お盆の季節です・・・。
プ~プ~プ~♪
“間もなく35番線に臨時列車が参ります・・・”
駅は、お盆の帰省客でごったがえしていた。
正嗣と美佐子は、そんな駅の中を早歩きで突き進む。
「待って、待って正嗣さん!」
「ごめん!大丈夫?」
「大丈夫。」
「じゃ、乗ろうか。」
「うん!」
35番線ホーム
臨時列車に乗り込んだ彼ら。
向う先はもちろん決まっている・・・。
(8・12 PM11:35)
コンコン!
「はい。」
「入っていいべか?」
「うん。」
カサカサ・・・
スッ・・・
「こんな時間にどしたの、緑涼さん?」
「うん?さっき冷蔵庫開けた?」
「開けてないよ。」
「ならいいんだべが・・・」
「何かあったんですか?」
「あぁ・・・。実はな、お盆用に飾る野菜が無くなってたんだ。だれか使ったのかなって思って・・・。」
「そうだったんですか。」
「じゃ、他当たって見るべ。」
「はーい。」
ガチャ・・・
ホッ・・・
「火燐さん・・・いるんですよね?」
ギクッ・・・
モソモソ・・・
椿はゆっくり足音を立てないようにベットに向かう。
そして、ベットに着くやいなやブランケットをさっとめくった。
「いた!」
そこには、狐姿の火燐がちょこんと丸まっていた。
驚いた顔だけこちらに向けて・・・。
ポン!
ガシッ!
ギュッ!
バサッ…
火燐はすぐさま人の姿に戻ると、椿の手を引っ張り抱きしめると、隠れるようにブランケットを自分たちの上にかけた。
「どうしてバレたべ・・・。」
「どうしてこんなことするんですか?それに、口のまわり汚れてますよ。」
「腹へって・・・」
グ~・・・
「まだ空いてるんですね(笑)」
「・・・うん(泣)」
お火燐のおなかの音が空腹を知らせる。
そんなときだった。
バタッ!
ドンドン・・・
バサッ!
視界が明るくなった。
椿と火燐の目線の先には、怒った顔をした緑涼が仁王立ち・・・。
「おめぇは…(怒)」
ポン!
タタタタ・・・
「助けて~!」
「またねぇか!火燐!」
火燐は、また狐の姿に戻るとすばやい動きで部屋から出て行った。
その後ろを緑涼が追いかける・・・。
いつもの光景。
椿は笑いながらその光景を見つめていた。
「緑涼さんには、お見通しって訳か・・・」
(8・13 AM4:19)
「懐かしい。」
「本当だね!やっと帰ってきたって感じがするわ、この景色見ると。」
正嗣達は、数時間の列車のたびを終えて、裏山のあの祠の前に立っていた。
その山から見ることが出来る懐かしい光景に、彼らは少し眼を潤ませながら景色を楽しんでいる。
「ここからお家まで歩きますか。」
「えぇ。もう10年か・・・」
数分後、彼らは、なつかしの我が家へと向うために下山していった。
(8・13 AM7:29)
「おはよう・・・どしたんですか?蓮流さん。」
ブルブル・・・
椿が、朝食を食べるためにリビングに向うと、ドアの前で震え上がる蓮流の姿があった。
「帰ってきた・・・。」
「誰がですか?」
椿がそう聞くと、蓮流はリビングを指差した。
ブルブル・・・
「おはよう!椿!」
「おはよう。大きくなったわね、椿。」
?!?!?!?!?!?!?!?!?
「親父・・・お母さん・・・」
「「お盆だから、戻ってきちゃった!」」
私の前で
みんなの前で
すごいことが起こってる・・・。
死んだ親父とお母さんが
目の前で普通にコーヒー飲んでる・・・。
とても死んだ人に見えない・・・。
おまけに
生きてた時よりさらにラブラブに見える・・・。
「とにかく15日までいるんで、またよろしくな!」
「「「「「「は・・・はい・・・。」」」」」」
椿の両親がいきなりあの世から帰ってきたことで、家中パニック。
畑から戻ってきた緑涼は、とってきた野菜をその場に落とすし、禮漸も咥えていたキセルを床に・・・。
蓮流と椿はその場で震えながら固まるし、火燐は狐になっちゃうし、風燕は信じられないらしく、狐になった火燐に頬を引っ張ってくれと頼んでいる・・・。
こんな状況の中、椿達と正嗣、美佐子の3日間がスタートした。




