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火燐のわがままですることになりました。


(10・29 AM6:01)


今日はみんなで畑のお手伝い。

畑の一角に実った黄色いかぼちゃを収穫する日である。



「急げ~!!7時にはトラック来るべ~!!」



「1時間でこれ収穫するのか?」

「大変だべや(泣)」

「・・・マジか・・・。」

「とにかく急ごう!止まるな!!」

「重そう・・・(驚)」


とにかく、椿達に与えられた時間は1時間だった。



「なぁ・・・緑涼・・・。」

「なんだべ?」



「これで刈っちまっていいか?」



風燕の両手には、鎌が用意されていた。

緑涼は、悩んだ末に風燕にある確認をした。



「絶対にかぼちゃ本体に傷はつけねぇべな。」

「俺のコントロールをなめんな!」



「みんな、危険だから撤収!!」



椿達が畑の外に出ると、風燕は鎌を構え呼吸を整える。

すると、鎌を取り巻くような風が姿を現す・・・。



「行け~~~~~~~~~~~!!!!」



鎌を豪快にスライドさせると、鎌から離れた風が銃弾が飛ぶような勢いで畑を駆け抜ける。

風が消えた後、かぼちゃは蔓から離れ、畑の中をコロコロ転がっていた・・・。


緑涼が、かぼちゃの一つを手に取って確認・・・傷一つなかった。



「よし!綺麗!ダンボールに詰めていくべ!」



縁側にあらかじめ用意していたダンボールを火燐と椿と蓮流で組み立て、緑涼と禮漸、風燕でかぼちゃを詰め込んでいく・・・。



(10・29 AM7:05)


「ありがとうございました!」


50以上の箱をトラックに積み込み、トラックは帰って行った・・・。



「でも、何でこの時期になったらあのかぼちゃがいっぱい出て行くべか?」



火燐はその疑問を緑涼にぶつけてみた。



「ハロウィンとかいうパーティーに使うらしいべ。」



すると、風燕がすっと話の中に入ってきた。



「あれだろ?ジャック・オ・ランタンっていう、ちょうちんを作るんだろ?あのかぼちゃがいるって何かの本で見た。」



それを聞いて、火燐の中にはさらに疑問が・・・



「ちょうちん?あれ重いから吊り下げられないべ。それにどうやって作るべや?」



それを聞いて、風燕は笑いながらこう答えた。




「そのまま使う訳じゃねぇよ(笑)中身はくりぬいて使うんだよ。」




「俺、作ってみたいべや!!」



「黄色いかぼちゃもう全部送っちゃったべや!」



「俺も作りたいべや(泣)」




火燐の我儘に緑涼はとにかく焦った。火燐が我儘モードになると、後々大変になるのが目に見えているからである。




「お・れ・も・つ・く・る~~~(泣)」




「緑涼さん。」



椿は小声で緑涼を呼び止めた。



「なした?」

「普通のかぼちゃ、いくつかありますか?」

「あるある(笑)」



そういうと、緑涼は椿の言った事の意味が分かったようですぐに畑に戻って6つのかぼちゃを収穫してきた。



(10・29 AM9:16)



「ね~ね~!」



火燐は、椿にべったりしながら、かぼちゃのことを聞いてくる。



「ランタン作りたい!」


「ランタンは明日作りましょうね~(笑)」


「え~(泣)」


火燐はふくれっつらをしながら、椿を見つめる・・・。

しかし、椿はお構いなしにかぼちゃを冷蔵庫に入れてしまった。




「やだべ・・・」




火燐はそうつぶやくと、椿の背中をぽんと押した。椿はその瞬間、意識を失いその場に倒れてしまった。火燐は、その椿を抱えると自分の部屋に戻ってしまった・・・。



(10・29 PM12:05)



「椿~・・・」



緑涼は、椿の部屋のドアを何度もノックするが返事がない。ドアを開けてみるが誰もいない。


その光景を見た瞬間、緑涼の心にいやな予感がした。


リビングに向う途中、緑涼は火燐の部屋の前で立ち尽くす風燕を見かける。どうしたのか声をかけると、火燐が自分の部屋に結界を張っているので入れないとのことだった・・・。



「火燐~!なして結界張ってるべや!」



わざと知らないふりをして火燐に声をかけてみる。



「かぼちゃちょうちん・・・作るっていうまで、椿ちゃんと一緒にここにいるべや(怒)」



いやな予感は・・・的中した。


火燐の我儘がエスカレートすると、部屋に閉じこもる。しかも、何か人質をとってから自室に立てこもるというかなり厄介なことになる。

全員、この我儘の犠牲にあったことがある。椿にいたっては、決まって椿自身が人質になるので、緑涼達にとってはこの瞬間が一番、厄介で危険な瞬間だった・・・。


「我儘言うでねぇ!」

「やだ!今日作るべ!」

「おまえな~!ハロウィンは31日なんだぞ!今、作っても保管が大変だろ!」

「い・や・だ・べ~~~~~~~~!!」



緑涼&風燕 VS 火燐(+椿)の攻防がここから何分も続いた。



「火燐・・さん・・・」


椿は、火燐の腕の中で目を覚ます。火燐のふわふわした尻尾が、椿の動きを封じていた。


「何で・・・こんなことするの?」

「・・・かぼちゃちょうちん・・・(怒)」

「明日作ろうって・・・言ったじゃん。」

「・・・今日がいいべや(怒)」

「我儘・・・じゃ、私も同じことするね。」


椿は、火燐の眼をじっと見てこういい始めた。



「我儘言う火燐さんだけ・・・お菓子作ってあげない。」



「!?!?」



「我儘言う火燐さんだけ・・・お部屋に入れてあげない。」



「・・・(泣)」



「我儘言う火燐さんだけ・・・」




「ずっと一緒・・・」


「?」




「かぼちゃちょうちん今日作らないと、椿ちゃんここから出してあげないべ(怒)」



油に火を注ぐ結果になってしまった・・・。



(10・29 PM12:39)


その頃、ドア一つ挟んだ向こうにいる緑涼達は、切れる寸前だった。



「か・・・り・・ん・・(怒)」

「おい、やばいぞ、蓮流(焦)」

「そ・・・そうだね(焦)」


そういうと、風燕と蓮流は後ろで結界を張り自分達の身を守ろうとする。しかしそこに、禮漸が現れ・・・



「俺に任してくれませんか?」


といってドアの前に立つ。緑涼は禮漸の顔を見ると、抜きかけた刀を戻し、風燕達がいる場所まで足を運んだ。



「す~っ・・・」



禮漸は息を吸うと、左手を結界の張られたドアにぴたっとくっつける。結界が放つ火でさえももろともせずに・・・。



「開けるぞ!」



そういうと“いやっ!”というと、思いっきりドアをこじ開けた・・・。



開けた先にいた火燐と椿はびっくり。大火傷を負っているのに、無表情なまま、自分達を見つめていたからである。


禮漸はそのまま火燐のほうに足を進める。火燐の前に立つと、右手で火燐の頭を押さえつけ、無表情のままじっと見つめこういった・・・。



「もう、我儘、言わないな(怒)」


「ん・・・だ・・・(怯)」



そういうとにこっと笑い、火燐の頭から手を離すと「じゃ、かぼちゃ出しに行くか?」といって右手を差し出した。


火燐は、目をきらきらさせると、禮漸にくっつく。



「その前に、椿に謝りなさい。」



そういって椿のほうに顔を向けさせる。火燐は怯える椿に“ごめんなさい・・・。”といって椿に頭を下げる。



「椿もかぼちゃ出しに行こう。」



禮漸は、そう微笑みながら椿にそうつぶやく。



「その前に、凛香に連絡だべな(笑)」



緑涼は禮漸にそういうと、下に降りて行った。



(10・29 PM1:42)


「ったく(怒)そちは無茶しすぎじゃ!対話という言葉が頭の中にはないのか?」


「・・・対話なんて火燐には通じない(呆)」



凛香が手当てをしている横で、火燐はきゃっきゃ言いながらジャック・オ・ランタンを作る。



「・・・確かに、あれには無理じゃな(笑)」



火燐の姿を見て、凛香はあきれながら手当てを終える・・・。

禮漸は右手でキセルを持って口に咥えると、器用にマッチを使いながら火をつける。



「身体に悪いぞ、禮漸。」

「俺にとっては、これが栄養剤なんで(笑)」



「急にごめんな、凛香。」

「かまわん。全治2ヶ月といった所だ。禮漸に無茶禁止とだけ伝えといてくれ。あと、これ薬。」



そういうと、緑涼に痛み止めと塗り薬を渡した。


「じゃ、行くわ。」そういって凛香は帰っていった。



(10・29 PM11:29)


火燐の枕元には、自分で作ったジャック・オ・ランタンが・・・。



「寝た?」

「しっかり寝てる(笑)」



蓮流と椿で火燐が寝ているか確認。その後リビングへと向った。

リビングに入ると、痛み止めを飲む禮漸の姿があった。


「大丈夫?」


椿が心配そうにそう尋ねると


「大丈夫。少し痛いけどな(笑)」


と禮漸は返した。


「ひどい火傷だね。」

「全治2ヶ月だって。吸うのも一苦労だよ、しばらく。」

「禁煙したら(笑)」

「禁煙しない(怒)」


蓮流とのそんなやり取りも交えながら、彼らはリビングで談笑。

そこへ風燕がやってくる・・・



「結局作っちまったな(笑)」

「中身どうするべ?」



6つのかぼちゃの中身をどうするか・・・


「裏ごししてスープにする?」

「一部クッキーにしていいですか?」


ということで、パンプキンスープとかぼちゃクッキーに決定。

明日の晩に作るので、一旦、かぼちゃを冷凍庫に移動させた。



「それよりさ・・・禮漸、無茶しすぎ(笑)そこまですることだったのか?」



風燕のその一言に、禮漸はくすっと笑いながらこう返した。



「そこまでしないと、火燐の我儘、止まんないだろ?俺らの気持ちを分かってもらうには、犠牲だって必要だと思ってな(笑)」



そういうと、禮漸は部屋へと戻っていった・・・。



(10・30 AM 6:40)


椿がリビングに入ると、甘い香りが立ち込めていた。キッチンに眼をやると、風燕が沸騰した牛乳に、かぼちゃをこしながら加えていた。



「パンプキンスープ。」

「朝食にと思ってな。」



風燕はそういうと、生クリームを少し足すなどして味付けをすると、小皿に少しスープを入れて椿に渡す。



「どうだ?」

「すごくおいしい!」



少し甘めの味付けだけど、あっさりしている。椿はその味に癒されて、体が軽くなっていく気がした・・・。



「じゃ、マグカップ6つ。それとそこの棚にワンプレート皿あるから。」



そういうと、風燕はコンロの火を止め、オーブンの扉を開ける。そこには、たくさんの食パンが綺麗に並べられていて、どれも綺麗なきつね色をしていた。



「冷蔵庫からレタスときゅうりとハムとトマト。あと、卵5つとケチャップも。氷水も用意して。」

「うん。」



そういいながら、パンを取り出し、まな板の上にかためて置いた。

椿は、言うとおりに食材を取り出すと、風燕はコンロで暖めていた小さなフライパンにバターを落とす。



「きゅうり切って、レタス適当にちぎって。それを氷水の中に入れて」

「了解。」



椿は言われたとおりに野菜の処理をしていく。その横で風燕がいくつも小さなオムレツを作っていく。



「ありがと。あと、俺やるわ。」

「いえいえ。お願いします。」



風燕は、パンにケチャップを塗り、ハム、レタス、きゅうり、トマト、ハムと挟むと、けっちゃぷを塗ったパンを置く。それの繰り返し。すべてを挟み終えると、それを一気に切り、一つずつにプラスチックのピン刺す。サンドイッチの完成である。


プレートの大きな場所にサンドイッチ2つと小さなオムレツ。中ぐらいの場所にサラダ。小さな丸い場所にマグカップに入ったパンプキンスープが座る。リビングのテーブルの上にそれが6つ。朝食の完成。


風燕は完成したプレートが並ぶテーブルを見ながら、ニコニコと笑う。


「椿。みんなを起こしてきてくんねぇか。」

「うん、わかった。」

「あっ、緑涼はたぶん畑だから。」

「わかった~♪」


椿は、うきうきしながらリビングを出る。みんなを起こしに・・・。



(10・30 AM7:38)


みんなが、うまいうまいとパンプキンスープをおかわりする為に、大なべにあったスープは、あっという間にみんなのおなかに。



「ね~ね~、椿ちゃん。」

「なに?」

「ハロウィンってどんなお祭りだべ?」


火燐が椿にそう疑問を投げかける。


「正確な由来とかはわからないけど、小さな子どもがお化けの格好をして、近くの家々を回ってお菓子をもらうんです。その時にお約束があって、その家の大人に“トリックオアトリート。お菓子をくれないといたずらするぞ!”って必ず言わないといけないみたいです。私はしてないです。」



「ふ~ん。じゃ、子供のお祭りなんだべか?」


「一種のイベントみたいですね。大人も一緒にお化けの格好をして、盛り上がったりすることがあるみたいです。」



「じゃ、俺達も・・・」



火燐は、ふと言葉を詰まらせる。また我儘を言っているのではないかと、感じてしまったからで・・・。



「火燐。」



緑涼は、さっと声をかけるが、火燐は下を向き、誰とも眼をあわせようとしない。



「我儘と提案は違うべ。今、お前が言ってるのは提案。みんなの意見を無視して、自分の言ってることを無理やり通そうとすることするのが我儘だべ。さ、言って。」



緑涼の言葉に火燐は顔を上げ、眼をきらきらさせながらこういった。



「ハロウィンパーティーしたいべや!」



それを聞いた緑涼は、にこにこしながら「やってみる?」とみんなに問いかける。

そこにいた全員が首を縦に振った。


「じゃ、各自で服は用意するように。椿は・・・おらの部屋から注文かけるべか。」

「私、お店にいたときに着ていた衣装、一緒に持って来ているからそれ着るよ。」

「じゃ、椿はそれで。じゃ、明日の晩でいいんだべな、風燕?」

「あぁ、明日の晩スタートだから。」


ということで明日、小さなハロウィンパーティーの開催が決まった。


椿は部屋に戻ると、クローゼットを開け、ハロウィン衣装を探す。


数分後


「見つけた!なつかしい!!」


中世ヨーロッパのメイド服のようなワンピースに、猫耳と魔法使いの帽子。

椿はこの衣装一式を見て、懐かしいと思った反面、いろいろ混ざっていると感じていた。



(10・31 AM9:25)


この時間から、次々に宅配便が届き始める。リビングにいた男性陣は、自分の注文したショップの名前を聞くとさっと飛び出して、そのまま部屋へ直行していく・・・。

その間に椿はキッチンでかぼちゃを使ったお菓子を作っていた。


2日前に風燕と相談して、一部を残してもらっていたかぼちゃの中身さらに2つに分ける。

一つは、小麦粉などと混ぜクッキーに、もう一つは卵や牛乳と混ぜたり、こしたりしてかぼちゃプリンに・・・。


「いいにおいだべな。」


そういいながら、椿と一緒にオーブンを覗く緑涼。ニコニコしながらクッキーが色づく様を眺めていた。


「あともう少しで焼けるけど、夜まで食べちゃだめですよ(笑)」

「そうか・・・駄目か(泣)」

「駄目です。火燐さんも駄目(怒)」

「きゅ~・・・(泣)」


椿の足元にくっついていた狐姿の火燐にもしっかり釘を刺した。緑涼も火燐もそろってしゅんとしながらキッチンから退散していった。



(10・31 PM5:19)


椿はお風呂から上がると、すぐさま部屋であの衣装に着替え始める。

そして、メイクを済ませると、次は髪のセット。

髪をアイロンでくるくる。ワックスやムース、スプレーを器用に使い、最後に猫耳と帽子を載せて髪のセット完了。


ガチャっとドアを開けると、隣の緑涼とタイミングが一緒になった。


「おぉ~!!魔法使いだべか?」

「うん♪緑涼さんは、フランケンシュタインですよね?」

「んだ(笑)」


めくりあげられた黒つなぎの袖から、つぎはぎのタトゥーがいくつも見え、顔も少しペイントで傷を作っていた。


「傷かすごく痛そうに見える。」

「“傷メイクの仕方”って説明書も一緒に入ってたべや。やってみようと思って(笑)」


すると後ろからいきなり・・・



「血、吸っていいか?」



声の方向に眼を向けると、ヴァンパイアの格好をした禮漸が、椿の首元で不気味な顔をしながら口をあけていた。



「・・・いやっ(恐)」

「禮漸、やりすぎだべや(怒)」

「ごめん。ついしてみたくなってな(笑)」



彼らがリビングに向っている時、椿は後ろからぎゅっと抱きしめられた。


「椿ちゃんみっけ!耳ついてる!かわいいべ!」

「あ・・・ありがとう・・・」

「火燐そこまで!椿ちゃん苦しそうだぞ。」


後ろからその光景を見ていた悪魔姿の風燕が火燐に注意。火燐はぱっと椿から手を離す。


「・・・ごめん(泣)」

「だ・・・だい・・・じょう・・・ぶ(苦)」


椿は壁にもたれながら火燐にそういった。


「火燐さん・・・ふわふわ度合い増してる(笑)」

「狼男だべ!」



「増毛だな、増毛(笑)」



風燕は火燐を見てそういうと・・・



「増毛じゃないべ!変身だべや(怒)」



と言い返していた。


椿が火燐の手元を見ると、しっかりあの時のジャックオランタンが・・・。


「椿ちゃんのかぼちゃちょうちんは?」

「リビングに置いてる。」

「お前、自分で持ってべか。後で貸して。」

「何するべか?」

「中にろうそく刺すから。」


緑涼は、火燐にそう説明する。火燐は少し不安そうな顔をしながらも了承した。


リビングに行くと、黒い頭巾をかぶり、黒いマントを身に着けた蓮流の姿があった。


「お前は何にしたべか?」


緑涼は蓮流にそう聞いた。


「ん?死神だよ。」


そういうと、後ろに隠していた大きな鎌の刃を思いっきり緑涼に向けた。緑涼はびっくりして後ろに倒れこむ。



「び・・・びっくりしたべ!」

「付属品の大鎌もセットになっている服にしたから付いてきた。何も切れないけどね(笑)」


蓮流のその言葉に「切らなくていい(呆)」と禮漸はぼそっとつぶやいていた。


その頃、椿はキッチンに移動し、お菓子の準備。その横に蓮流がやってきて、手際よく晩御飯の準備をしていく。



「椿ちゃん・・・。」



お菓子の準備をする椿の後ろにぴたっとくっついて火燐がそうつぶやいた。


「なんですか?」

「お菓子ほしい。」

「ご飯食べてから(笑)」


「・・・お菓子くれないと、いたずらす・・・」

「それは、今言うことじゃねぇべ(怒)」



火燐の言葉をさえぎるように、緑涼はそういうと火燐を担ぎ上げ、リビングへと帰っていった。



「火燐は懲りないね(笑)」



蓮流は、出来たてのミートパイを切り分けながらそう椿にいった。


「もう慣れました(笑)」

「それくらい、椿ちゃんが好きみたいだね(笑)だって、椿ちゃんが戻って来た時、火燐ずっと“かわいい、すごくタイプ!”って言ってたし(笑)」

「そんな事いってたんだ(笑)」

「そうそう(笑)」


ニコニコしながら談笑をしているうちに、晩御飯の準備もお菓子の準備も完成した。

今日の晩御飯は、ミートパイとクリームシチュー。サラダにご飯。他にもパーティーということで、から揚げやフライドポテトなどが並んだオードブルも。飲み物は赤ワイン。

それぞれの椅子の前には、紫のランチョンマットとグラス、フォーク、ナイフ、スプーン、箸がそろっていた。


(10・31 PM6:38)


緑涼は、みんなの席を回り、ジャックオランタンのろうそくに火をつけると、部屋の電気を消した。


ろうそくの明かりだけの薄暗い部屋。だけど、リビングにその光が広がり、幻想的な雰囲気になっていた。



「じゃ、パーティーを始めるべ!乾杯!」


「「「「「かんぱ~い!」」」」」


こうして、大人だけのハロウィンパーティーが始まった。



話をしながら、食べ進められる晩御飯。話が弾み、お酒のペースも上がっていく・・・。


椿は、ミートパイを切っていた。すると、パイとしてはありえない硬い感覚がナイフを通じて手に伝わってきた。その場所をフォークとナイフでかき分けると、そこから銀色のコインが出てきた・・・。



「は・・・蓮流さん・・・?」

「なした?」


「なんか・・・パイからコインが出てきたんですけど・・・」


すると、蓮流はにこっとしながらこういった。


「何かで見たんだけど、こういうパーティーの時に出すケーキとかパイの中に、コインを入れて置くんだって。それで、それをゲットした人は幸せになれるって言う話。やってみようと思って、やってみた(笑)」



「そうか・・・ん?」



緑涼も、パイから違和感を感じた。かじったパイの断面から銀色のコインが登場。

火燐のパイからも、禮漸のパイからも、風燕のパイからもコインが登場した。



「普通はパイ1つに対してコイン1枚らしいんだけど、俺的には、みんな幸せのほうがいいから人数分入れたよ。」



その言葉を聞いてみんな笑い出した。


「そりゃ、みんな幸せのほうがいいべな(笑)」

「んだ。これでみんな平等に幸せがくるってことだな(笑)」



(10・31 PM8:37)



「椿!」



緑涼が椿を呼ぶ。

椿が緑涼のほうを向くと・・・



「「「「「お菓子くれないといたずらするぞ!!!!!」」」」」



男性陣全員でお菓子を要求された。



小さな子どもではなく、リアルモンスターの皆さんからお菓子を要求されるという普通ではない状況であるが、椿は普通にキッチンに行き冷蔵庫からかぼちゃプリンを出して、スプーンと一緒にテーブルに置いていった。


「おいしそうだべ♪」


火燐はそういいながら、じっとかぼちゃプリンを見つめている。



「じゃ・・・」

「「「「「「いただきます!!!!!!」」」」」」



かぼちゃプリンは、ものの数分でみんなのおなかの中に入っていった。


すると、椿は再びキッチンに戻り、6つの袋に分けたかぼちゃクッキーもテーブルに置いていく・・・



「お持ち帰りで~す!お部屋で小腹が空いたときにでも(笑)」



といいながら。


こうして、ハロウィンパーティーは終了した。




(10・31 PM10:58)


いつでも寝られるような状態になった椿。しかし、まったく眠気が来ない状態。ネットのニュースを読み漁っていた時、訃報の記事を見つけた。


その時、椿の中で、ある悲しい現実が心の中に生まれてしまった・・・。




“緑涼達と自分の生きられる時間の違い”という現実に・・・




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