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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第三章 イングズ共和国動乱記
95/362

95 急転直下

それからの数日はハルヴィルの鍛錬をしつつ、変装しての情報収集に努めた。

鍛錬とは言っても、彼の持つ聖痕はまた特殊な部類だし、そもそも彼自身が荒事に慣れていないから戦闘訓練ではなく、あくまで聖痕の力を制御する方向で進めている。

そして私の方も、実の所結構行き詰っていたりする。

というのも、ここ数日の間にハンター達の動きが見えなくなったのだ。

分かりやすく言うと、物理的にハンター達の姿が見えなくなってきたのだ。

最初は少しづつだったから気付かなかったのだけど、そのすぐ後に一気にその姿が見当たらなくなったのだ。

それだけなら彼らが本来の仕事に戻ったのだとも思えたのだけど、極めつけは。

「これは流石に手詰まりね」

「申し訳ありません。私が迂闊な行動をしてしまったが為に」

「仕方ないわ、先に私の考えを伝えておくべきだったし、それに遅かれ早かれこうなっていただろうから」

先日、仕事の合間を縫ってアグルに会いに行ったというハルヴィルから、その話し合いの場で言い争いとなった事を聞いた。

そして、ハンター達が姿を消したのと時を同じくして、そのアグル当人も姿を消してしまったのだ。


事の発端はハルヴィルに帝国や聖痕についての話をした翌日。

今後の動きについて打ち合わせをしている最中だった。

「そういえば、あの日南の町に行った時にも何人かハンターが居たわね」

ふと、ハルヴィル達と出会った日の事を思い出してポツリと呟いた言葉にその当人が反応を示した。

「あの町にハンターが、ですか?それは変ですね」

「変って、ハンターが居た事?」

「いえ、あの町にハンターは居るには居るのですが、、、」

歯切れの悪い物言いに嫌な予感がする。

「あの町に居るのは、例の議員襲撃の犯人達なんですよ。罪人として奉仕活動と、ハンターとしての再教育の為にあの町で牢に入れられているはずなのですが」

「外に出される事は?」

「奉仕活動の際に看守の見張り付きで出される事はありますが、基本的には牢に居るはずです」

この後、ハルヴィルからその襲撃犯達の特徴を聞いた私は、あの日見掛けた奴らが同一人物である事を確認した。

そして、それを知ったハルヴィルは難しい顔で考え込んだ後にアグルに確認をすると言ったのだ。

そして、日程を調整して話に行き、そして物別れに終わったのだという。


それからと言う物、私もハルヴィルもそれぞれ確認やら対応やらに奔走していたのだ。

今日になってようやく一段落、とまではいかなくとも落ち着きを取り戻してこうして顔を合わせたのである。

「一応確認だけど、アグルに何か変な所は無かった?」

「そうですね、特に気が付きはしなかったのですが、、、何か気になる事でも?」

本当ならもう少し情報を集めてから話を動かしたかったけれど、或いは既にこちらの動きが察知されているのかもしれない。

となると、あまり悠長に構えている時間も無いかもしれない。

これ以上深く関わらせるのもマズいけど、手が足りないのもまた事実。

「本音としてはこれ以上は、って所なんだけどね。帝国について一つ言わずにいた事があってね、それが人を操る魔導具なの」

「人を操る、、、もしや、アグルが操られてる可能性が?」

「あくまで可能性よ。彼をよく知る貴方なら何か気付くかと思ったのだけど」

顎に手を当てて考え込むハルヴィルを見ながら、念の為に左目に魔力を通す。

まだ聖痕に馴染んでいないからか、彼が一瞬だけ体を揺らすけど集中しているのか特に気にした様子は無さそうだ。

ついでに、彼には不審な点は無かった事は付け加えておこう。

さらについでではあるけど、この屋敷についても既に安全を確認してある。

まぁ、そうしておかないと帝国に関する話は危険すぎるから、当然ではあるのだけども。

などとしている内に考えが纏め終わったのハルヴィルが顔を上げる。

「やはり気になるとすれば、先日お話しした件でしょうか」

「普段率先して動くアグルが何故か動かなかったってヤツね?」

神妙に頷いた彼が組んだ手を口元に寄せる。

「実は先日アグルと話をした際にその事についても確認をしたのですが、確かにあの質問に対する受け答えには何処か違和感があったような気がします」

私の話から嫌な事態を連想したのか、呼吸を整える様に深く息を吐き出すと祈る様に呟いた。

「アグルは、あの日の自身の対応について覚えていない、と言いました」

「それは、、、」

まだ確証はない。

だけど、あれだけ周りに信頼されている人物が異常事態に対する対応を憶えていないなどと言うのはまず有り得ない。

信頼とは、それだけの実績があるからこそ築かれる物だ。

アグルの覚えていないという発言は、協会の現状からは及びつかない程のものだ。

なら、最悪な想定をするしかない。

「まだ確定ではないわ。でも、最悪の一歩手前位には事が進んでしまっている可能性も大いにある」

「はい、私も覚悟はしています」

重苦しくもしっかりと頷く彼に、私も動くなら今だろうと気合を入れる。

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