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椿、町に戻ります、一旦・・・。


(10・5 AM6:18)


この日は、緑涼さんと畑作業。たくさんの野菜を収穫していく。作業が一旦落ち着いた時、緑涼に昨日のメールのことを相談した。


「そっか・・・お父さんとたくさんのお兄さんか・・・お父さんって響きが気持ちいいべや(笑)でも、街か・・・大丈夫か一人で?」


「大丈夫。前に住んでた街だから。それより、オーナーが結婚することになって、お祝いに行きたいなって・・・。」


「行っておいで。でも心配だな。」

「心配しないで!」

「はいはい(笑)」


不安そうな顔で椿を見つめる緑涼。椿は、そんな緑涼の気持ちに気づきながらも、今度、街に出ることを決めていた。


(10・25 AM9:15)



「いってきま~す!!」


「は~い!」

「椿ちゃん俺も一緒に行きたいべや!」

「お土産買ってこいよ!」

「分かってるって!」


椿は、キャリーバックをコロコロさせながらバス停に向かい、そのままバスに乗り込んだ。



(10・25 AM10:28)


「久しぶりの空港だ~半年振りかな・・・。」


搭乗手続きを済ませ、飛行機に乗り込む。窓際の席で少しぼやける自分の顔と空港の景色が視線に入ってくる。


「お土産何がいいかな・・・。」


そんなことを思っている間に飛行機が離陸していった。



その頃・・・



「やっぱり心配だべ・・・。」

「なして・・・」

「だってさ・・・ここと違って、人が多くて空気も汚そうな街だし・・・椿に何かあったらって思うと・・・。」

「車で行ける距離なの、そこ?」

「椿は、飛行機乗るって行ってたべ。」


「じゃ、俺達がそこに行くのは・・・。」


椿の事が心配で仕方がない緑涼達。どうしたら街に行くことができるかまで模索し始めた。



(10・25 PM12:48)


「やっとついた。懐かしい!!」



たくさんの人


様々な言語


広いフロア



ここに戻ってくるとは思ってなかった椿の目に、この空港の景色は懐かしさと新鮮さが混じっていた。




その頃・・・



“まもなく、当機は○○空港に着陸いたします。シートベルトを・・・”



「まもなくだな・・・車も借りなきゃ。」



緑涼も街に向かっていた・・・。

たくさんの荷物を持って・・・。



(10・25 PM2:29)



「やっとついた。」



椿の目の前には、小さなオープンカフェの店。

名前は“Café de Cocoa”小さな子猫がお店のマークのカフェだった。



カランカラン・・・



「いらっしゃ・・・椿ちゃん!久しぶり!」


そこには、元気なオーナー美月と常連客で、ご主人に昇格しためがねさんが・・・。


「お久しぶりです。ご結婚おめでとうございます!」


そういうと、椿は紙袋を美月に渡す。


「ありがとう。綺麗な花!どしたの?」

「地元の空港近くでブリザードフラワーのお店があって。そこで作ってもらったんです。」

「へ~!!すごい綺麗。ねぇねぇ!これどこ飾る?」


そういいながら美月はめがねさんにそれを見せる二人で、カウンターに飾るのかレジに飾るのか相談し始めた。

話し合いの結果、カウンターに決定したようだ。


少しして、椿と美月はカウンターに座り、めがねさんが入れるコーヒーを飲みながら、約半年間の互いのすごした時間を話し始める。


「父の葬儀の時は、いろいろありがとうございました。」

「ううん。私達もありがとうって言わなきゃいけないなって思ってたの。」

「僕達は、不謹慎かもしれないけど・・・春河さんのお父さんの葬儀がきっかけだったんだ。」

「うん。椿ちゃんと一緒にお葬式の準備してて、彼のいろいろなことに気づいたんだよね。」

「僕も。そこから発展したって言うか・・・なんていうか・・・。」


「そうだったんだ。じゃ、私と父がキューピットになっちゃったんですね(笑)」

「そうみたいね(笑)椿ちゃん、今は親戚の方と住んでるんでしょ?どんな人?」


「父方の親戚なんですけど、父が亡くなって実家戻ったらもういて(笑)今日から自分が椿のお父さんだって・・・すごく優しい人です。心配性なところもあるんですが・・・。」


「実家にいたって。」


「父と一緒に住んでたそうです。今日、街に出るって言ったらすごく心配してて、大丈夫かとか、椿一人で行かせるの不安だとか・・・(笑)」


「本当のお父さんみたい(笑)ほかの親戚の方もそんな感じ?」


「はい(笑)もう、みんな優しくて、面白くって、今、みんなといるのがすごく楽しいんです。」

「そうなんだ。実は心配してたんだよ。ここに来た時みたいに、暗い感じに戻ってないか。でも、大丈夫みたいね。」


「ありがとうございます。」


「私ね、椿ちゃんに黙ってたことがあるの。」


そういうと、美月はコーヒーに口をつけ、一呼吸整えていた。


「なんですか?」



「椿ちゃんがここに来たすぐの時、内緒でお父さんに連絡とってたの。」



「父にですか?」


「うん。ここに入って1週間ぐらいかな。椿ちゃんが帰った後、お父さん来られたの、ここに。もちろん、失礼だったけど身元の確認もさせてもらってからお話はしたよ。」



「来てたんだ・・・。」



椿はかなり動揺していた。言葉が出ないくらいに・・・。



「かなり心配してたよ。でも、最後は“娘をよろしくお願いします”って。連絡先もその時聞いてたの。だから、1週間単位でかな、メールで連絡してって感じ。」


「知らなかった・・・。だから、あの時、親父が普通にここに来たんだ。」


「びっくりしたでしょ(笑)」

「はい・・・ご迷惑をおかけしてすみません。」


「これは迷惑じゃない。親が子供を心配するのは当たり前のことだし、オーナーとして従業員を責任持って預かってるんだから、連絡しないといけない場合だってあるしね(笑)」


そういって、美月は椿の背中をぽんと叩いた。そして、ドアにかかった子猫のモチーフを

OpenからCloseに換えていた。



「できましたよ、お二人さん。」



めがねさんはそう言うと、カウンター越しにティラミスを出してきた。


「すごーい!!おいしそう。」

「彼ね。パティシエなんだって。」

「はい(笑)まだあの時は成りたてのヒヨコだったんですけどね。」

「そうだったんですか。」

「結婚を機にここに移籍ってことで(笑)」

「ある意味、独立だけどね(笑)」

「本当ですね(笑)」


二人が本当にラブラブなのを目の当たりにして、おなかいっぱいの気分になっていた椿。でも、スイーツとなると別、あっという間に完食してしまった。


「すごくおいしかったです。」

「よかった。僕嬉しいな、ここまで喜んでもらえると。」


そんな話をして入る時だった。



カランカラン・・・


「あの・・・」

「すいません。今日はもう・・・」


椿はその声の方向を思わず2度見。

そこには、スーツ姿の緑涼が紙袋を持って立っていたのだ。


「み・・・緑涼さん・・・?」

「椿、やっぱり心配でつい・・・。」

「ご親戚の方・・・?」



「「は、はい(笑)」」


「む・・・娘がお世話になってます。」



(10・25 PM4:10)


緑涼も加わってさらに話は進む。ちなみに緑涼が持ってきていた紙袋の中身は、たくさんの野菜だった・・・。


「うちで育ててまして(笑)」


といいながらオーナーに渡してた。


「じゃ、そろそろ帰ります。」

「あっ!ちょっと待って。」


めがねさんが持ってきたのは、少し大きめの紙袋。中には手作りの焼き菓子がたくさん。


「おうちに帰ったらみんなで食べてね。新作なんだ。」

「ありがとうございます。」

「すいません。よかったね、椿。」

「うん♪」


「緑涼さん。」

「はい。」

「これからも、椿ちゃんをよろしくお願いします。」


そういうと、オーナーはぺこっと頭を下げた。すると


「こちらこそ、よろしくお願いします。」


と緑涼も頭を下げた。


それから椿達は店を出た。


「緑涼さん。本当にお父さんみたい(笑)」

「お父さんだべ、おらは(怒)」

「ごめんなさい。でも、どうやって?」

「ちゃんと飛行機で来たべ。車も借りたし。」

「ホテル、連絡しなくちゃ。」



モソモソ・・・



「緑涼さん・・・」

「なした?」

「なんか・・・荷物・・・おかしいですよ?」

「はい?」


「なんか・・・動いた(泣)」



ギクッ・・・



緑涼がそれを聞いて思わず車を急停車。



「まさか・・・」

「そんなことないです・・・よね?」



緑涼も椿も不安になりながら、バックのファスナーをゆっくり開けていく・・・。


「うん?なんもいないべ?」

「本当ですか?おかしいな?」


一応、念のためにバックの中のものを出してみると・・・



プニ・・・



「きゅ!」



「なにか・・・います(泣)」

「そのまま動くなよ・・・」



ギュウ!

スポッ!



「きゅ~(泣)」



「か・・・火燐さん!」

「お前・・・何してるべ!」



ポン!



「会いたかったんだもん、緑涼だけずるいべ(泣)」



まさかの方法で・・・

火燐もやってきていた・・・。



「椿・・・ホテルとってるよな?」

「はい。」

「ここ?」


椿はビジネスホテルを取っていたが、緑涼は某有名ホテルを予約していた。


「私、一人で泊まるのに、ここを予約する勇気無いです(泣)」

「じゃ、こっちの人数、変更してもらうから椿、キャンセルして。」

「了解です・・・。」

「なしたべ?」

「お前は、早く人に変身しなさい(怒)」


ということで、小旅行は3人(?)になりました・・・。



(10・25 PM5:48)


「まずは、ここで・・・。」

「火燐の服、買うべ。」

「ふわ~!すごい人だべ(驚)」


アウトレットモールに突入。いろいろなお店で試着して、いくつかの店で服を数点と下着等いろいろを購入。火燐は買った服をトイレで着替えて登場。


いつもと違い、かなり大人っぽく決まってしまった。


「椿ちゃん!緑涼と同じ服みたいだべ(泣)」

「同じじゃねぇべや、少し似てるけど・・・(笑)」

「大人な男って感じなっちゃいましたね(笑)」

「本当に?でも・・・なんか身体がガチガチだべ(泣)」

「カジュアルな服も見たほうがいいべな。」

「みんなにも何か買って帰ります?」

「う~ん・・・そうしよっか。」


「その前に・・・おなかすいたべ・・・。」


「9時チェックインで予約してるから、ちょっとご飯食べてるまでまだ時間あるべな。」


ということで、買い物。

服に食器にお菓子に・・・とにかくいろいろ揃えていった。


(10・25 PM7:08)


アウトレットから出て、晩御飯。

個室の和風レストランで食事となった。



「椿ちゃん、こんなところに10年も住んでたんだべな。」

「うん。」

「すごいべ。俺には無理だべ。」

「そりゃ、無理だべや、お前には。」



そんな話をしながら、みんなでいろいろ頼んで食べていく。


「まさか、お父さんがお店に来てたなんて知らなくって・・・びっくりした。」

「それだけ、心配だったんだべ、正嗣も。」

「でも、どうやって調べたんだろう?」

「そこは、正嗣だけの秘密にしてあげようべ。」

「なして?」

「なんとなく。」


そんな会話をしながら食事が進んでいく・・・。


(10・25 PM9:05)


緑涼がホテルのチェックインをしている間、椿と火燐はロビーで、買ったお菓子を食べながら談笑。


「本当、お父さんみたい緑涼さん。」

「いつもと違う格好だから、俺からしたら違和感あるべや。」

「そうだね。お店に来た時は本当びっくりしたんだから。どうして知ってるのって。」

「本当だべ。俺もそれ知りたいけど・・・。」


「おまたせ。こっちだって。」


ホテルのスタッフの後ろを付いていく。エレベーターに乗ると、どんどん上層階に向っていくのがわかった。


「こちらのお部屋になります。」


ホテルの30階の部屋。スタッフが扉を開けると街の夜景が目に飛び込んできた。


「ごゆっくりお寛ぎください。」


「わ~!!すごい景色だべ!!」

「み・・・緑涼さん・・・」

「なした?」

「ここって・・・」


「スーベニアルームっていってたべ。」

「・・・」



もう固まるしかない。椿は、誰もが知ってる有名ホテルのスーベニアルーム(スイートルームの少し手前クラス)に入ってる。ここに宿泊する。そう思うだけで頭が真っ白・・・。


「す・・・すごく高くないですか、この部屋。」

「人数増やすから部屋変更って言ったら・・・ここになったべ(笑)」

「ベットがふかふかだべ!!ひゃっほ~い!!」

「と・・・とにかく、禮漸達に電話してくるべ!」


そういって電話のほうへと向う。


「椿ちゃん!!こんなベット初めてだべや!!」


グイッ!


椿は、火燐に手を引っ張られ、その勢いでベットの上にぽんと座った。


「きゃ!本当だ!ふかふかしてる(笑)」

「んだ~遊べるべや!」


騒いでいると・・・


「お前達、暴れんでねぇ!!」


「「ごめんなさい・・・」」


そろって怒られた・・・。



(10・25 PM9:10)



チン・・・



「禮漸、緑涼さん?」


蓮流は、受話器を置いた禮漸にそう聞いてみた。



「うん・・・。火燐、発見したって・・・。」



禮漸の顔は、疲れの中に怒りの表情が見え隠れしていた。


「マジで?」


風燕は、自室のドアからちょっと顔を出して彼らを伺う。



「んだ・・・緑涼さんのバックの中に入ってたらしい(怒)」


「「え?・・・ハハハハハハハハ(笑)」」


「あ~!!もうイライラしてきた!お前ら、今日は付きあえ!」



ということで、禮漸、蓮流、風燕は男だけのオール飲み会を開催することにした。




(10・25 PM11:38)



「うにゃ・・・椿ちゃん・・・」

「う~ん・・・」


緑涼は、風呂から上がった後、眠ってる椿と火燐の顔をただ見つめていた。



「正嗣・・・おら、ちゃんと父親やれてるかな。心配しすぎなのかな・・・。」



そうつぶやきながら、ソファーに戻ろうとした時・・・



「う~ん・・・ありがとう、緑涼さん・・・」

「うん?」


「お父さん・・・になって・・・くれて・・・」


緑涼はその言葉を聞いただけで号泣。思わず椿のベットに座ってもう一度聞けないか耳を傾けようとしたが・・・



「緑涼・・・じゃま・・・椿ちゃんと・・・一緒にいれない・・・べ・・・」



火燐のその言葉で思わず涙が引っ込み、怒りがこみ上げてきた。



「ま、それなりに父親をやれてるってことでいいんだべな・・・正嗣。」



そういうと、ソファーに戻って一人晩酌を始めてた。



(10・26 AM7:00)



「う~ん・・・。」

「椿ちゃん・・・起きるべや!」

「重い・・・って、火燐さん!」

「やっと起きたべ!」



椿の体の上に火燐が乗っかっていた・・・。



「椿~もうすぐチェックアウトするから、早く着替えなさい。」

「そんな時間なんだ・・・。」



ソファーやその周りのごみを片付けていく緑涼。その光景を椿は、火燐越しに見てもう朝なんだと気づかされる。


「俺も着替えてつだ・・・」

「火燐は手伝わなくていいべや!早く散らかした服片付けろ!!」

「ふぁ~い(泣)」


火燐の無謀な挑戦をかき消すように、緑涼の大きな声が部屋中に響く。

それで目が覚めた椿は急いで着替え、メイクも済ませていく。



(10・26 AM8:25)


レストランのバイキングで食事を済ませ、チェックアウト。今日の緑涼さんのファッションは・・・休日のお父さん風スタイル。火燐は、昨日とは打って変わって、かなりカジュアルなスタイル。

チェックアウトが終わると、ホテルのロビーから、禮漸達に電話。

椿と火燐は、緑涼にくっついて電話が終わるのを待っていた。



ガチャ・・・



「やっぱり、緑涼さんはお父さんみたいです。」

「お父さんみたいじゃなくてお父さんだべ(怒)」

「うん♪」


椿は、火燐とアイコンタクトを取ると、二人同時にこういった。


「「おとうさん、今日どこ行くの?」」


緑涼の顔に笑みがこぼれる。嬉しいあまり、椿と火燐を抱きしめると・・・


「今日は夕方までドライブだ!」


と大きい声で回答。あまりの大きい声にその場にいたほかの客もびっくり・・・。


「「やった~♪」」


ということでドライブに決定。

子どものようにはしゃぐ椿と火燐を見て、緑涼の中で昨晩の不安が完全に消えていった。



(10・26 AM8:32)



チン・・・



「緑涼達、夕方6時発の飛行機で帰ってくるって。」



風燕は、廊下から禮漸と蓮流にそう伝える。



「そっか、空港まで迎えに行くか・・・。」



リビングでぐったりしている禮漸。

昨日の酒の飲み方が悪かったのか、若干顔色が優れない。


「たぶん荷物が多くなってる可能性が高いから・・・」


蓮流が、風燕にそういうと・・・


「俺・・・車だしてくるわ。」


と言い残し、おなじみのキャンピングカーを出しに出かけていった。



(10・26 AM9:30)


その頃、椿達は車でドライブ中。

様々なお店が並ぶ華やかな場所から、少しタイムスリップしたような場所までとにかくいろいろな景色が視界に飛び込んでくる。


「これおいしそう♪」

「俺、これほしい。」

「こら(怒)さっきも食べたべや、それ。」


緑涼には、椿と火燐は小さな子どものように見えていた。それが嬉しくて仕方が無いところもあるのだが・・・


信号で車を止めた時、椿と火燐の視界にある一軒の店が目に入った。


「なした?お前達?」


「「あのお店・・・気になる!!」」



「ふぇ~(焦)」



ということで、あの店に行くために緑涼は青信号と同時に進行方向を転換することにした。



数分後


「ここって・・・」

「古本屋さんだべ・・・。」

「んだな・・・(疲)」


そこは、古本とアンティークの雑貨を置いているお店だった。


「あっこの本・・・」

「なした、火燐?」


火燐は、本棚の一番上の本を必死に手を伸ばして取っていた。


「風燕が欲しがってた本だべ。続きが無くって困ってるって前いってたべや。」

「ほ~・・・」


緑涼もその革張りの本を手に取ると、店の家主に本のシリーズすべてを出してもらっていた。


「火燐、何巻から無いって言ってた?」

「たしか・・・6巻からあと全部。」

「じゃ、7巻から後全部で。」


ということで、本の大人買い。

紐でくくられた本の束を持って再び車に乗り込んだ。



(10・26 PM2:25)



「もうそんだけ食べたらお昼ご飯は要らないべ。」

「うん(笑)」

「おなかいっぱいだべ・・・。」



たべ歩きをたくさんしたのでお昼はパス。

空港までのドライブのはずが、いつの間にか大量の買い物をしている。

火燐はいつの間にか後部座席で寝てしまっている。

緑涼は、近くの駐車場に車を止め、少し休憩をとることにした。



「やっぱり、街はすごい・・・いろんなものに手が伸びてしまう・・・。」

「うん。でも、この街でこんなにはじけたの初めて。」

「なして?ずっと住んでたのに?」


「その時は、お店と家の往復生活だったから・・・。」


少し涙ぐんでいた椿の眼を見て、緑涼はポンッと頭の上にてを置いた。


「ごめん。いやなこと思い出させたな・・・。でも、今はおら達がいる。正嗣だって美佐子さんだって俺達の事、きっと見てくれてる。だから一人じゃねぇべや。」


「ありがとう・・・。」


「それにしても・・・はりこみすぎたべな・・・(笑)」


あまりにも多くなった荷物。

どうやって家に持って帰るかを椿と緑涼で話し始める。



「ふぁ~・・・」

「おはよう。火燐。」

「荷物まとめるべ。手伝え。」

「ふぁ~い。」


車の中で、作業開始。

まず、椿が服をまとめていく。誰がどの服かわかるように真空パックに小分け。それからキャリーバックに全部つめた。


緑涼は、トランクにつめたお土産のうち、キャリーバックにつめれるものは椿に渡して、本は服を買ったときの大きな紙袋に詰め直していた。火燐は、お菓子などの食品類を一つの袋にまとめていく。



数十分後


「なんとか・・・まとまったべ。」

「疲れたべや・・・・」

「これで持って帰りやすくなったね(笑)」


たくさんあった紙袋を、何とかして6つぐらいにまとまった。


「じゃ、空港まで突っ走るべ!!」


「「は~い!」」


空港に向けて再び車を発進させた。


(10・26 PM4:48)


「そろそろ迎えに行くか。」


むかつき止めを飲んで、少し体調がよくなった禮漸がそうつぶやく


「んだ・・・早く火燐の顔が見たい(怒)」


かなり怒っている風燕がそのままのテンションで車に乗り込んだ。



「空港で乱闘騒ぎとか、起こさないでくださいね・・・。」



家から迎えの車が出発。蓮流が運転をし、禮漸と風燕は火燐の話で持ちきりだった。


その頃、緑涼達は空港に向けてドライブ再開。全部の荷物をトランクに詰めたので後部座席が広々としていた。


「ごろごろ出来るべ~!!」

「火燐、シートベルトしっかり着けとかねぇと駄目だべや!」

「え~いやだべ!!これきついべや(泣)」

「空港まで我慢しなさい!」

「は~い・・・。」



数分後・・・


「火燐さん、また寝ちゃいましたね(笑)」

「街に出てきたことが無かったから、きっとはしゃぎすぎたんだべな。」

「子どもみたいですね(笑)」

「本当だべな(笑)」


火燐は子どものように、すやすやと寝息を立てながら爆睡。その光景を緑涼も椿も鏡越しに眺め、癒されるような気持ちになっていた。



(10・26 PM5:18)


空港内でレンタカーを返し、搭乗手続きに。

椿は別で飛行機のチケットを取っていたので、緑涼達と別で手続きをした。



「席どこですか?」

「え~とね・・・」



お互いに席番を見てびっくり。

窓際に椿、廊下側に緑涼、その間に火燐。見事に隣同士・・・。


「やった~♪俺、椿ちゃんの隣♪」

「なんか・・・奇跡ですね。」

「んだ。びっくりだべ。」


唖然とする椿と緑涼とは別に、火燐は椿の隣の席になったことで喜びを爆発。

思わず椿をぎゅっと抱きしめると、上から緑涼の拳が降ってきた。



「やめい(怒)」

「やだべ(怒)」


「け・・・喧嘩はやめてください(焦)」


椿が緑涼と火燐を引き離す。すると、火燐は手をぎゅっと握ってきた。



「か・・・」



緑涼は怒ろうとしたが、口に出すのはやめた。




(10・26 PM5:48)


飛行機の席に着いても、手を離さない火燐。少し困った椿は、緑涼のほうを向いた。

しかし、緑涼はにこっと笑顔を返しただけだった。


その頃、禮漸達も空港に到着。近くの駐車場で車を止めると、空港内のカフェでコーヒーを飲みながら、帰りを待っていた。


「しっかし、相変わらず人だらけだな、ここ。」

「そりゃそうだよ、風燕。いろいろな国の人達が、大勢利用してる場所だし。」


蓮流と風燕がそんな会話をしている横で不敵な笑顔を浮かべながら禮漸がこうつぶやく・・・。



「それより、火燐にどうお仕置きしようかな・・・(笑)」



その光景に、蓮流と風燕は恐怖を感じていた・・・。




(10・26 PM6:40)


飛行機は離陸し、暗くなった上空をフライトしている。

火燐は椿の手を握ったまま、うとうとしていた。

そのすぐ後、椿の肩にちょこんと頭を置いて寝てしまった。


「手・・・痛いです(泣)」

「ごめんな。でも、このごろ火燐に強く当たりすぎてるかもって思ったら、怒れなかったべ(笑)」


緑涼は、そういいながらキャビンアテンダントから3人分の飲み物をもらい、椿と火燐のテーブルの前に置いた。

そして、静かに火燐の手を椿から離した。椿の手は真っ赤になっている。開放された椿は、ジュースでその手を冷やした。


「火燐だって、椿といっぱい遊びたいんだなって・・・今日一日、一緒に街で買い物して分かった気がするべや。」


そういいながら、緑涼はジュースに口をつける。


「そうなん・・・ですかね(笑)」

「椿が戻ってきてすぐのことがあったから・・・おらの中でセーブしないといけないところを火燐にぶつけすぎてたのかもって。でも、椿の気持ちも考えないとな、ごめんな(笑)」


そういうと、緑涼がにこっと笑った。



「ふにゃ・・・う~ぁ~(怒)」

「火燐さん・・・?」

「椿ちゃんは渡さないべや(怒)」

「火燐・・・おらは、椿をとって食おうとか、そんなことしねぇべや(笑)」

「そうですよ(笑)」

「何で笑うべや(怒)」

「はい!」


そういうと、椿は火燐の口にお菓子を放り込んだ。



もぐもぐ・・・



「おいしいべや、椿ちゃん、もう一回(笑)」

「はいはい(笑)」

「おまえな~・・・(呆)」


椿の迅速な対応と緑涼の大人らしい対応で、何とか事なきを得た・・・



(10・26 PM8:15)


「やっとついたべな~!!」

「空気がおいしいべ(笑)」

「そ・・・そうですね(笑)」


相変わらず、椿にべったりの火燐。あきれた顔でそんな彼らを見つめる緑涼。


「あっ!いたいた!緑涼さ~ん!」


そんな彼らの視線の先には、禮漸と風燕と蓮流・・・。



「「「火燐・・・(怒)」」」

「ご・・・ごめんなさい(泣)」



「必死で探したんだぞ、俺ら(怒)」

「いなくなってどんなに心配したか・・・(怒)」



火燐は、禮漸と風燕からあってすぐに、思いっきりお灸をすえられた。



「予想してたとおりだべ(笑)」

「予想?」


「おらが怒らなくても、後はこうなるってこと(笑)」


そういいながら、緑涼はにこやかな顔でその光景を見つめていた。



みんなで一つずつ荷物の入った袋を持ち、駐車場へ行く。

車に乗り込むと、みんなでお土産を渡していく。そしてみんなに街でのことを話す。

このお話がいいお土産だったらしく、みんなゲラゲラ笑いおなかを壊す。

そして、みんなでめがねさんの焼き菓子を食べる。


緑涼が、運転席に行き蓮流の口に焼き菓子を放り込むと


「これうまいっすよ!!」

「んだ♪おらもびっくりした!椿の恩師のご主人特製焼き菓子だべ♪パティシエとか言う仕事をしているんだとか・・・。」

「パティシエっすか!お菓子を作るプロじゃないですか!」

「そうなんだ・・・おら知らなかったべ(驚)」



車内では・・・



「お前、バックの中にはいってたって・・・よく引っかからなかったな、持ち物検査。」

「なんだべそれ?」

「荷物の中に、危険なものがないか空港の職員さんがチェックするんです。」

「たぶん、ぬいぐるみとかと勘違いされたんだな(笑)」


「俺は、それを電話で聞いてあきれたよ(怒)」



そういうと、禮漸を捕まえるとお尻を思いっきり叩き始めた!



「痛い!痛いべや!!」

「お尻・・・ペンペンされてる(笑)」

「ケツバットよりはましだべ。」

「ケツバット?」


「正嗣が怒った時、大体、ケツバットだったな~(笑)」


「ははは・・・(苦笑)」


そんな感じで椿と緑涼、火燐の小旅行は家に着いて終了となった・・・。



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