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泣くでねぇ・・・。


(10・4 PM4:30)


山から帰ってきて、休憩→収穫物の仕分け→風呂と経てこれから晩御飯作り。

椿は、火燐と一緒に栗ご飯を作っていく・・・。


火燐は手馴れた手つきで栗の皮を処理していく。

その横で椿が、お米を洗っていく。


栗とお米を自ら上げると、大きな炊飯器にお米と火燐さんが前もって作っておいたお出し、栗、黒ゴマを入れて炊飯器のふたを閉じる。



「こんな感じだべ♪」



そういうと、椿をぎゅっと抱きしめる。



「また椿ちゃんのお菓子食べたいべや♪」

「頼み方が違うんじゃないか?火燐・・・(怒)」



そういうと、緑涼が火燐を強引に引き離す。



「よいしょ。」



緑涼が洗い場に数本の大根を置く。



「畑でいい感じに育ってたから採ってきたべや。椿、大きいおなべ出して。」



椿は言われたとおりに鍋を出すと、緑涼は大根を輪切りにし皮をむいていく・・・。



「何作るんですか?」

「うん?大根と油揚げの煮物。」



そういうと、大根の中心に十字に切れ目を入れていき、お鍋に敷き詰めていく。

その上に細く切った油揚げを入れ、しょうゆと砂糖とみりんとお水を入れて鍋にふたをして火をつける。



「後は待つだけっと。」


「こっちは甘露煮が出来きました。」



そういうと、禮漸がたくさんの栗が詰まった大きな瓶を緑涼に渡す。



「味噌汁の仕込み完了。」



蓮流と風燕がリビングのテーブルの上で味噌汁を炊いていた。



「よし、後は・・・椿に任せるか!」

「え?」

「椿ちゃんのお菓子食べたいべや♪」



ということで、椿が食後のデザートを一人で作る機会がやってきた・・・。



(10・4 PM5:25)


椿はサツマイモのプリンと、蒸し饅頭の栗とサツマイモを作っていく。

蒸かしたサツマイモや皮をむいた栗を、それぞれの生地を混ぜ込んでいく・・・。



「え~と・・・蒸し器2段使おう。」



上の段にプリンを並べ、下の段に蒸し饅頭の生地を流し込む。



「これでよしっと♪」

「じゃ、食べてる間に完成だべな♪」



椿の後ろには緑涼と風燕が立っていた。



「お前が好き嫌いを聞きまくってのは、これの為か?」



「ま・・・そう。」


「ふ~ん。」


「おら、すごい楽しみだ♪」

「俺は・・・なんでもない。」

「何だべそれ?」



風燕はそのままリビングに・・・。



「この前の饅頭もおいしかったし、期待しとるべや、椿♪」



緑涼は、床下を開けて、日本酒のビンを取り出すと、リビングにそのビンを持っていった。



(10・4 PM6:18)



夕食スタート

テーブルの真ん中には蓮流と風燕が作ったたっぷりキノコのお味噌汁。各椅子の前には、椿と火燐が作った栗ご飯に緑涼が作った煮物。それに夏につけておいた糠漬や酒、山菜のおひたしなど今日収穫した山の幸がたくさん並んでいる。



「では・・・。」


「「「「「「いただきま~す!!!!!!!!!」」」」」」



そういうと、豪華な夕食が始まった。


「おいしい!!こんなのはじめて!」

「椿ちゃんと一緒に作った栗ご飯、おいしいべ♪」

「秋にしか食べられない食材を、採れたてで食べれる・・・贅沢!」

「やっぱり秋はこうでなくっちゃな♪」

「んだ♪食欲の秋って正嗣も言ってべな。」

「お父さんは、秋は、いろいろなことが出来るいい時期っていってたよ。お父さんはこの時期食べ過ぎて、健康診断に引っかかってたらしいけど・・・。」


そんな笑い話をしながら夕食が進んでいく。



数十分後・・・



「「「「「「ごちそうさま!!」」」」」」



あっという間に目の前のご飯は空っぽ。

お酒も入っているので、みんな少し顔が赤い・・・。



「椿ちゃん、お菓子、出来てるべか?」

「出来てますよ♪」



そういって、椿はキッチンに行き、大きなお皿に蒸し饅頭をどっさり積んできた。

栗とサツマイモの蒸し饅頭。大きな栗の実と小さいサツマイモの実。

椿も2つの食材を混ぜるのは初めてだったので、少し心配でもあった。



「すごくおいしいべ。椿ちゃん(笑)」



火燐がそういいながら椿の頬に自分の顔をくっつける。



「ほら、笑って・・・こっちが不安になるべや(笑)」

「おめぇがそうしていることが、こっちの不安だべや(怒)」



当然のごとく、緑涼が引き離す。



「大丈夫か?泣いてるけど・・・」



蓮流が椿の異変に気づき、顔を覗き込む。



「ずっと不安だったんじゃねぇ?」

「なしてだ?」


「椿は・・・俺達に料理を作ることがあってもお菓子はなかったじゃん・・・。」



風燕は、下を向きながら照れくさそうに緑涼の質問に答える。

それを聞いた緑涼は、蓮流の横で気が抜けたようにぐったりした椿の頭を力強く掴むとそのままの力でなでる。



「そんなに心配しなくても、椿の作る料理はどれもうまいべや。」

「本当に?」

「んだ。椿の気持ちがこもった物は、どれもあったかかくておいしいから。だから・・・」


そういうと、頭から手を離す。椿が顔を緑涼のほうに向けた瞬間、緑涼は椿の両方の頬を思いっきり引っ張った。



「泣くでねぇ(怒)」



「痛い・・・(泣)」


「何で怒ってるの(焦)」

「不安にさせたから(怒)」


そして、ぱっと頬から手を離すとすぐさま椿を抱きしめた。



「引っ張ってごめんな。で、もうそんな顔するな。わかった?」


「俺もしたい!」


「はいはい(呆)」



ガバッ・・・



「なんで!俺まで抱きしめられるべや(怒)」

「こうじゃないべか?」

「こうじゃないべや(怒)」

「はいはい(怒)」



(10・4 PM23:07)


椿は部屋でメールをチェックしていた。



「あっ・・・」



見覚えのあるアドレス。それは、椿が働いていたカフェのオーナーからのメールだった。



“椿ちゃん、元気してる?お店やめて、もう何ヶ月たつかな・・・。始めここに来た時のことがつい最近のような感じなんだけどね・・・。あっ、実は報告があってメールしました。私、結婚することになったんです。椿ちゃんもよく知ってるこの人です。今の所、結婚式の予定はなし。なんとなくこのままでいっかって事になっちゃったから。これからは2人でお店を切り盛りすることになったよ。またいつでも遊びに来てね。”



一緒に添付されてきた写真を見て椿は驚いた。オーナーの相手は、いつも店のカウンターで一人、コーヒーを飲みにきていた客。通称めがねさんだった。



「うそでしょう・・・まさか・・・めがねさんと出来てたなんて・・・。恋愛ってわかんない。」



そういいながら、オーナーにメールの返信を出そうとした。


“美月さん、お久しぶりです。店やめてから連絡しなくてごめんなさい。今は、実家で・・・”



「実家で・・・緑涼さん達の事どう書こう・・・オーナーは家族構成知ってるし・・・。」



“今は、実家で親戚と一緒に住んでます。親戚といっても、お父さんとお兄さんがいっぱい出来て、家族なってます。それより、ご結婚おめでとうございます。まさかお相手がめがねさんとは思わなかったです。いつからお付き合いしてたんですか?とにかく今はびっくりしてます。”



「お店・・・また行かなきゃ。」



“近いうちにまたお店に顔出しに伺います。その時にまた近況報告します。お元気で 春河椿”



メールを送信した後、椿はカレンダーをじっと見た。



「・・・お店行こうかな・・・。」



そういって部屋の電気を消した。



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