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レオタード2〜マッドハウス〜  作者: 大原英一
第2ステージ:若林芽衣
14/28

【2-7】※図表あり

 電話機のダイヤルボタンを押すことで、かず美さんは、こちらからアルファベットの単語が発信できることを発見した。

 以下、彼女によるレクチャーがはじまる。

「ベタだけど、最初に110番にかけようとしたのよ。1、1、0て押したら……」


【A、A(1秒後に)不正解(インコレクト)


「──て音声が流れたのよ、女性の声で。もちろん自動音声だとは思うけど、クイズを出しているのは男性の声よね」

「こちらの解答が女性の声で発せられる、ってことですね」

「そう思った。で、つぎに2、2、0て押したら……」


【B、B(1秒後に)不正解(インコレクト)


「で、今度は0を抜いて1、1て押したら【A、A】としか言わないわけ」

「ははあ」

「ね? つまり、1がAで2がB。0は解答を決定するエンターキーみたいな役目ってことよ」

「なるほど」

「AからIがそのまま1から9、JからRが──2周目というか、番号プラス(アスター)。SからZが3周目になって番号プラス(シャープ)。いろいろやって、そういう法則だってことが分かったの」


挿絵(By みてみん)


 かず美さんは田中さんから紙とペンをひったくると、簡易ダイヤル変換表みたいなものを書いてくれた(図参照)。

「ふうん、」いままで大人しくしていた田中さんが口を開く。「じゃあこれで、ボクたちはクイズに解答できるってわけだ。正解すればミッションクリア、かもね。正解が分かれば──の話だけど」

「あの、さすがに安易すぎる気はしますけど……メカルーズそれ自体が答え、なんていう可能性は?」私は提案してみる。

「問題は正確なスペルだよな。まさかmecha(機械)にlose(負ける)じゃあるまいし」


「試してみれば? 解答するだけタダなんだし」かず美さんが言う。

「そうですね」

 私は乗ってみることにした。ダイヤル変換にも慣れておく必要がある。

「えっと、メカルーズのスペルがmechaloseだとすると……」

 変換表を見ながら、アルファベットを1文字ずつメモに書き出して行く。


【M(4*)E(5)C(3)H(8)A(1)L(3*)O(6*)S(1#)E(5)】

 ↓

【(4*)(5)(3)(8)(1)(3*)(6*)(1#)(5)】


 ぜんぶ書き終えると、その番号と記号のダイヤルボタンを押して行った。

『M、E、C、H……』と機械の音声が呼応する。

 なんだか、むかしのポケベルみたいだな──なんて考えながら、最後にエンターキーの役目を持つ0(ゼロ)を押すのを忘れない。


【……不正解(インコレクト)


 まあまあまあ、予想どおりの結果ではある。

 ただ変換ミスやボタンの押し間違いなどの可能性もあるので、念のため、かず美さんにもチェックしてもらったが結果はおなじだった。

「やっぱり、そう簡単じゃないですね」

「あと考えるべきなのは、」田中さんが言う。「クイズの大本の部分だ。『あなたが何者だったか忘れたの?』っていう問いだったろ」

「どういう意味かしら……」かず美さんは腕を組む。


「ボクたち自身に対する問いかもな。──まさかとは思うけど、このなかで記憶喪失の人はいないよね?」

「でもアタシたち、ある意味で皆、記憶喪失なんじゃないの? わけも分からないまま宅配ピザ屋の恰好をさせられて」

「たしかに」田中さんは半笑いで言った。「するとやはり、これはメカルーズという人のお話なのかな。記憶をなくしているのは彼または彼女で……もう一度聞くけど、このなかにメカルーズさんは(ひそ)んでいないよね?」


「それ自体を忘れているってことでしょ、だから」

 かず美さんがピシャリと言う。どこまで行っても平行線に終わりそうだ。

 ふたりのやり取りを聞きながら、私は何気なく仏壇に触れてみた。紫檀でできた一般的な仏壇──電話機が収まっている観音開きの扉の下に、横にスライドさせる戸棚が付いている。

 お線香でも入っているのかな、そんなかるい気持ちで戸棚を開けたのだが……。

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