【2-3】
さらに、田中さんの話に私の知っている名前が出てきたものだから、もうテンション爆上がりだった(少しあとに、ね)。
最初に三沢さんの死体を見つけたのは、ビーフさんという初老の男性だった。もちろん仮名だろう。
ビーフさんは、私とおなじように、宅配ピザ屋の恰好をしてこの家のインターホンを押した。
応答したのは女性の声だったという。
その女性の指示にしたがい、彼は鍵のかかっていないドアを開けて玄関に入った。ここまでは私とおなじ──だが。
待てど暮らせど、いっこうに家人の出てくる気配がない。
ビーフさんはあきらめて帰ろうとしたが、さすがにたったいまインターホンでやり取りしたばかりなのにヘンだと思い、家のなかに上がり込む。
そして、彼は晴れて死体とご対面となった次第である。
さっそく私はおかしいと思った。インターホンで応答した女性はどこへ行ってしまったのか。あと、この家からは出られないんじゃなかったのか。
とても気になったが、そのくだりも後ほど出てくるものと予想し、私はさきをうながした。
2番目に店員もどきとして来訪したのが田中さんだった。彼も例のごとくインターホンのチャイムを鳴らした。
応答したのは男性の声だったという。
ふつうに考えればこの男性はビーフさんになる。事実、彼も家のなかから応答に出たは出たらしい。
が、田中さんがあとから聞いた話によると、ビーフさんはこのとき田中さんと通話できなかったそうだ。
インターホンが壊れている……それは実際そうなのだが、じゃあ田中さんと通話した男性は誰? って話になる。
そこも、とても気になったが、例によってあとで説明があるものと信じて黙っていた。
3番目──田中さんが知っているなかでは最後、に店員もどきとして来訪したのは女性だった。彼女は水戸と名乗った。
その名前を聞いて私は心臓が口から飛び出しそうになった。
田中さんによると、水戸さんはヘンな恰好をしていたらしい。いわく、新体操の選手みたいだった……と。
それで私は確信した、あの水戸さんだと。
新体操の選手みたいだったというのは、つまり、ピザ屋のジャンパーの下にレオタードを着ていたのだろう。
下はレオタードだけだったということだろう。
私は水戸かず子さんに会ったことがない。写真は見たことがあるけどレオタードすがたは拝んでいない。
正直、青山さんの話を聞いても半信半疑だった──が、本当だったのだ。マジで普段からレオタードだったのだ。
もうだいぶ口唇がプルプルしていたが、ここまできたら最後まで話を聞こう。ほかにも私の仲間が登場するかもしれない。
ところが、いざ期待するとそうはならないもので、話の幕切れはビーフさんの死とともに訪れた。
幕切れというか、むしろ最初に戻る──ピザに毒が入っていたくだりに。
きっかけは何ということもない、ビーフさんが空腹を訴えただけ。皆、自分が持参したピザがあるのでそれを食べればいいんじゃないかという話になった。
ただ問題があって、ビーフさんのピザはマッシュルームだらけで彼はそれが食べられない。
そこで助け舟を出したのが田中さんだった。え、でもビーフさん、けっきょく死んじゃうんでしょ……。
とにかく、田中さんは自分のマルゲリータとビーフさんのマッシュルーム・ピザを善意で交換してあげた。
ビーフさんは満足しダイニングテーブルに戻る。そしてピザを頬張ると、ダイニングならぬ死亡してしまったというわけだ。
持参したピザで他者を毒殺する──この惨い仕業が、どうやらつぎのステージへの進出条件であるらしい。
図らずも(?)田中さんは、かず美さんとおなじ条件を満たし、ここ第2ステージにやってきた。
以上が、かず美さんが田中さんから聞いた話のすべてである。




