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レオタード2〜マッドハウス〜  作者: 大原英一
第2ステージ:若林芽衣
11/28

【2-4】

「……あの、今度は私の話を聞いてもらっても、いいですか」私は意を決して提案する。

 ええ、ぜひ聞かせてちょうだい、とかず美さん。

「ボクも聞きたいね──仲間外れはごめんだよ?」

 リビングの入り口ドアが急に開いたかと思いきや、そこに立っていたのは田中さんだった。

「いったい何しているの……」

 かず美さんがものすごい表情で田中さんを見る。それもそのはず、彼はピザをくちゃくちゃと食べながらしゃべっていたのだ。


 どうやら私が持ってきたピザらしい。ピザリカ、と箱に書いてある。

「きみたちは、ほんとうに脇が甘いねえ。こんな大事なピザ(もの)を、何だって玄関に置きっぱなしにしておくのさ」

「あなた、そのピザに毒が入っていないって知っていたの? ……それとも、イチかバチかのヤケクソなの」

「ヤケクソなわけないだろう──ほら、」

 言って田中さんは、ピザの箱から紙切れを取り出して私たちに見せた。


【このピザに毒は入っていません】


 油染みの付いた紙にその文言が書かれていた。もちろん、私がピザを持ってきたときにはそんなメモはどこにも貼られていなかった。

 箱の内側に隠されていたということか……。箱を開けるという発想自体、私にはなかった。


「何でも注意深く観察しないといけないよ。このメモはピザの下敷きになっていたんだ」

「その言葉を鵜呑みにしたの?」かず美さんはワナワナと震えながら、「罠かもしれないじゃないの」

「あまり(うたぐ)り深いのも困りものさ──まあ、たしかに罠にかかって命を落とすリスクはあった。でもボクはたしかめたかったんだ、そこの若林(・・)さんの状況についてね」


「盗聴していたのね!」かず美さんがキッと田中さんをにらむ。

 たしかに、玄関で会ってからずっと階上(うえ)にいた彼に私の名前が分かるはずがない。

「そこの種明かしは後回しにして、とりあえずボクが何をたしかめたかったかだけど──」彼はちょっと間をおいて、「けっこう重要だからさ、聞いてよ」

 私がうなずくと彼はつづけた。

「はっきりしたのは、ここが第2ステージだってこと。第1と第2の混合ステージじゃなくてね。第1ステージの脱出条件は無効……つまり、毒入りピザの出番は金輪際ないってわけ」


「なるほどね、」かず美さんはため息まじりに言う。「これで芽衣ちゃんのシード権が確定した。第1ステージを免除された彼女も、これからはアタシたちのライバル──」

「そういうこと。でも、だからってギスギスする必要はないと思う。協力すべきところは、するべきだ」

「どういう風の吹き回し?」


「考えてもごらんよ」田中さんは真剣な表情で、「ステージが上がるってことは、たぶん難易度も上がる。ボク独りの知恵と能力だけじゃ、このさきの難関をクリアできないかもしれない。それはきみたちも、おなじこと。だから共闘が必要なんだ──全滅しないためにね」

「……分かったわ、でもそのまえに、盗聴の種明かしをしてちょうだい」

「盗聴っていうと、何か人聞きがわるいね」田中さんは苦笑い。

「そのとおりでしょ、ほら早く」

 かず美さんはあくまで強硬な姿勢を崩さない。どうも田中さんを毛嫌いしているらしいフシがある。


 だが、彼女もきっと理解している。田中さんが侮れない人物であるということを……。

「じゃあ出血大サービスで教えちゃうけど、第1ステージにおいて、ボクは脱出条件を知っていたんだ。すべてのピザに毒が入っていて、それを自分以外の誰かに食べさせればクリアできるってことをね」

「どういうこと……」

「言っておくけどボクだけが特別だったわけじゃない。あの場にいた誰しもに、それを知るチャンスはあった。ただ──そう、ボクの注意力がエグかった、それだけの差かな」


 かず美さんは眉間に皺を寄せたまま黙っている。

「気の毒なじいさん、ビーフさんが、はじめに死体を発見したろ? そんで救急車なり警察なりを呼ぼうと電話を探しまくった。でもこの家には固定電話もケータイもなかった──て、それはあくまで彼の話だ。ボクはまず、そこを疑ってかかった」

「ビーフさんは見落としていた」かず美さんは口元に手をやりつつ、「……2階ね! 芽衣ちゃん、アタシと一緒にきて」

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