【4-2】
「よっつめ、これが最後です。田中さんの死因は──服毒によるものではなかった説」
「ははあ」
「突然の心肺停止。これは自己由来のものかもしれませんし、他者によって引き起こされたものかも……」
「デスノ○ト的な?」
「ええ、ちゃちな言い方をすれば、オバケによる呪いでも何でもかまいません」
「言っておくけど、オレにそんな力はないからね」と青山さん。
べつに私は、幽霊である彼を揶揄したわけではない。そういう可能性もあるということだ。
沈黙が訪れた。
仮説を提示したはいいが、それを検証するための材料がほとんどない。また家宅捜索をはじめるか……しかし、ヘンに動き回るのもあぶないような気がする。
青山さんはどう考えているだろうか。彼の言葉を私は待った。
「じゃあ、とりあえず家宅捜索しますか」
やっぱり、そうきたか。私はため息を吐きつつ、
「正直、家のなかを動き回るのは怖いです。犯人が潜んでいるかもしれないじゃないですか」
「うん、さらに言うと、オレはいざってときにきみを守ってやれない。幽霊だけに」
「……そうですね、だったら、どこにいても一緒ですね。犯人が襲ってきたら私独りで応戦しないと」
「申し訳ない。でもオレ、壁抜けができるから、きみがドアを開けるまえに向こうの様子を見てくるよ」
「助かります」
そんなわけで、めちゃくちゃ消極的な姿勢で私たちは捜査に乗り出した。
「キッチンから行きましょう」
リビングとL字型につながっているらしいキッチンをまだ見たことがなく、興味があった。あと、いやらしい話だが冷蔵庫の中身にも。
「あれっ、」
キッチンに入るなり青山さんが声を上げた。
シンクのとなりに勝手口があり、そのことを言っているのかと思いきや、どうも見ているさきがちがうようだ。
彼はゴミ箱を凝視したまま首を傾げている。
「ゴミ箱がどうかしましたか」
「──ヤバいよ、さっそく見つけちゃったかもしれない」
「はい?」
「第1ステージに、このゴミ箱はなかった」
「そうなんですか……」
としか言いようがない。私は第1(ステージ)を経験していないから。
「あのとき、オレはしばらく勝手口の周りをウロウロしていたから、はっきりと憶えている。──ちょっと、なかを調べてもらってもいい?」
それはペダルで天蓋がパカッと開くタイプのゴミ箱で、そこそこ大きかった。彼のリクエストで私はペダルを踏んだ。
ゴミ箱のなかを見て胸がざわついた。
ピザの箱が無造作に投げ込まれている。私が持ってきたピザリカではなく、べつのお店のものだった。ドミソピザ、と書いてある。
「ピザの箱を取り出してほしい──いや、待って。おそらく中身のピザは毒入りだ。見たところ、ほかにゴミは入っていないようだし、安全策を採ってゴミ箱ごとひっくり返そう」
私は言われたとおりにした。
がさっ、と出てきたのはドミソピザの箱と、食べかけのひと欠片だった。
「アンチョビとオリーブのピザだ」
「田中さんが食べていたのと、おなじですね。お店はちがうけど」
「これをリビングに持って行って、ピザリカと比べてみよう。食べかけのやつだけでいい」
食器棚からお皿を取り出し、それにピザの欠片を載せた。直接手で触れないようにペンで弾くようにして。
なんだろう、このドキドキ感。田中さんの死因……その真相に近づいている感じがハンパない。
リビングのガラステーブルに、みっつのピザを並べてみた。
ひとつはキッチンから持ってきたドミソピザ、もうひとつは田中さんの死体近くに落ちていたピザリカ──両方とも食べかけのひと欠片である。
最後のひとつはピザリカの箱に入っている、手つかずの数ピース。するとまあ、びっくりするくらい三者は似ていた。




