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混血至上主義シリーズ

混血至上主義の名残り

掲載日:2026/08/11

あたしは図書館で1冊の本を読んでいた。その本の名前は『たぬきつね村の歴史』だ。村の『掟』ができてから消滅するまでの詳細が綴られている。かつては禁書ゾーンに置かれていたが、今は一般閲覧ゾーンに置かれ誰でも読む事ができる。


あたしがこの本に興味を持ったのには理由がある。

あたしの外見は狸そのものだけど、内面が少し狐っぽい。

狸は『かき揚げ』が好きな人が多いのだけど、あたしは『油揚げ』が好き。狐が好物と答える事が多いんだって。また、あたしの友達には外見が狐そのものの人や、狸と狐の外見が混ざった人がいて多様性にあふれている。そのルーツを知りたくて借りてみたら、面白くて何度も読み返してしまった。そのせいか、学校で居眠りして先生に怒られた。


「アイラ、私の授業で居眠りとはいい度胸だな。この問題の答えはなんだ?」

「分かりません」

「授業はよく聞くように。テストに出すからな」

「以後、気をつけます」


ちなみにこの先生は、休憩時に職員室で天かすをスナック菓子の様にボリボリ食べていたのを通りがけの生徒達から目撃されており、『天かす先生』と呼ばれている。


放課後、友達との会話はあたしの話題でもちきりだ。


「1番前の席なのに、よく居眠りできるねw」

「本が面白くて、夜ふかししちゃって」

「どんな内容?今度貸してよ!」

「いいけど、読んだらあたしのかわりに図書館に返してね!返却期限過ぎてるからw」

「ズボラかよ。司書が困ってんぞ」

「家から持ってくるからそこで待ってて!」

「はーい」


あたしはすぐさま本を持って来て渡した。興味を持ってくれた事が嬉しい。


「ありが…汚っ!なんで借りた本に食べカスついてんだよ!」

「食べながら読むのが最高なんだよ」

「最悪かよ」


潔癖症の彼女は、使い捨て手袋を付けた手で丁寧にゴミを取り除いてからかばんにしまった。


(手袋持ち歩いてるんだ…)


図書館に返す手間が省けたのはいいけど、名残り惜しい気持ちになった。スマホで本を読める時代にはなったけど、紙の手触りや匂いを感じる事はできない。本好きなら分かると思う。(食べカスなどですぐに汚れてしまうのはデメリットだけど)


あの後、彼女は一通り読んですぐに返却した。1ヶ月以上期限が過ぎていた為、司書にこっぴどく叱られたらしい。お詫びにカフェで奢ると約束した。


「約束通り1番高いメニューを奢ってもらうからね!司書のババアが怒鳴り散らしてきて、ほんと最悪」

「まじでごめん。スペシャルセットは全額あたしが支払います」

「スマホ決済の残高は?」

「0です。充電も今切れた」

「なんでだよ。チャージしとけ!」

「財布あるよね?」

「…忘れた」

「最悪かよ」


結局彼女は、1番安いメニューを頼んで支払った。『次こそスペシャルセットを奢らせる!』と言って去っていった。こんなあたしと友達でいてくれるのはもはや奇跡に近い。


翌日。スマホと財布を持ったあたしは彼女に声をかけた。


「おはよう!昨日はごめん。フルチャージしたスマホと財布を持ってきたのでお代を払います」

「当たり前だよ。奢られる側が奢るってどういう事だよ!」

「正論過ぎて何も言えません…」

「ちゃんとあるみたいだから許す」

「ありがとう。そういえば、読んだ感想はどうだった?」

「確かに面白い部分はあった。ライラと狸親父のやりとりとか」

「それもよかったけど、あたしはド天然レイラがかわいかったな。ズボラな自分と重なるから」


その後も『たぬきつね村の歴史』の感想で盛り上がった。

今も村の名前はそのままダサいけど、本にあるようなかつての村の面影は全くなく、文明の利器であふれる世界だ。それでも、狸と狐の血はあたし達に流れ続けており、今日もどこかで新しい命が産声をあげる…。


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