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第1環

第一環 natus 完全定義層

固定された存在と名前だけが住む。定義済の「語」が支配。

砂色の光が、地平線まで続いていた。

粒子は陽に照らされ、目を細めるほどのきらめきを放つ。

外縁の白に比べれば、ここははるかに「形」を持っている。

足を踏み出せば、固さと沈みが同時に返ってきた。


前方に、ひとりの影があった。

背は高く、長い外套が風にたなびく。

近づくほどに、その輪郭が確かになっていく。

この地に留まり、訪れた者を迎える者——「定着者」と呼ばれる存在だ。

彼は足を止め、こちらをじっと見た。


「外縁から来たか。」

低い声が、乾いた空気を振るわせた。


言葉にしようとしても、喉に引っかかるだけで音にならず、ただうなずいた。

それを見て、男はわずかに顎を引いた。


「ここは第1環。形を保つ息がなければ、砂に飲まれる。」

そう言って、男は砂の上に一歩踏み出した。

その足元に、淡い紋が波紋のように広がる。

不思議なことに、風はその紋を乱さない。


「やってみなさい。」


男に倣って、一歩、踏み出す。

途端に砂が崩れ、紋はかき消えた。

慌てて息を整えるが、また形が崩れる。

足元は何度も沈み、砂は音もなく元の平面に戻る。


男は何も言わず、ただ横で歩き続ける。

その歩幅は一定で、紋は決して途切れない。

彼の背を追い、同じ拍で息を吸い、吐く。

何度も失敗し、砂のきらめきに呑まれかける。


やがて。

足と息と風の調子が、ふと合った。

砂は沈まず、紋が途切れない。

その瞬間、胸の奥に確かな手応えが生まれる。


男が立ち止まり、こちらを見た。

「それでいい。」


——通された。

息の深さも、形の確かさも、外縁にいた頃の自分とは違う。


足元は、もう砂ではない。

第1環の試練=「形息の保持」

「息=形の保持」の試練を通して、自分の「名前/語」とその安定を得る

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