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たっくんのお尻に噛みついたポメ。そのあとどうなった?
「ポメ、初めて見る人だったから嫌だったのかなぁ?」
さやちゃんはローテーブルに突っ伏しながら座布団に座るオレの顔を見ていた。
(いや、そういうことじゃないんだよ)
オレもさやちゃんの顔を見つめながら心の中で深ーいため息を吐いた。
たっくんはオレに尻を噛まれて泣きながらすぐに帰った。さやちゃんに怒られるかと思って身構えたが、そんな必要はなかった。
さやちゃんはただ静かにたっくんの背中を見送り部屋に戻ると、ローテーブルの前に座り顔を突っ伏してしまった。時折りオレを見ては、また突っ伏してオレを見る。ため息まじりにそんなことを繰り返しては、そのまま1時間が過ぎてしまった。
(さやちゃんは今、何を思ってるんだろう)
たっくんの尻に噛みついたことを少しだけ反省していると、オレを見つめるさやちゃんの口が動いた。
「ポメ、私ね、たっくんのことちょっと好きになりかけちゃった。だって男の人と手を繋いだの、初めてだったんだよ。けど、レンタル彼氏じゃダメだよね。私、本当は本物の彼氏が欲しいんだ」
(さやちゃん・・・)
君にはいつかきっと、素敵な彼氏ができてかわいい子供も生まれるよ。だから、そんな寂しそうな顔をしないで、前を向いて笑ってよ。元気を出して、さやちゃん。
オレは立ち上がるとさやちゃんに近づき、その手に頭をこすりつけた。すると、さやちゃんが微笑んだ。
「ありがとう、ポメ。ポメはいつも私の味方だね」
「わん! わふわふ、フンッ!」
(そうだ! 当たり前だろ、さやちゃん!)
「へへっ、ありがとう」
やっとさやちゃんが明るく笑った。そこでオレは気づいた。
オレ達は言葉で伝え合えないけど、仕草や表情でお互い何を思っているか分かるし、なによりさやちゃんとオレは強い絆で結ばれてるんだった!
大丈夫。きっともうさやちゃんはレンタル彼氏を使ってニセモノの恋愛なんかしない。
さやちゃんが運命の人に会うその日まで、オレがさやちゃんを守ーー
「よしっ! 次のレンタル彼氏の予約をしよう!」
全然わかってなぁぁーーーい!!!