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春の陽射しが窓から入り、生まれて数ヶ月ほどの赤ん坊の顔を優しく照らしていた。
「ほぉ〜ら、お母さんですよぉ」
「さやか、幸せそうだな」
「当たり前でしょ」
夫に微笑みかけると、さやかはクッションの上に座っている愛犬に手を伸ばした。
「こっちにおいで、ポメ」
♢
今見たのは、オレのこれからの未来。
オレの飼い主の『さやちゃん』(本名さやか)は、どうやら今住んでる部屋で未来の夫と一緒に赤ん坊を育てることになるらしい。というのも、さやちゃんの愛犬のポメラニアンである『ポメ』ことオレは、未来を見たり他人の心の声を聞くことができるエスパー犬なのだ。
オレとさやちゃんはこんな感じ。笑ってる女の子がさやちゃんで、抱っこされてるかんわいいワンコがオレ!
さやちゃんはオレがエスパー犬だということを知らないし、そもそも犬であるオレには当然伝える術もないのだが・・・まぁいい。だって将来のオレとさやちゃんの生活は、幸せそのもののようなのだから。
座布団の上でくるまり、もう一眠りしようとひとあくびをすると玄関のドアが開く音が聞こえた。
(帰ってきた!)
大好きなさやちゃんが家に帰ってきたら玄関まで迎えに行くのがオレの日課だ。
今日もロケット並の速さでさやちゃんを出迎えにいくと、見慣れない奴がさやちゃんの後ろにいた。