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レオタード2〜マッドハウス〜  作者: 大原英一
最終ステージ:若林芽衣
24/28

【4-3】

「これはアレだな、パッケージはちがうが中身はおなじ店のピザだ。ちがいは毒入りかそうじゃないかだけ──もちろん、食べかけのやつは両方とも毒が入っている」

「つまり、」と私。「毒入りのドミソピザ……そのひと欠片(かけら)が、毒抜きのピザリカに混入した?」

「そう、ていうか、意図的にすり替えられたんだ。田中さんを殺害するためにね」

 言って青山さんは田中さんの死体を見据えた。


「質問があります」

「どうぞ」と青山さん。幽霊の彼には、すでに真相が見えているのか。

「ゴミ箱に入っていた食べかけのドミソピザ──これは、誰が齧ったものなんでしょうか」

「三沢さんだろう、おそらく」

「それは、彼の命を奪った毒入りピザのことですか……かず美さんが食べさせた」

「うん」

「そんな──まさか、」


『言ったでしょ、ここは第2ステージだって。アタシが気づいたときにはもう、死体も毒入りピザも消えていた。一瞬で場面転換したってわけ』


 かず美さんはそう言っていた。そのことは私から青山さんにも伝えてある。ということは……、

「うん、彼女はきみにウソをついていた。そして彼女のプラン──田中さん殺害計画は、きみがここへ足を踏み入れたときからはじまっていた」

「どういうことですか……」

「かず美さんは第1ステージで三沢さんに毒入りピザを食べさせ、第2(ステージ)に進出した。場面転換で死体が消えたというのは本当だろう、ただし、毒入りのドミソピザは箱ごと残った」


 私は無言でうながす。

「ドミソピザの、手つかずの1ピースだけを別皿に移し、それをキッチンの戸棚にでも隠しておく。残りは箱ごとゴミ箱へポイ──三沢さんの食べかけも含めてね。そのあと田中さんが第2(ここ)へやってくる。で、つぎにきたのは若林さん、きみだ」

 黙ったままの私。


「きみはピザリカの箱を持ってきたが、玄関の靴箱の上にそれを置いたきり、そのこと自体をほぼ忘れていた。あとで田中さんがつまみ食いするまで、このピザはしばらくノーマークになる」

「その間に、かず美さんがピザを1ピースだけすり替えた……」我慢できずに私は口走っていた。

「うん、最初に彼女が紅茶の用意をしていた、まさにあのタイミングだ。キッチンからお風呂場のまえを通れば、きみに気づかれずに玄関まで行けるからね」


「質問です」

「どうぞ」

「私が持ってきたピザリカ──その中身がアンチョビとオリーブのピザであることを、どうしてかず美さんは知っていたんですか。もしも予想が外れたら、せっかく用意した毒入りピザも台なしじゃないですか」

「彼女は知っていたのさ、すべて」

「すべて?」


「そう。田中さんやきみが訪れること、ピザのつまみ食い、メカルーズのクイズ……すべての流れを、ね」

「──それって、例のループ」

「うん、さっきの話に戻るけど、かず美さんの正体は水戸かず子だ。彼女は第1(ステージ)と第2を行ったりきたりしている。だから、まるで舞台の台本みたいに、ぜんぶの流れが頭に入っている」

「じゃあ、田中さんの死も確定事項……」

「かもしれないし、じゃないかも、しれない」


「どっちか分からない?」

「ああ、田中さんが死んだのは今回が()かもしれない。そして、それがかず美さん──水戸さんの願いだったとしたら」

「願い、」

「この家がオレらを外に出さないのは、どうも、田中さんを逃がさないためだったような気がするんだ」

 私は思わずうなる。

「すると、私たちは文字どおりピザの配達員……舞台上のエキストラだったということですか」

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