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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第三章 イングズ共和国動乱記
98/362

98 埒外の力

聖痕。

未だ謎に包まれたこの世界の常識を覆す未知の力。

何を隠そう、私自身も五つの聖痕を宿し、かつては魔王としてその力を揮っていたけども、その実態を知っているかと問われると首を横に振る。

そう、聖痕と呼ばれる謎の存在が一体いつ、どうやって生まれたのか。

それを知る者は存在していないし、であれば当然、幾つあるのか、どれ程の力を秘めているのか、そもそも何故存在しているのかさえも誰も知らない。

私自身、長くこの力と共にあるにも関わらずその力の限界を未だ知らない。

ただ、恐ろしい事にやりたいと思えばこの力はその全てに応える。

いや、正確には()()()()()()()()()()()があれば、ではある。

100と余年前、私がまだ()()()()聖痕を持っていなかった頃は確かに出来ない事も多くあった。

だけど、長い時を戦い一つづつ聖痕を奪っていた時、数が増えるにつれて望んだ通りの力を揮えるようになっている事に気付いた。

それ以来私は、いや、正確には当時魔王として活動していた私は聖痕を求めるようになった。

ところが、繰り返すけど聖痕は一つでも強大な力を有する。

結局元々宿していた物以外に手にした聖痕は四つ。

最後の一つも偶然が重なり手に入っただけで、かつて見つけた聖痕は悉く逃している。

とは言え、それでも五つ。

それがどれ程反則的なのかは最早言うまでもない。

まぁ、本当の本音を言うと、今日までに見つけた四つの聖痕も欲しいと思った。


 ()()()()()()()()()()




、、、少し雑念が入った気がする。

まぁ、とにかく何が言いたいかと言うと、他人の記憶を覗き見るなんて片手間で出来るという事である。

「驚くとは思うけど、それが聖痕の力って物なのよ。説明しても多分理解は出来ないと思うし、そもそも私も上手く説明出来ないからね」

無論、馬鹿正直に全てを教えはしない。

これは信用云々の話ではなく、単純に私の事を知られたくないからってだけの理由だけども。

「そう、か。いや、色々あったからすっかり忘れてたが、聖痕の聖女様だったんだよなアンタ」

「まぁね。あと一応だけど、外ではあまりそれで呼ばないでね」

ランデルの言葉に頷きつつもやんわりと聖女呼びは拒否させてもらう。

と、それは置いといて、話を進めないと。

「それで、リューナの記憶を視させてもらおうかなって思うんだけど、どうかしら」

「えっと、それは良いんですけど、視るというのはどんな感じなんですか?」

おっと、確かにいきなり記憶を視せろと言われても身構えちゃうのは確かね。

「ああ、ごめんなさい。特別何かする事は無いわ。余計な部分までは視ないし、何か影響があるとかも無いわ。強いて言うなら、貴女にして欲しいのはその日の事を強く意識していて欲しいって位だから」

「あ、すみません。疑う訳では無いんですけど、流石に記憶を視られるなんて経験は無いですし」

「私も言葉が足りなかったわ。心配させちゃったわね」

恐縮してしまったリューナを落ちかせてから、改めてランデルやリューカ、メランとグランスにも確認する。

「皆もいいかしら?時間も掛からないし、直ぐにでも済ませちゃいたいんだけど」

幸い、さっきの説明で皆も納得してくれたようで、早速リューナの記憶を覗かせてもらう事になった。


「じゃあ目を閉じて、アグルを見掛けた日の事をよく思い出して」

私の隣に座るリューナの額に手を当て、私も目を閉じる。

そのまま左目の聖痕に魔力を流して励起させる。

普段は物理的に見通す事しかしてないけど、実際にはこの聖痕は()()()()()()事が出来る。

およそ、この聖痕を前にして隠し事などは出来ない。

いや、一応だけど私の認識外までは現状では届かない。

だからこそ帝国の暗躍を許してしまっているのだし、そろそろそれについても手を打ちたい所でもあるんだけど。

(いけないいけない、集中しないと)

ズレてしまった意識を引き戻してリューナの記憶を辿る。

そうして視えてきたのは共和国首都のどこかの光景。

当時のリューナの目線で視えているのは確かにアグルだ。

どこかフラフラとした様子で、彷徨う様に歩きながらも明らかに何処かを目指している。

だけど、それ以上に気になったのは彼の首元。

(あれは、、、見覚えしかないわね)

鈍く陽の光を反射するそれはまさしく、フェオールで見た人を操る魔導具だ。

勿論、リューナとアグルの距離はそこそこ離れているし、あくまで今見ている時点ではそうだと感じただけ。

事実、私が会っていた彼はあんな物は身に付けてなかったし、となると単なる装飾品かもしれない。

でも、あの様子は明らかに普通ではない。

となると、考えられる可能性は少ない。

と言うか、一番最悪の状況すら考える必要がある。


「もう良いわ、ありがとう」

そう言って額に当てていた手を離す。

拍子抜けしたようなリューナの肩を軽く叩いて、一呼吸だけ間を置いてランデルに顔を向ける。

「お陰で分かった事がある。今から話す事はこの国だけの問題じゃないから、それだけは覚悟しておいて」

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