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おさんぽ中にさやちゃんの恋人候補を探すポメ。しかし、なかなかうまくいかず・・・
気がつけば緑道をUターンし最初に入ってきた場所が遠くに見え始めた。もう今日は運命の出会いを見つけられないかもしれないと悟った時だった。
オレの3歩先に茶色い物体が落ちていた。
まさかと思い後ろを振り返ると、さやちゃんはスマホを見ながら歩いている。その先には茶色いアイツが待ち構えているというのに!
(危ない!! このままじゃ、さやちゃんがアイツを踏んじゃう!!)
どうやって気づかせるか焦っている時だった。
弾丸のような速さの何かがオレの前を通り過ぎ、今度はさやちゃんの足をかすめて緑道の脇にある茂みに突っ込んだ。そのおかげでさやちゃんはスマホから顔をあげることができた。
「びっくりした〜。ワンちゃんが走ってきたんだ! あっ、目の前にウン◯がある!」
茂みに突っ込んだ奴のおかげで、さやちゃんは茶色いアイツを回避することができそうだ。
オレが安心していると、茂みのあたりをウロウロしてる柴犬の飼い主らしき声が聞こえてきた。
「クロマメ、勝手に行っちゃダメだろ!」
そこでオレは気づいた。弾丸犬のクロマメはさやちゃんを茶色いアイツから救ったヒーローだ。そのヒーローの飼い主とさやちゃんが話をして仲良くなれば、巡り巡ってやがて恋に落ちるかも・・・!?
「すみません、うちのクロマメがご迷惑をかけて・・・」
「いえ、全然。むしろそのおかげで私助かりました。そこに・・・」
(しめしめ、いい感じに話してるな。ところで、初対面のさやちゃんのことをあの男はどう思ってるんだろう?)
オレはクロマメの飼い主の心の声を聞くことにした。レンタル彼氏のようにさやちゃんに対して失礼なことを考えていないか確認をするためだ。
『あ・・・あわあわあわあわあわ』
(ん? 心の声がおかしいぞ?)
小首を傾げると同時に、クロマメの飼い主がオレを見ていることに気がついた。隣にいるさやちゃんも片手で口元を隠し、もう片方の手でオレを指さしている。
(え・・・なに? オレがどうしたの? オレ・・・?)
その時、右後ろ足に違和感があることに気がついた。
(あ・・・)
(・・・・・・・・踏んじゃった)