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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

雨宿り

作者: 命野糸水

   雨宿り


 ある真夜中の日、一人の男は商店街を訪れていた。真夜中の為商店街内にある店はシャッターが閉まっている。


 閉まっているから買い物をすることが出来ない。でもそこは問題ではない。ならなぜ男が商店街を訪れた目的は買い物をするためではなく雨宿りをするためだったからである。


 今朝、男は寝坊した。寝坊と言ってもいつもより十分ほど遅く起きた寝坊の中でも小寝坊と言っていい寝坊であった。そのため男はいつもより大急ぎで準備をした。小寝坊だったからか男は遅刻せず約束を守ることが出来た。しかし遅刻はしなかったがミスはした。それは天気予報の確認である。


 いつもならテレビをつけ天気予報を見ることを朝の予定の一つに組み込んでいた。その予定は今朝の小遅刻のため無くなってしまった。そのため夜雨が降る予想をを男は知ることが出来なかったのである。


 天気予報をテレビで見る時間がなかったのなら他の方法、例えば携帯で天気を確認すればよかったかもしれない。携帯ならすぐに確認することが出来ただろうし、テレビをつけてテレビを消すという動作を省くことも出来ただろう。


 その動作が時間省略に大きく関わるとは考えらないが、小さく関わることは出来ただろう。しかし男は少し焦っていて携帯で天気予報を確認するという考えを出すことが出来なかった。


 この考えは出せなかったが、テレビをつけていたら遅刻してしまうからテレビはつけない方が良いという考えは出せたから不思議だ。


 男は雨が降っているから商店街に雨宿りに来た。なぜならこの商店街にはアーケードがついていて雨を凌ぐことが出来ることを知っていたからである。


 雨宿りすることは出来るが、この商店街は男の家ではない。この先男はいくつかある選択肢から選ばなければならない。家に帰る、傘やレインコートをどこかで買って家まで帰る、ホテルなどの泊まれるところに行くである。 


 しかし男は金がない。傘やレインコートは買えないし、もちろん泊まるところも借りれない。家に帰るしかないのだが、家までにはかなりの距離がある。かなりの距離があるが歩けない距離ではない。


 ならタクシーを呼ぶか。いや、それは金がないから不可能。


 もしタクシーを呼ぶ金があったとしてもタクシーは呼ばない。タクシーを呼ぶくらいなら歩いて帰る。


「さて、どうするか」


雨はしばらくやまないらしい。この情報は何時間か前に横をすれ違ったカップルの会話で知ったことだ。それをこのまま立ち止まっていても何も変わらない。男はアーケード下を進むことにした。


 少し進んだところで男はわき道に入った。そのわき道はアーケードほど立派ではないが、雨を凌ぐことが出来る屋根がついていた。


 まっすぐ進んでもシャッターが閉まった店を見るだけで退屈になる。ならわき道に入った方が何か見つかるかもしれない。なぜか男はそう考えわき道に入ったのだが、その考えは当たった。わき道には一人の老人が座っていた。


 ニットの帽子を被り、髭を多く蓄え、ボロボロの服を着ていた姿はいかにも家なしの人だった。まだ本人には確認していないため、本当に家なしの人かは分からない。だが概ねそうだろう。


「おじいさんも雨宿りかい」


男は老人に訪ねた。


「おじいさんもということは、あんたは雨宿りが目的だな。わしは雨宿りをするためにここにいるのではない。ここがわしの家だ」


 やはりおじいさんいや老人は家なしの人であった。


「あんた、こんなところで雨宿りなどしていたら時間の無駄だ。携帯持っているのだろう。それでタクシーでも呼んでさっさと帰りな」


「そうしたいけどね、金がないんだよ。金さえあればここにいないさ」


「家にあるだろ」


「あるけど使いたくない。それに金があったとしても携帯が充電切れで意味がない」


「ならしょうがないな」


「そう、しょうがないんだよ。それよりおじいさんは家がないのか。ホームレスってことか」


男は直接聞いてしまった。まぁ聞いても怒られることはないだろうし失礼だとも思われないだろう。先ほど老人が地面を指さしながらここがわしの家と話していたし。


「あんた、失礼な奴だな。直接的に言う奴がどこにいるんだ」


失礼とは思ったらしい。しかしだからといって悪いことをしたなとは思っていない。もちろん反省もしない。


「わしはあんたと一緒で金がない。家もない。希望もない。まぁこの年で希望なんてものはあるようでないものだがな。


 わしはつい最近まで近くの空き家で寝泊まりしていたんじゃ。勝手にな。そしたら誰かが役所にチクったらしい。役所の人間に追い出されてしまってな。ここに住むことになった。食い物もねえし。どこか食い物がタダで手に入るところはないかね」


タダで飯が食べられる場所、そんなところがあれば知りたい。それは男も同じだ。


「なら今着ているその服を売ってしまえばいいじゃん。小銭にはなるんじゃない」


「なにをバカなことを言う。そしたら凍え死ぬわい。まだ死にたくはないんじゃ。それにこの服は大切なもの。売ることは出来ない」


「他に売るものはないの」


「あんたには売るほかに考えがないのかね。そうだな、他には」


老人は体の隅々を触りだした。


「あぁ、これがあった。あんたそこに止まっていな。危ないからね」


「危ない?一体何を」


男が続きを言おうとしていたその時、老人が懐から何かを取り出し男の心臓部分を刺した。刺された時に男は老人が懐から出したものがナイフだったことと危ないと言っていた意味が分かった。老人は刺した後すぐにナイフを抜いた。


「クソ、心臓は少し外してしまったか。でもよい。あんたはすぐ死ぬ。先ほど携帯の充電がないことが分かっているから助けも呼べんだろう。最後にあんたに感謝を言わなければならないな。ありがとう、あんたのおかげで無所でタダ飯が食べれる。希望をありがとう」


老人はそう言うと立ち去って行った。


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