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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第三章 イングズ共和国動乱記
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97 彼らの思い

ランデル達が泊まっている宿は一階に食堂のある一般的な形式の所で時間的、そして町の現状的に私達以外に客が居ないという事もあって、その食堂で私がここに来ることになった事情を説明した。

ハンター達と共に行方を眩ませたアグル。

その行方を探るべく動いているハルヴィル。

そして暗躍の影を見せるウルギス帝国。

突然齎された多くの情報に彼らは一様に戸惑いを見せていた。

なんて、他人事のように眺める私は彼らが落ち着くまで優雅にお茶を飲んでたりする訳だけども。

「なんでこう一気に色々と起こるんだ?」

疲れ果てた声音で吐き出すランデルに他の四人も項垂れる様に頷く。

まぁそれに関しては全くの同意見ではあるけれど。

「ホントにね。とは言え、悩んでもしょうがないのも事実だし、まずは私達で出来る事を片付けてしまいましょ」

「はあ。そうだな。俺達はハンターだ。頭を使うよりも体を動かす方が手っ取り早くていい」

ようやく気を取り直したのか、少しは吹っ切れた表情になったランデル。

だけど、私としては寧ろ今から余計に気の重い話をしないといけない。

「あー。気を取り直したところで申し訳ないけれど、もう一つだけ確認しなきゃいけない事があるのよね」

その一言に取り戻したであろうやる気が目に見えて消えていくのが分かる。

いや、そんな悲しい顔をしないで欲しいんだけど、、、なんだか罪悪感が凄い。

だけど彼等も一端のハンター。

直ぐに姿勢を正して真っ直ぐこちらを見返す辺り、私の言わんとする事を察しているようだ。

それに軽く頷いて私も気を引き締める。

「察してる通り、アグルについてよ。正直に答えて。貴方達はアグルをどう思ってる?」

漠然とした問いではあるけど、ランデルも他の皆も理解してくれている。

つまり、彼への信頼が単なる上司に対する物なのか、或いは洗脳にも似た盲従なのか。

「彼は俺達ハンターの憧れであり、目標であり、敬意を払うに値する人だ。彼が打ち合ってた功績は、イングズ共和国議会よりも遥かに称えられるべきものだと、多分どのハンターもそう思っている、、、だが」

「別にアタシらはあの人に付き従ってるワケじゃねぇ。敬意こそあるけど、だからって言う事全部に黙って頷くなんてこたぁ無いよ。そこは間違いない。なぁ?」

ランデルに続いたメランが仲間達の顔を見回す。

リューカもリューナも、グランスもそれぞれ頷いたり笑みを浮かべたりと同じ思いのようだ。

「そもそも、言い方は悪いが部外者である貴女をここまで巻き込んでいる事が既におかしいって僕も思うよ。普段のあの人なら絶対にしないよねぇ~」

相変わらず軽い口調のグランスが核心を突くように呟く。

そして確かに、これまで軽く調べただけでも彼の言う通りだと分かる位には、今のアグルの言動はどこかいつもと違うと判断できる。

となると、やはり気になるのは。

「じゃあもう一つ。皆がアグルに対し違和感を感じる様になったのはいつ頃から?」

彼がいつから変わってしまったか。

彼自身の心境の変化なのか、或いは何かしらの干渉を受けているのか。

残念ながらこれまで調べてきてそこだけはハッキリとはしなかった。

だから正直、ランデル達にも明確な答えは期待していなかった。

だけど、

「そういえば」

それぞれ考え込んでいた彼等だけど、リューナがふと何かを思い出したように呟いた。

「リューカ、覚えてる?私達がフェオールに派遣された時の事」

彼女の問いに少しだけ考え込んだリューカがハッと顔を上げる。

「うん、覚えてる。確かに、今にしてみればあの日のアグルさんは何かおかしかった気がするね」

「何て言うか、心此処に有らずみたいな、なんか悩み事でもあるみたいにボーっとしてたよね」

どうやらその日、二人はフェオールに行くための準備で別行動をしていたそうで、そんな時偶然にもアグルを見掛けたらしい。

そしてその時の彼は、周りの目にも気付く事無く人気の無い裏道へと入っていったらしい。

そしてそんな二人の言葉を切っ掛けに、他の三人も別の日にやはり似た様子のアグルを見掛けたらしい。

流石にハッキリとは覚えていないようだし、そもそも偶然遠目に見掛けただけだと言うから確証はないけれど、彼等がフェオールに来たのはもう数か月も前だ。

そもそも記憶ももう曖昧になっているだろう。

だけど、これはある意味好機かもしれない。

「それなら、リューナ。一つお願いがあるの」

小首を傾げる彼女に、そしてこの場に居る面々にも向けて私は一つだけ能力を打ち明ける。

「リューナが一番その時の事を鮮明に覚えている可能性がある。だから、私の力でその日の記憶を視させて欲しい」

「ま、待て!そんな事が出来るのか!?そんな魔法聞いた事無いぞ!」

ランデルの驚きに他の四人も口を揃えて同意する。

そしてそれを受けて、私は頷きながら笑みを浮かべる。

「ええ、これは魔法じゃないわ。聖痕の力、って言えば伝わるかしら」

聖痕、その一言で場の空気が変わる。

そう、色々とあって皆忘れがちだけど、そもそも私には何よりもズルい武器があるのだ。

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