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さやちゃんの新しい友達?のたっくんが部屋に入ってきた。
引き続き観察していると、さやちゃんはたっくんの隣に座った。
2人でジュースを飲み、コップを置く。そしてたっくんの右手は、さやちゃんの左手に重なった。
(ん? 友達って手を重ねるもんだっけ??)
さやちゃんの顔を見ると、なんと俯いて頬を染めている。
(さっ、ささささささささささやちゃん!!? なんかいつもと違う! これは、まさか・・・!!?)
たっくんの顔を見ると笑顔だった。
「俺たち、恋人だから・・・いいよね?」
「は、はい・・・」
顔を上げたさやちゃんは、オレが今まで見たことがないような、特別な顔をしていた。
潤んだ瞳、恥ずかしそうに上下に瞬きするまつ毛、蒸気してほんのりピンク色に染まった頬。
(あぁ、そんな!)
オレは悟った。
遂に!
遂にさやちゃんに春がやって来たのだ!!
今は秋だけど、恋という名の淡いピンク色の春が舞い降りて来てしまったのだ。
きっとさっき見たビジョンは、これからこのイケメン彼氏と築き上げる輝かしい未来に違いない。
手を重ね見つめ合う2人の横顔と背中を見て、オレは確信したのだった。
(大丈夫。2人はきっと幸せになる。この先どんな困難が訪れたとしても、2人には明るい未来が待っている・・・)
熱く見つめ合う2人。そして彼氏はスマホを取り画面を見ると、笑顔のまま顔を上げた。
「あ、時間なんで帰ります」
「えっ、待って・・・もう!?」
「ぎゃわん!?」
(え!? 待って!? まだ何もしてないのに帰るの!? 随分時間にシビアだな、コイツ)
雰囲気が台無しだと狼狽えるポメの目の前では、愛犬と同じく狼狽えるさやちゃんがいた。