おつまみに作れるべか?」

「・・・下手でもよかったら・・・。」

「大丈夫!じゃ、お願いしてもいいか。」


そういうと、緑涼さんに、両手を合わせてお願いされた・・・。


「わ、わかりました・・・。」


私、何でこんなことしてるんだろ・・・。


(緑涼の部屋)


「じゃ、おら達だけになったところで・・・」


緑涼は、そういうと風燕の前にコップを置き日本酒を注ぎ始めた。

風燕は少し疑いながらもそのコップをとり飲み始めた・・・。


「なんか話でもあるのか?」

「椿のことどう思う?」

「どうって・・・」

「まだ一緒にいるの嫌なのか?」


緑涼は、そういいながらコップの酒に口を付け始めた。


(キッチン)


椿がキッチンに行くと、冷蔵庫の前に人影のようなものが見えた。


「あれ?火燐さん?」

声をかけられてびっくりしたのか、火燐は思わず椿を2度見。



「椿ちゃん・・・。」



床には冷蔵庫の中にあるはずのものがポロポロ・・・。

火燐の口の周りに食べかすがちらほら・・・。


「おなかすいて・・・お願い!誰にも言わないで!お願いだべや(泣)」


椿は、火燐に泣きつかれた。

普通に泣いて懇願されているのではなく、言葉のとおり泣いて抱きつかれていた。


「はいはい。ちょうどおつまみ作るところなんで一緒に何か作りますね。」

「うん!椿ちゃんのご飯食べられるなんて嬉いべや!早く早く!」



(緑涼の部屋)


緑涼の部屋には、かなり重い空気が流れていた。

お互い話しづらいのか、酒に手が伸びるだけ・・・。


「俺・・・久しぶりなんだ。人間のことが心配になったのは・・・」


重い空気の中、口をあけたのは風燕だった。

彼はまだ話しを続ける。


「正嗣のとき以来なんだ。こんな気持ちになったの。その時も・・・俺が正嗣に切りかかってさ・・・。」

「だからか。お前と火燐をここに連れて来た時、傷だらけだったのは。」


緑涼は、そういって笑いながらまた酒を飲む。


「だからさ・・・なんか・・・なんかあいつの事ちょっと心配になったんだよ。」


風燕はそういうとコップの中に入っていた酒を飲み干した。


「謝りたいって気持ちもあるのか?」

「・・・まぁ。でも、どう話していいかわかんなくってさ・・・」


その問いに緑涼は笑いながらこう答えた。


「気持ちのまま、椿に伝えたらいいべや。お前の言葉で。」


と・・・。


(キッチン)


「はい、完成!」

「うわ~!!稲荷寿司だべ!!」


椿はありあわせの食材を具にして稲荷寿司をたくさん作った。

そのうち数個を火燐の夜食、残りはおつまみということに・・・。


「お味どうですか?」

「うまい!うまいべ!最高!」


火燐の口に合っていたようで、速いペースでたべ進められていく・・・。


「よかった・・・。」



あっという間に火燐のおなかの中に稲荷寿司は消えていきました・・・。


「椿ちゃん、ありがとう。」

「いえいえ。あ、早くお部屋に戻らないとまた緑涼さんに怒られますよ。」

「は~い♪じゃ、おやすみ~。」


火燐は、蓮流の部屋に帰っていった。


「じゃ、これは緑涼さん達に・・・」


椿は、冷蔵庫の周辺の残骸を掃除して緑涼の部屋に向かった・・・。


(緑涼の部屋)


ガチャ・・・


「遅くなりました!」

「おかえり!お!稲荷寿司だべ!風燕!」

「まじで!見た目は・・・大丈夫だけど、味が最悪とかだったらしばくからな。」


しばくて・・・

やっぱりこの方にどう接していいのか判らなくなってきた・・・。



「ま、座って。ほい。」



私も、もちろん参加って感じですか・・・



ゴクゴクゴク・・・



日本酒初めて飲んだ・・・。

いつも飲んでるチューハイとかと違って少し辛いかも。



「うまっ!椿料理下手じゃないべ!」



バタッ・・・


「椿・・・椿大丈夫か?」

「もしかして、こいつ酒に弱いのか?」

「そうかもしれんな・・・とにかく部屋に運んでくるわ。」

「あぁ・・・」


(5・20 AM10:36)


「頭重いよ・・・。」


初めての日本酒デビューの結果・・・二日酔いです。


「ふぇ・・・何これ?」


机の上に昨日の紙袋と・・・何か置いてある・・・。


「手紙・・・?」



“この前は、いきなり斬りかかってごめん。稲荷寿司うまかったぞ。”



「風燕さんだ・・・。」


少し笑えた。


風燕の気持ち知れたから・・・。



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