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レオタード2〜マッドハウス〜  作者: 大原英一
幕間:若林芽衣
19/28

【3-4】

 かず美さんが突然すがたを消した。

 最前までダイヤルボタンを押していたので、状況を鑑みるに、どうやら彼女はクイズに正解したらしい。

 脱出成功(ミッションクリア)──それは、田中さんが死ぬほど(ほぞ)を噛んでいることからもあきらかだろう。

 畳に転がっている受話器を手に取って耳に当ててみた。無音だ、ダイヤルボタンを押しても反応がない。

 ということは、ここ第2ステージのミッションは打ち切られてしまったのか……。


 私は受話器を本体に戻しつつ、

「かず美さんはクイズに正解した──でも、あの短時間でどうやって?」

「あのおばさん」田中さんは吐き捨てるように、「畑中さんに、してやられたよ。ボクがヒントをあげちゃったんだ」

「それって、【MECAROOZ(メカルーズ)】……田中さんが思いついた」

「そう、でもそれは不正解だった。そのあと畑中さんは、おなじ言葉で再試行(リトライ)しようとした──二重チェックの意味でね。ところが、たぶん【MECAROOZ】のスペルを見て、彼女は正解に気づいちゃったんだろうな」


「瞬時に、そこがスゴいです」

「彼女がメカルーズだったのさ」

「え、」

「簡単なアナグラム──て言ったのはボクだったね。恥ずかしいよ」

「どういうことですか……」

 田中さんは無言でメモ用紙にペンを走らせる。それを私に見せつつ、

「【CAR(カー)ZOO(ズー)ME(ミー)】、かず美。あのひとの名前さ」

「えーっ! ……そんなダジャレみたいな、」

「まあ、スペルがどうこうよりも、クイズの大本の部分だろうな」


【あなたが何者だったか忘れたの? メカルーズ】


「……メカルーズはかず美さん、すると、彼女は何かを思い出したんでしょうか」

「分からない。けど、クイズがボクたち自身のことを言っているなら、3人の名前のうちひとつが正解ってことになる。確率は高いよ」

「なるほど。ダメ元でも試す価値あり、ですね」

「彼女に負けたのは悔しいけど、それ以上にイヤな感じがしてきた」


「というと?」

「畑中さんのことだけど、似ているんだ──水戸女史に」

 思わずドキッとする。そうだ、田中さんは第1ステージで水戸さんを見ている……にしても、そんな大事な情報をいままで黙っているなんて!


「じゃあ」私はいったん気持ちを落ち着けて、「かず美さんが水戸さんの親類かもしれない、ってことですか」

「いや、それだとクイズの趣旨に合わない。あなたが何者だったか忘れたの? と聞かれて、そうだ私は○○の家族だった、じゃあまりに遠すぎる」

「遠い、て」

「──はっきり言おう、畑中かず美が水戸本人で、あのおばさんはそれを忘れていたってことさ」

「はい?」

 意味が分からない。まったくの別人じゃあないの。


「彼女らを分け(へだ)てているもの、それは年齢と体型だ。ひとは誰でも歳を取ると老け込み、体型も崩れてくる」

「どういうことですか……」

「つまり、時間の問題。問題は時間のみだ。浦島太郎的とでも言えばいいかな」

「──タイムリープ」

「そう、きみ自身がそれを経験しているんだから、否定できないよね」

「それは、そうですけど」


「考えてみれば、ボクらが閉じ込められているこの家も、時間の観念が有って無いようなものだ」

「すると、田中さんは第1ステージで水戸さんに会い、ここ第2で老けた彼女にもう一度出会ったと?」

「そうとしか考えられ──」

「オレも田中さんの意見に賛成だ」

 いきなり声がしたので、私は死ぬほどびっくりした。


「あ、青山さん?」

 いつの間にあらわれたのか、私の知っている青山さんが目のまえに立っていた。

「なに、なに急に……」

 田中さんもおどろいて周囲を見回す。が、どこか様子がおかしい。

「オレが見えますか、田中さん。ハロー」

 お道化(どけ)ながら手を振る青山さん。でもその言葉はぜんぜん田中さんに届いていない。

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