【4-3】
「これはアレだな、パッケージはちがうが中身はおなじ店のピザだ。ちがいは毒入りかそうじゃないかだけ──もちろん、食べかけのやつは両方とも毒が入っている」
「つまり、」と私。「毒入りのドミソピザ……そのひと欠片が、毒抜きのピザリカに混入した?」
「そう、ていうか、意図的にすり替えられたんだ。田中さんを殺害するためにね」
言って青山さんは田中さんの死体を見据えた。
「質問があります」
「どうぞ」と青山さん。幽霊の彼には、すでに真相が見えているのか。
「ゴミ箱に入っていた食べかけのドミソピザ──これは、誰が齧ったものなんでしょうか」
「三沢さんだろう、おそらく」
「それは、彼の命を奪った毒入りピザのことですか……かず美さんが食べさせた」
「うん」
「そんな──まさか、」
『言ったでしょ、ここは第2ステージだって。アタシが気づいたときにはもう、死体も毒入りピザも消えていた。一瞬で場面転換したってわけ』
かず美さんはそう言っていた。そのことは私から青山さんにも伝えてある。ということは……、
「うん、彼女はきみにウソをついていた。そして彼女のプラン──田中さん殺害計画は、きみがここへ足を踏み入れたときからはじまっていた」
「どういうことですか……」
「かず美さんは第1ステージで三沢さんに毒入りピザを食べさせ、第2(ステージ)に進出した。場面転換で死体が消えたというのは本当だろう、ただし、毒入りのドミソピザは箱ごと残った」
私は無言でうながす。
「ドミソピザの、手つかずの1ピースだけを別皿に移し、それをキッチンの戸棚にでも隠しておく。残りは箱ごとゴミ箱へポイ──三沢さんの食べかけも含めてね。そのあと田中さんが第2へやってくる。で、つぎにきたのは若林さん、きみだ」
黙ったままの私。
「きみはピザリカの箱を持ってきたが、玄関の靴箱の上にそれを置いたきり、そのこと自体をほぼ忘れていた。あとで田中さんがつまみ食いするまで、このピザはしばらくノーマークになる」
「その間に、かず美さんがピザを1ピースだけすり替えた……」我慢できずに私は口走っていた。
「うん、最初に彼女が紅茶の用意をしていた、まさにあのタイミングだ。キッチンからお風呂場のまえを通れば、きみに気づかれずに玄関まで行けるからね」
「質問です」
「どうぞ」
「私が持ってきたピザリカ──その中身がアンチョビとオリーブのピザであることを、どうしてかず美さんは知っていたんですか。もしも予想が外れたら、せっかく用意した毒入りピザも台なしじゃないですか」
「彼女は知っていたのさ、すべて」
「すべて?」
「そう。田中さんやきみが訪れること、ピザのつまみ食い、メカルーズのクイズ……すべての流れを、ね」
「──それって、例のループ」
「うん、さっきの話に戻るけど、かず美さんの正体は水戸かず子だ。彼女は第1(ステージ)と第2を行ったりきたりしている。だから、まるで舞台の台本みたいに、ぜんぶの流れが頭に入っている」
「じゃあ、田中さんの死も確定事項……」
「かもしれないし、じゃないかも、しれない」
「どっちか分からない?」
「ああ、田中さんが死んだのは今回が初かもしれない。そして、それがかず美さん──水戸さんの願いだったとしたら」
「願い、」
「この家がオレらを外に出さないのは、どうも、田中さんを逃がさないためだったような気がするんだ」
私は思わずうなる。
「すると、私たちは文字どおりピザの配達員……舞台上のエキストラだったということですか」




